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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2000年06月03日

MONO第26回公演『錦鯉』06/01-04中野ザ・ポケット

 抑制した演技と適度なギャグで、穏やかながら濃密な舞台空間を体験しました。
 前売2800円/全席自由(整理番号付)。

 気持ちよく笑って自然に緊張できて、ラストはドキドキして体中がじわ~っと震えて、心を含む全身が完全に舞台に支配されてしまいました。快感がすごかった。足の指の先から頭のてっぺんまでしびれました。久しぶりに心から拍手を送りました。

 優しさゆえの厳しさ、そして余裕から来る奥ゆかしさに心打たれました。静かで張り詰めているのに、なんだか穏やかで暖かい。そんな不思議な、優しい空気。

 ヤクザのお話。サラリーマンだった男が先代の遺志をついで組長になり、てんやわんやあって組はつぶれ、全員カタギになるのですが・・・等々。ストーリーもかなり質が高いですが、なんと言ってもその中に込められたメッセージがすごかった。

 「指の先までいっぱいだ」という主人公のセリフ。命が、体中にみなぎるのです。自分が自分の人生を生きていると自覚したその瞬間、それが命の最高の状態であり、つまりそれこそが「生きている」ということなんですね。その刹那に心が触れたとき、血が巡り、全身がしびれ、涙が流れるのです。
  
 役者さん達がセリフを間違う回数がちょっと多かったのは残念ですが、決めるところは決めてくれていたので、オッケーです。蛇足ですが、最後のオセロのシーンは無かった方が良かった気がします。
  
 ああ、次回新作は2001年2月ですね。首を長くしてお待ち申し上げております。

作・演出:土田英生 
出演:水沼健・奥村泰彦・尾方宣久・金替康博・土田英生・西野千雅子・増田記子
※2000年しのぶの観劇ベストテンの第2位(後で加筆)

Posted by shinobu at 2000年06月03日 22:43 | TrackBack (0)