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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2001年05月13日

新国立劇場『夢の裂け目』新国立劇場 小劇場05/08-30

 新国立劇場 小劇場で「時代と記憶」をテーマに新作を発表するシリーズの最後を飾る、井上ひさしさんの書き下ろし新作です。舞台写真はこちら

 東京裁判モノのミュージカルなんです。主人公は紙芝居屋さんの主(あるじ)。なんかおかしいでしょ。ホント、可笑しいの♪

 笑って、微笑んで、泣きました。面白いストーリーだし、素晴らしいセリフばかりだし、笑いもエイジレス&グローバルだし。役者さんもいぶし銀な感じのプロばかり。(角野卓造、三田和代、キムラ緑子、藤谷美紀など)

 でも、一番感動させられたのは演出です。たとえば、張り詰めた空気に支配されるべきところを歌や照明で緩和させたりして、あくまでもエンターテイメントとしてのお芝居の形をとり、観客を守ってくれる、とか。またその反対もしかり。

 うー・・・完全に降伏でした。私。ただ、一人の観客、一人の人間として感動いたしました。その非凡な美的感覚と熟練の技と深く寛大な心に。

 さすが栗山民也さん(現・新国立劇場 芸術監督)です。「お芝居は演出次第」という言葉は彼のためにあるのだと言いたくなるほど、そのセンスと技術は群を抜いていると思います。日本人離れしていて、誰よりも日本人で。

 残念なことにチラシのビジュアルが全く内容に合っていません。あれじゃ怖~い戦争モノみたい。だからまだ空席があるんですよね。すごい作品なのに。違うんですよっっ。笑えて感動できる最先端の日本製ミュージカルなんです!(音楽は「三文オペラ」から拝借していますが)めちゃくちゃお薦めです。5月いっぱい上演してますから、皆様ぜひぜひ足をお運びください!

 【ネタバレ感想】

 今の自分について考えさせてくれる。
 初心(本心)に戻らせてくれる。
 共に生きていると気付かせてくれる。

 観る者を映す鏡となることが出来る演劇があります。
 それが演劇の力であり、人間には演劇が不可欠なんだと声高に叫びたくなる理由なのだと思います。

 「学問には二つある。一つは世界の骨組みをさぐること。もう一つはそれを子供に渡すこと。」
 「劇場は夢の真実を考えるところ」
 
 登場人物のセリフとして、そして歌の歌詞として表される哲学。私は哲学、理念のあるものを観たいし感じたいと思っています。それこそが芸術には(もしかすると学問にも)必要なのだと心から思います。

 今回ほど客席から学んだことはありませんでした。「東南アジアの戦地。現地の娼婦ジェニー♪あ~夢の女」というような意味の歌で大笑いしたり苦笑したりする白髪のおじい様方。
 「大学教授をやっていたけれど紙を、えんぴつを手に入れるために奔走していたら、気付いた時には闇市のブローカーになっていた。」というセリフに体を捩じらせて笑うおばあ様方。

 GHQの扉を開けるとその裏に巨大なアメリカ国旗の紋様の端っこだけがチラリ。
 舞台奥の「普通人」だけを照らす青い、青い照明。
 「劇場は夢の真実を考えるところ♪」と歌いながらコンペイトウの星が降りてくるラストシーン。

 栗山民也さんが客席の一番後ろで観ていらっしゃいました。(こうやって私は演出家がどこにいるのかをチェックするのが好きなんですねぇ)

出演=角野卓造/キムラ緑子/高橋克実/藤谷美紀/大高洋夫/熊谷真実/石田圭祐/三田和代/犬塚弘
作=井上ひさし 演出=栗山民也 音楽=宇野誠一郎 美術=石井強司 照明=服部基 音響=深川定次 衣裳=前田文子 演出助手=北則昭 舞台監督=増田裕幸            
新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 2001年05月13日 16:02 | TrackBack (0)