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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2002年10月18日

大人計画・日本総合悲劇協会vol.3『業音』草月ホール10/9-26

 大人計画の作・演出家・主宰の松尾スズキさんが客演の役者さんを集めてのプロデュース公演。テーマは悲劇。

 すごかった・・・・。
 期待以上でした・・・・衝撃。
 びっくりした。慰められた。説教された。元気付けられた。涙出た。
 「どうせコンビニ人生なんだろ?なりふりかまわず生きていこう。」

 売れない歌手・荻野目慶子は自分の母親の老人介護をしながらタレント家業。借金のかたにマネージャーと肉体関係。ただ金だけのために売春も。松尾の妻を車で轢いてしまった荻野目慶子。妻は植物人間に。代わりに松尾と結婚する荻野目慶子。携帯メール、オーディション、売春、ホモ、フラダンス、脳、エイズ、便器、うんこ・・・・etc.
 残酷非道で悲劇的なストーリーに極端なキーワードたち。てんで先の見えない展開。でも最後にはこれらを昇華させて観客に何かを気づかせる。松尾さんは間違いなく天才です。

 荻野目慶子さん、体当たり。いや「体当たり」とかいう紋切り型ではすませられない見世物でした。最初はあまりに演技が下手なのでどうなることかと思いましたが、もうどうでもイイ。すごいです。頭のてっぺんからなにかポン!ってはじけちゃった。キレイな幻を見た。

 松尾スズキさん。いい男すぎ。その存在がもうオトコ。フェロモン出しすぎです。へにゃへにゃだけど、決めるとこは決める。はすに構えてるように見せかけつつ正論をぶっつけて、自分のバカをさらけ出す。柔らかさと硬さが完全に入り混じって同居。優しくて厳しい。いやらしくてストイック。イヤだ!こんな男!惚れるなと言われても惚れる以外にないよ!!

 片桐はいりさん。ギャグもシリアスもお手のもの。切れ味の良い動き。「私は誰だ?誰なんだ?」そんな重たくてクサいセリフを堂々と言ってのけ、しかも心にぐさっと刺さります。

 大人計画の役者さん、皆さんすごかった。「すごかった」なんて安易な言葉でごめんなさい。でも本当にすごかったんです。とにかくどんなブサイクな格好しててもかっこいいんです。はっちゃけてても冷静。意図的にキチガイ。お客様へのサービス精神過多で自分(の肉体)には厳しくて。TVや映画など色々なところで皆さんが活躍されるのがわかる気がしました。

 舞台装置もすごかったな~・・・・象徴的なんですよね。ドス黒く赤茶けたあの、穴。あぁ何を書いてもネタバレになっちゃう。もう書けないよ・・・。

 この作品をお洋服のブランドで例えるとポリシーはモスキーノ。字模様はミッソーニ。奇形な感じがマサキ・マツシマ。明るさはジュンヤ・ワタナベ。力強さは・・・着物。博多の泥大島。

 草月ホール、期待通りでした。ビルの中を見物するだけでも価値があります。

大人計画HP : http://www9.big.or.jp/~otona/

Posted by shinobu at 2002年10月18日 00:21 | TrackBack (0)