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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年02月03日

マンションマンション『3年パンク』01/29-02/1下北沢OFF OFFシアター

 ピチチ5(クインテット)の福原さんの脚本・演出なのでウハウハです。
 またもや肩が震えて心が温かくなりました。最前列ど真ん中の席でうずくまりながら、あっけにとられたり大声で笑ったり、感動でボロボロ涙垂れ流し状態になったり。最後まで迷いなく添い遂げました。
 ピチチ5『大クラシック』でもらったのは、純情。
 『3年パンク』でもらったのは、愛です。

 私が福原さんの脚本に初めて出会ったのは『第1回歌フェスティバル』というイベントでした。その時は「歌おっ」と言って突然脈絡なく歌うブサイクな女の子たち(男優さんが演じていました)に、とにかく力を見せつけられたというか、生の男子の底力っていうものにストレートに感動しました。

 超現実的な長女、やる気のない二女、がんばりどころを間違った三女の、性格バラバラの3人姉妹が経営するさびれたレンタルビデオ屋が舞台。そこにやってくるのは夢のないバイト君、エロビデオばかり毎日借りる中年男、性欲を押さえられない中学生・・・。だめだめな日々に突然起こった長女のかけおち事件が、店にちょっとした変化を持たらし・・・。

 開演してからすぐの「愛されている限り、私は無敵なのだ。」でまず感涙。そうなの!女ってそうなのよっ!!
 "Only You"を熱唱するのにBGMは大音量で"I can't help falling in love with you"。全然合ってないんだけど、両方の歌のラブが伝わってきて笑いながら泣きました。なんて不恰好でバカ正直な愛。
 クラシック音楽が溢れる中、身長3000mになった(本当になります)男の愛の告白。「俺の鎖骨が見えるかい?」「君よ、俺に住め!」

 ジャリ銭が上から降って来たり、手紙を燃やしたら大きな炎が出たり、生の仕掛けがライブ感を盛り上げます。その散らばったコインを暗転中に天使がちりとりで片付けたり、小さなお立ち台に立って抱き合う男女の足元の穴からしょぼい光が差す、などのへなちょこ感も手堅く笑いを誘いました。
 かかる音楽が全部ツボでした。時代遅れで、しめっぽくて、もしかするとちょっぴりかび臭いような(失礼)、けれど人間の心の奥底に変わることなく流れ続けている、優しい音楽たちでした。

 幼い頃、お父さんと一緒に行ったうどん屋台を思い出しました・・・。寒さに震えながらハフハフ美味しそうに食べたのですが、実はあまり美味しくなかった。だけどお父さんと一緒に食べていることが嬉しかった。そんな恥ずかしいような、くすぐったいような嬉しさと似ています。顔が自然とにやけてしまって、心の底からあったまって、急いで歩く父の背中に小走りで近づいて手をつかまえて、「お父さん、また連れてって」とは言えないまま、無言で手をつないで家に帰ったなぁ・・・おっとっと、昔の思い出にすっかり浸ってしまいましたが、まさにその、誰もが持っている夢のような懐かしさがこのお芝居の土台になっていると思います。そこに現代の素っ裸の感情と本物の愛がプラスされて、私の想像力と感情は飛んで飛んで宇宙へとつながったのです。ゴジラと同じ大きさの男の鎖骨のくぼみに住む、彼女が見えました。

 あぁ、たたみ半畳の自分の世界から無限の広がりへ。想像力を自由にしたモノ勝ちですね!

 根上彩さん(青年団)。かけおちする姉役。元オッホ所属の方だそうです。お芝居が進むにつれてどんどん美しくなってくるんです。女って魔性です。
 植田裕一さん(蜜)。かけおちする客役。昔お一人でのパフォーマンスを拝見した時は「この人コワイ」って思ったのですが(笑)、Chintao Recordsやピチチ5など、劇団でお見かけすると「キュートだなぁ」と思ってしまいます。目が離せない怪優ですね。

作/演出 福原充則(ピチチ5)
出演:植田裕一(蜜)、高井浩子(東京タンバリン)、富岡晃一郎、根上彩(青年団)、三浦竜一(暴動mini)、横畠愛希子、熊田プウ助、柿崎弘美、芹澤セリコ(動物電気)、多田幸生、松本佳則
舞台監督:松下清永 舞台美術:福田糸重 照明:田原聖子(LIGHT STAFF) 音響:中村嘉宏(at Sound) 宣伝美術:齊藤拓 宣伝写真:水野敦史 制作:吉野礼、今井由紀

マンションマンション : http://www.ne.jp/asahi/de/do/ms.html

Posted by shinobu at 18:28