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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年08月18日

CX製作『OVERSEAS(オーバシーズ)』08/17-31シアターコクーン

 藤原紀香さんの舞台初出演作です。
 ウォーキング・スタッフの和田憲明さんの脚本だというのが魅力でチケットを買いました。

 舞台は1995年のチリの首都サンチャゴ。映画『イル・ポスティーノ』を見てチリに興味を持った女子大生が日本人商社マンを頼ってチリを訪れる。そこでクーデターが起こってしまい・・・。

 チリのために良かれと思ってやっていることが、実はチリを貧困に陥れていた、とかそういう善意にもとづく悪事って本当に矛盾だらけで放置されて、今も昔も変わらず、はびこっています。そこで自分は一体何をすればいいのか。誰のために、何のために、生きていけばいいのか。答えは・・・わからない。こんなに複雑な世界では、何が正しいのかなんて誰も瞬時には答えられない。ただ、自分の周りの人、身近な人に対して、自分が正しいと思うことをするしかないのでは・・・?私はそういうメッセージを受け取りました。

 興行的にそうならざるを得ないのかもしれませんが、ところどころ陳腐なんですね。決めのところが特に。和田憲明さんの脚本は『SPACER』でも強く感じましたが、とてもしっかりとした主張のある社会派作品です。演出は河毛俊作さんという方。TVドラマ等のプロデューサー、アイドルのお芝居の演出もされていますね。うーん・・・シーン毎に意味はわかりやすいんですけど、脚本が良いだけにちょっと寂しいですね。あと、美術が安っぽいのはもったいないと思います。旗が出てきて上手と下手に引き裂かれていく演出は良かったな~。

 藤原紀香さん。巨大なお人形さんみたいに完璧にきれいでした。ダイナマイト・ボディー。商社の海外支社長婦人という役どころはぴったりですよね。ずーっとブランドものファッションに身を包んでいても、それほど不自然じゃないですから。ストーリー的には無理もありましたけど、きれいだからイイ!目にすっごくイイ!!(「私達、何か悪い事した?」と涙ながらに訴えますが、その服装がすでに罪だと言えます。)そういえば、衣装担当の役職名が「衣装」じゃなくて「スタイリスト」なんですよ。納得です。思っていたよりも演技はお上手でした。立ち姿にオーラがありますし、堂々と立っている姿勢は素晴らしいです。

 ただ、こんなにも主張の強いお芝居を「藤原紀香」がやる必要性があったかというと、疑問です。もしかすると彼女自身がこういうことに強く興味を持たれている方なのかもしれませんが(日韓親善大使とかやられてましたし、出られるTVドラマもそういうのが多いらしいですよね)私はできれば恋愛ものとかで「ノリカ」を観たかったな~。木村佳乃さんと別所哲也さんが出演された『恋人たちの予感』みたいに。あれ、すごく良かったんですよ。

 河原雅彦さん。スペイン語が流暢な日本人役。いい感じにライブっぽいし、瞬間的な乱暴さがスリルを生みます。河原さんがこの舞台に居てくれて本当に良かったです。
 真中瞳さん。チリに興味を持った女子大生役。TVドラマでチラリと観た時に「このコすごいなー」と思っていたのですが、やっぱり光っていました。素直でまっすぐな方ですよね。言葉がとても正直で真摯です。気に入ったな~♪
 羽場裕一さん。商社のチリ支社長(藤原紀香の夫)役。イケメン・オヤジをやらせるなら絶対にこの人ですよね。大好き。藤原さんとごっつんこしたり、肩を抱いたりしても羽場さんなら絵になります。
 村岡希美さん。チリ支社で働く会社員の妻役。うまいなー・・・・ちゃんと演技で笑わせていただきました。コメディエンヌとしての地位が確立してきた感がありますね。

 ご存知の方も多いかと思いますがチケットがイープラスで半額で売ってます。びっくり。売れてないんですね。私はチラシのビジュアルが原因だと思うんだけどなー・・・・。最近売れ残っている興行の共通点って、チラシがダサい(か、コンセプトが間違っている)ことだと思うんです。勝手なこと言ってすみません。でも、ビジュアル重視な時代であることは間違いないと思います。

 半額ならぜひぜひご覧になるといいのでは?なにしろ藤原紀香さんってほんっとに彫刻みたいですから。衣装もサービス満点です。そして、ストーリー自体も非常に勉強になります。心打たれるところも多いですよ。

文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/

Posted by shinobu at 2003年08月18日 20:27