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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年11月21日

reset-N『パンセ』11/20-25スフィアメックス

 私の好きな劇団、リセット・エヌ。作・演出の夏井孝裕さんの世界観をスタイリッシュ&ミニマムに表現する演劇スタイルです。『パンセ』は去年朗読で拝聴いたしました。未完でしたが。

 う~ん・・・初日だからか、残念ながら色んなミスが目立ちましたね。(公開ゲネがあったはずですが)全体的に自信のなさが伝わってきたように思います。何かトラブルがあったのかなーとか、脚本が遅かったのかなーとか、思いましたが、それでももっとババン!と堂々とやってもらえる方がお客様にとっては良いんですよね。

 交通事故で死んでしまったカップル。男は出版社に勤める編集者だった。仕事仲間が遺品確認のために警察に呼ばれる。なぜ彼は自殺したのか。隣りの女はいったい誰なのか。

 死んでしまった男は新しく作る雑誌の編集長で、その雑誌の名前が「パンセ」でした。「パンセ」はパスカルの著書のタイトルです。日本語では「随想録」と訳されたりしていたはず。(高校の世界史の記憶では・・・)「人間は考える葦である」という言葉が有名ですよね。その言葉の意味を説明するシーンがあって、いたく感動いたしました。

 「reset-Nの"思想"」というのがキャッチコピーにもありましたが、まさに今、夏井さんが考えてらっしゃることを少しずつ、小さな声で、でも一つもこぼれ落とさないように、丁寧に、届けようとしていたんじゃないかな、と思いました。そういう意味では朗読劇で観た時の方が良かったなー。ゆっくり考える余裕がありました。

 男と一緒に死ぬ女の存在が大きすぎて、肝心の主人公(男)が薄くなっていた気がします。最後はあっけないというよりは、ここで、これで終わらせてしまうことが悲しかったです。

 スフィアメックスの色や設備を思う存分に使った舞台装置でした。照明が面白い。でもちょっと単調過ぎたかなー。もっと赤とか青とか観たかった。衣装は、赤&黒グループと青&白グループに分かれていたのがきれいでした。美術とぴったりでした。でもちょっと狙いがあからさま過ぎかなーとも思いました。

 町田カナさん。死んだ男の仕事仲間役。今回は地味な役でしたね。もっと派手なカナさんが好きなのでちょっと残念でした。
 坂本弓子さん。背の高い女役。セクシーっ。ヘアメイクも衣装もとても良かったです。言葉がきれいに光っていました。清らかな演技が残酷さと悲しさを一層深いものにしていました。この「女」の論理は、私には決して受け入れられないし、許されないと感じるものなのですが一番リアルでした。舞台上で、短い命が輝いていました。

 天王洲・スフィアメックス http://www.tennoz.co.jp/sphere/
 リセット・エヌ : http://www.reset-n.org/

Posted by shinobu at 2003年11月21日 15:59