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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

1998年07月22日

【写真レポート】俳優指導者アソシエーション公開勉強会「俳優を育てるということ(ゲスト:ローナ・マーシャル)」07/16森下スタジオA

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Ms. Lorna Marshall

 俳優指導者アソシエーションが主催する公開勉強会に伺いました(⇒過去のレポート)。今回のゲストはローナ・マーシャルさん新国立劇場演劇研修所の主任講師でもいらっしゃいます。

 2時間40分ノンストップのパワフルな講義でした。普段から感じていてもはっきりと言葉では説明できないことを、ローナさんが明快に、ユーモアたっぷりに教えてくださいました。

 主催者「俳優指導者がみんなで問題を共有するために、ベテランの先生に来てもらって講義をしていただく機会を作ってきました。今後これを広げていけたらと思っています。日本では俳優指導者という職業は始まったばかり。基準づくりをして、みんなで豊かにやっていきたい。本日の講師・ローナさんは演劇だけでなく、オペラ歌手、パフォーマー、サーカスのプレイヤーなど、ありとあらゆる人を教えてきた先生です。」

 ローナ「この数年、考えてきてまとめたことを今日お話しします。具体的な問題こそ解決がむずかしいので、どんどん質問をしてください。」
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 特に印象深かったことを下記に。

■俳優指導者の心得
 ローナ「俳優指導者の究極的な目標は、演劇学校の生徒を良い職業俳優にすることです。大事なのは、彼らが仕事の出来る俳優になるために教えること。」

 目標の裏に“隠れた目標”があったり、いつの間にか“矛盾した目標”が設定されていたり、教師と生徒の目標にズレがあったり。演劇学校で迷いや問題が起こった時は、まずは本来の目標に立ち戻ることが大切とのことでした。

■身体と感情は一体である
 ローナ「過去10年ぐらいの最新の脳神経学研究で(脳の状態や機能について)わかったことは、何もかもがつながっているということ(Everything is connected.)。演劇界では100年以上前からわかっていたことですが(笑)。」

 “Mirror Neurons(神経細胞の鏡的反応?⇒Wikipedia英Wikipedia日)”のお話が興味深かったです。観客は舞台上の俳優の身体を見て、俳優が感じているのと同じことを脳内で味わっているんですね。つまり、俳優は身体で演技をしなきゃいけない。言葉と感情だけでは不完全なのです。
 ローナさんはイギリスの国費で3年間研究をされました。その成果を書籍にまとめられているそうですので、ぜひ読んでみたいですね。あ、日本語訳じゃなきゃ厳しいんですが(苦笑)。

■イギリスの演劇教育の問題
 ローナ「イギリスではこの10~15年ぐらいで、大学でも演劇を教える傾向が増えてきたのですが、それはあまり歓迎できることではありません。演劇学校と大学で教えることは全然違うのです。大学で学んだ人がプロになることはめったにありません。」

 ローナさんはこのことについては強い意見を持っていらっしゃるようでした。「アメリカの大学では、きちんとした教育をしているようです」とのこと。


 今回教えていただいたことは、俳優教育に限らずどんなことにでも当てはまるように思いました。目標のズレのお話なんて、人生の指針になりますよね。そして、俳優は偉大でタフ(大変な)職業だと再確認。俳優指導者という職業が広く認識されるようになって、高い意識を持った俳優が増えて欲しいと思います。

主催:俳優指導者アソシエーション 主宰:池内美奈子(新国立劇場演劇研修所ヘッドコーチ)
時間:19:00~21:00(受付開始18:30より) 参加費:2000円 通訳あり。 参加者は20名弱。

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 1998年07月22日 13:23 | TrackBack (0)