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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年06月10日

新国立劇場演劇『INTO THE WOODS』06/09-26新国立劇場 中劇場

 2000年の『太平洋序曲』に引き続き、作詞・作曲:スティーブン・ソンドハイム、演出・振付:宮本亜門のミュージカルです。『太平洋序曲』はこの秋、新演出でブロードウェイに進出しますね。
 グリム童話(『シンデレラ』『ジャックと豆の木』『赤ずきん』『白雪姫』など)の登場人物がドンドコ出て来て“森の中へ”入っていきます。大人も子供も楽しめる大娯楽傑作でした。楽しかった~っ!お薦めです!

 パン屋の夫婦(『ヘンゼルとグレーテル』?)、赤ずきん、ジャック(と豆の木)、シンデレラ達が、森の中でそれぞれの望みを叶えていきます。一種のパロディーですね。しかし後半からは全く新しいストーリーが用意されていてハラハラドキドキでした。(以下、ネタバレします。)

 笑い満載のミュージカルで、ストーリーもメッセージ性があって感動させられました。何度も涙が出ましたね~。
 “森の中で欲しいものを得て、大切なものを失い、孤独に気づき、人生を知る。
  自分のことは自分だけで決めるんだ。
  だけどこれは覚えておいて。君は一人じゃないよ。”
 役者さんは決して説教くさくならず、あくまでもサラっと素直に発声されるので、心に柔らかく伝わってきました。
 後半では人がどんどんと死んでいく急展開になるのですが、それもあくまでも童話風にさらりと。かっこいいです。

 美術(礒沼陽子)と照明(中川隆一)が素晴らしかったです。“森の中”はまるでテーマパークのアトラクション!巨大な木が動いて場面転換しますが、そのダイナミックさにわくわくします。そして照明は色や模様が鮮やかで美しく、暗転のタイミングが絶妙なんですよね~。ちょうど盛り上がるところでパッと暗転するので残像が美しく残るのです。前半のラストの旗(?)が落ちるのがカッコ良かったな~。こういう仕掛けを見せられた時に、亜門さんって本当に素敵だと思います。

 全体として中劇場の良さを有効に活かしきった使い方だと思いました。まず舞台は客席側に丸く大きくせり出していて、床のレベル(高さ)が客席の床と同じです。役者さんが舞台からそのまま走り込んで来ますので、観客と役者さんとの距離がものすごく近いのです。
 そして中劇場といえばあの巨大な奥行きですよね。野田秀樹 作品や劇団☆新感線でも大胆に使われていましたが、この公演ではラストに役者さんが舞台奥の暗闇に向かってず~っとまっすぐ走り去って行くところだけに使われていました。私はこういう奥ゆかしい、狙いがピンポイントな使い方が好きです。実は大男の妻(大女)にも使われていますよね。あんなに大きな影を幕に映そうと思ったら、かなりの奥行きが必要なはず。
 美術の礒沼さんは先日の『てのひらのこびと』も手がけてらっしゃいますね。ぜひ追いかけたい美術さんです。

 衣装(朝月真次郎)も面白いし、かっこいいし、凝っているので、誰を見ても楽しかったです。牛や狼、魔女の仮面とかものすごいリアルで映画の特殊メイクみたいでしたね。

 歌に関しては、これは仕方の無いことなのですが、英語を日本語に翻訳している時点で色んな無理を感じます。歌唱力についても聞きほれる声を披露してくださったのはほんの数人でした。日本でも(劇団四季 以外で)ロングランが根付くと、ミュージカル文化も人材も育つと思うんですけど(そうなって欲しい!)。
 ただ、この作品については亜門さんの、溢れ出るエンターティナー精神と優しさ、力強さを体中で受け止められましたから、役者さんの技術については気にする必要がありませんでした。

 カーテンコールでは2度目に亜門さんと台本を書かれたジェイムズ・ラパインさんも舞台に出ていらっしゃいました。もちろんスタンディング・オベーション。そうそう、SAYAKAさんが泣いてましたね。う~ん、若いっ。亜門さんに手をつながれて大喜びの高畑淳子さんが可愛かった。やっぱり初日はいいな~としみじみ思いました。

 諏訪マリーさん。魔女役。最高にかっこいいです。ドスの効いた声もしゃがれ声も、高く大きく広がる高音も完璧。『INTO THE WOODS』といえば諏訪マリー、ですね!
 高畑淳子さん。パン屋の妻役。やっぱり凄いコメディエンヌです。なぜあんなに優しく大らかな笑顔ができるのでしょう。キスシーンがいっぱい(笑)。
 シルビア・グラブさん。シンデレラ役。美しい歌声。なんとなくキムラ緑子さんに似てらっしゃいますよね?

 えっと、これは蛇足ですが、松田聖子さんが客席にいらしてですねぇ。ちょっとしたお祭り騒ぎでした(笑)。幕間の休憩ではガードマン(というのかな?)らしきスーツ姿の男性6人ぐらいに囲まれて移動されました。だって客席で「聖子ちゃ~ん!!」とか言う人いるんだもの!びっくりだよっ!そっとしておいてあげなよっっ! 大スターって大変なのね~と少し同情しちゃいました。だって一人娘の初舞台なのに、カーテンコールの時は客席にいられなかったんだもの。
 でも聖子さん、ほんっと~にお人形さんみたいに美しい方でした。めちゃくちゃ色白で折れそうなほど細い体で・・・そして目が大きい!!20代に見えるといっても過言ではないです。はは、私もミーハーですね(笑)。


演出・振付:宮本亜門 作詞・作曲:スティーブン・ソンドハイム 台本:ジェイムズ・ラパイン
出演:諏訪マリー 小堺一機 高畑淳子 藤田弓子 シルビア・グラブ 藤本隆宏 SAYAKA 上山竜司 吉岡小鼓音 広田勇二 荒井洸子 鈴木慎平 大森博史 藤田淑子 仁科有理 山崎ちか 二瓶鮫一 山田麻由 飯野愛
翻訳:橋本邦彦 公演音楽監督:山下康介 美術:礒沼陽子 照明:中川隆一 音響:大坪正仁 歌唱指導:楊淑美 衣裳:朝月真次郎 ヘアメイク:憑啓孝 演出助手 :伊藤和美 舞台監督:瀬崎将孝
新国立劇場:http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 2004年06月10日 16:08