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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年05月19日

reset-N『knob』05/15-20シアタートラム

 しのぶいちおしのreset-N。吉祥寺で『MARKET』というお芝居を観て以来、追いかけています。
 『knob(ノブ)』は第四回劇作家協会新人戯曲賞受賞作で何度か再演されてますが、私は戯曲本で読んだだけだったので、念願の舞台初見となりました。

 建設途中で工事が中止になった、東京湾岸の廃墟のビル群の中の一室。カップルが訪れるが、女の方がいきなり消える。彼女は窓から飛び降りたのか?そこに現れた尋常じゃない関係の男女。さらに知的障害(?)のある少年とその世話係の男もやってきて・・・。

 戯曲で読んだイメージと全然違いました。本よりも、もっと熱くてカジュアルな感じなんですよね。等身大というか。だから身近に感じて、より心に迫ってきました。

 人間は、理性と本能という相反するものを生まれながらに持っていて誰もがその矛盾にそれぞれの形で悩み、乗り越えていきますが(乗り越えた、と自分で決めますが)、本当の自分、隠された自分の本性を追求していくと、時にはそれが今の人間社会ではタブーで、命を懸けなければいけないことだったりします。

 夏井さんの脚本の登場人物は、そういう極限状態に立ち向かって不恰好にもがき続けます。人と、世界と、通じ合いたいと思いながら、とてもデリケートな部分で傷つけあい、苦しみます。だけどそこにはささやかな救いがあります。少なくとも彼らは、あきらめていないんです。希望を持っている。そこに私は一番共感するし、reset-N作品に感情移入できるところだと思います。

 いつも通り、セクシャルさと残虐さにしびれました。男女のSMの関係がスタイリッシュに作られているのでクールで官能的。露出も適度です。そして、残酷さにうっとりしちゃうんです。それこそSMですよね、知らなかった自分の一面を発見するような感じ。だって「もっともっとヤッっちゃって!!」とか思う自分が居るんですもの、人を撲殺するシーンで。

 役者さんたちの演技合戦も見所だと思います。セリフについてはまだちょっと説明に聞こえてしまうところもありましたが、初日だったしまだ最高潮ではなかったのかも。それでも観ていてわくわくでした。

 照明が良かったです。スマートで、けっこう大胆なんですよね、そのさじ加減がカッコいい。
 衣装がカラフルで、シンプルな舞台に華を添えていました。マゾの女のコーディネートが好き。

 看板女優の町田カナさん。ほんっとにセクシーだなー。サディストもマゾヒストもお手のものですね。猫と牛は最高。8月のKERA MAP『青十字』が楽しみです。
 太田宏さん(青年団)。かっこ良かった~・・・・。立ってるだけでどんな人かわかりました。やっぱり巧い。
 でも、若手とベテランとの演技技術のアンバランスを露呈させてしまった、とも言える気がします。

リセット・エヌHP : http://www.reset-n.org

Posted by shinobu at 2003年05月19日 00:59 | TrackBack (0)