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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2001年02月16日

新国立劇場演劇『ピカドン・キジムナー』02/10-03/01新国立劇場・中劇場

 タイトルからして私は足を運ばない種類の演目です(私は戦争ものが苦手なのです)。でも、新国立劇場演劇はできるかぎり全て観ようと思っているので、いやいやながら(苦笑)チケットを取って、一人で行きました。

 でも・・・観てよかった・・・・・。
 まず演出が栗山民也さん!そして照明が勝柴次朗さん!!サイコーです♪美術は妹尾河童さんでした。言うまでもなく、それだけで超豪華スタッフです。さすがナショナル・シアター。

 巨大なガジュマルの樹が上手側に生えていて、その雄雄しい枝が上手から下手へと客席頭上の天井をつたって斜めに横切っていました。劇場全体が古いガジュマルの大木の幹に覆われている感じ。そして舞台中央にはめちゃくちゃリアルな沖縄の平屋。転換の時にはその家が舞台のつらから奥へと水平移動します。それがまたさりげないの!く~っスゴイっっ!!

 舞台は1972年の沖縄本島のとある民家。沖縄が日本に返還された日から半年間ほどのお話。子供達の夏休みや思春期の悩み、大人の純愛などが静かに、ほがらかに描かれるなかに、沢山の重たいトピックが織り交ぜられていました。

○米軍と沖縄民間人との関係
○沖縄が日本に返還されてからの生活の変化
○原爆被爆者の後遺症と、被爆者差別
○日本人とは区別された韓国人被爆者と沖縄人被爆者の待遇
○現在の在日韓国人差別問題
 など。

 キジムナーとは、ガジュマルの樹に住むと言われる沖縄の子供の妖精です。その民話と被爆者のエピソードをダブらせながら、美しく、悲しく物語は進みます。
 脚本は坂手洋治さんの書き下ろしです。栗山民也さんと「黒い雨」を劇化しようと話していたところ、新作になったそうです。坂手さんといえば劇団「燐光群(りんこうぐん)」の作・演出家で、1999年に「天皇と接吻」で第7回読売演劇大賞の最優秀演出家賞と優秀作品賞を受賞されています。

 こういう作品を国立劇場で上演することが本当にすばらしいと思います。爆弾がどうだとか、戦争がどうだとか、そういうことじゃないんです。その時、人間はどうなったか。どう思ったか。そして、どうしたか。
 いつか、私の子供が中学生ぐらいになった時に、ぜひ観て欲しいと思いました。

新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp

Posted by shinobu at 2001年02月16日 12:13 | TrackBack (0)