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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年06月16日

新国立劇場演劇『サド侯爵夫人』05/26-06/21新国立劇場小劇場

 三島由紀夫 作『サド侯爵夫人~澁澤龍彦著「サド侯爵の生涯」による~』は新国立劇場演劇の2002年度〈シリーズ/現在へ、日本の劇〉の第4段、最後を飾る作品です。

 怒涛のセリフ劇です。面白かった~・・・・。美しくて残酷な言葉の洪水。ピリピリ、ぞくぞく、震えました。『浮標(ブイ)』もそうでしたが、こんなすごい演目は上演されること自体が貴重です。

 フランス上流階級の6人の女たちが、サド侯爵の異様な性癖について語り、ぶつかり合います。中盤以降、あらゆる嘘がバレていき、衝撃的な結末が・・・。
 
 鐘下辰男さんの演出は、実は私、とても苦手なんです・・・。今まで2度拝見しましたが2度とも途中で帰りました(泣)。でもこの作品は最後までめちゃくちゃ楽しませていただきました。三島由紀夫さんの作品ということでプレーンなセリフ劇になっていたからじゃないかしら・・・。鐘下色が薄かったんです。すみません。単に好みの問題かもしれません。

 幕と幕の間の音楽がまさに鐘下さんテイストでしたが、やはり私は合ってないと思いました。音響効果もあんまり合っているとは思えませんでした。リアルじゃないんです。デジタル音で現代風。ドアをノックする音とか、風の音とか、もっと曇ったようなかすれたような音にして欲しかったです。

 衣裳が良かった・・・生地が最高。あのゴージャスさは素材が良くないと出せません。織りの光沢がなんともエロティックなんです。登場人物それぞれについて細かいところまで行き届いたデザインだったと思います。

 高橋礼恵さん。サド侯爵夫人役。言葉にはっきりと意味が乗っていて、余すところ無く伝えてくれます。理性ある人間の理性を欠いた行動、それが生む悲劇。そして再生。壮大なドラマを1人で背負ってくださいました。
 平淑恵さん。か、か、か、かっこいい・・・・!!!見ほれました。なんとも毒々しくてセクシー。やっぱりプロの中のプロはすごい。
 倉野章子さん。面白かった~。まさか笑わせていただけるとは思いませんでした。この、サド公爵夫人の母親役については確かに賛否両論になるかとは思いますが、私としては、滑稽さという意味で代表してもらいたい役だし、こういう深刻でアーティスティックなお芝居でこそ演技で笑える瞬間があることがとても良かったと思います。
 
 新国立劇場演劇の初日が、珍しくほぼ満員でした。女優ってすごい!と鳥肌がたつほど実感させてくれる作品です。ぜひ新国立劇場へ!

 新国立劇場:http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 2003年06月16日 23:11 | TrackBack (0)