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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年12月17日

ホリプロ『法王庁の避妊法』12/11-28世田谷パブリックシアター

 うわーーーーーんっっ!
 とにかくボロボロ大泣き!
 脚本が素晴らしい!
 演出も楽しくて優しい!
 役者さんも素敵!

 チケットが余っているなんてもったいなさ過ぎです.
 皆さん、どうか観に行ってください!!

 自転車キンクリートの飯島早苗さんと鈴木裕美さんの共同脚本で、鈴木裕美さん演出です。94年初演で今回がおそらく2度目の再演ですが、他の劇団(劇団NLTなど)でもどんどん上演されている傑作戯曲です。

 作品の深い優しさに心の底から癒されました。物語の世界およびそれを作り上げている人、物、音など全てが無条件の愛に満ちているんです。井上ひさし作品にちょっと似ている雰囲気です。

 舞台は荻野(オギノ)先生の産婦人科。さまざまな悩み、考えを持った患者や医者が来院します。
 「子供ができないからお姑さんにいじめられるの」VS「子供がどんどん生まれてしまって、生活に困っているんです。」
 「子供は神からの授かり物。人が(堕胎で)殺めることは許されない」VS「望まれない子供もいる。そんな子供は生まれてきたらどんなに不幸になることか」
 「排卵日が特定できれば妊娠したいときに妊娠できるし、避妊も可能になる」VS「子供は神様が授けてくださるものなのに、人が作るものだと言うのですか?」

 妊娠、出産は人間の生命の価値についての大テーマです。登場人物一人一人の立場からのっぴきならない意見がバンバン出てきて、いやがおうにも観客は自分に当てはめて考えることになります。科学の進歩によって、人間はどんどんファンタジーの中では生きていられない存在になってきています。そこで自分の気持ちをどう納得させて、これからを生きていくのか。それについての一つの答えを出してくれています。
 また、「先生はどうしてこんな研究を続けているんですか?無謀ですよ。」「なぜって・・・それが謎だからだ。」にも感動。(セリフは正確ではありません。)

 勝村政信さん。オギノ先生。面白かった~。熱かった~。泣けた~・・・。勝村さんに泣かされたのは蜷川演出『マクベス』以来です。ひとめぼれのシーンや排卵日発見のシーンなど、勝村さんだからこそ作り出すことの出来る面白くて感動的な瞬間がいっぱいです。
 稲森いずみさん。オギノ先生の妻。細くて白くてきれい・・・(うっとり)。怒ったり暴れたりするのは今一つ難しかったみたいですね。でも清純でまじめな日本女性をそのまま体現してくださいました。着物姿が美しい!
 横堀悦夫さん。キリスト教徒の医者。『ロンサム・ウエスト』の神父役で注目していたら『パートタイマー・秋子』でもすごいキャラで、そして今回。もうお顔もお名前も覚えました。うまいです。はずさないです。
 西尾まりさん。フェミニスト看護婦。がんばり屋さんの役がいつもぴったりですよね。いつも必死なのが好き。神野三鈴さんみたいに。
 三上市朗さん。要領よく生きたい医者。うまいところで出てきてうまくこなすって感じ。さすがだなーと思いつつ、私は冷めた目でしか見られませんでした。なんか技術ばかりが目立ってしまって。
 西牟田恵さん。妊娠したくない女。どんとこい系おっかさん役。笑わせるところはしっかり。泣かせるところはずっしり。でも美人役の西牟田さんが、私は好きなんです。
 持田真樹さん。妊娠したい女。ストレートでおきゃんな演技が、すがすがしく、可愛らしかったです。ものすごく小さい人なんですね。でも鮮やかに光っていました。

 なんでチケットが売れてないんだろう・・・と友達と話したのですが、結論は「タイトルが悪い」。ほんとえらそうなことですみません。演劇ファンならキャストとスタッフを見ただけですごそうだってわかりますけど、一般の人は『避妊』っていう漢字を見ただけでちょっと引きますよね。私ならそうです。どんなに可愛らしくてロマンチックなチラシビジュアルでも、『避妊法』についてのお芝居を彼氏と観に行くわけには行かないし・・・(笑)。

世田谷パブリックシアターHP内公演情報ページ

Posted by shinobu at 2003年12月17日 15:02