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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2004年12月28日

MONO『相対的浮世絵』12/23-28シアタートラム

 イギリス留学から帰ったばかりの土田英生さんの新作です。女優さん2人は退団したということで、男5人芝居でした。

 墓地の中にある小さな公園。年のころ30代とみられる2人の男が、ベンチに座って誰かと待ち合わせをしている。やってきたのは高校の卓球部で一緒だった友人2人。実は彼らは部室の火事で死んでしまった幽霊なのだ。

 とぼけた笑いがいっぱいちりばめられた静かな会話の中に、一瞬ギラリと光る悪意や痛烈な批判が見て取れる、MONOらしい作風でした。

 生きている男2人は、会社の金を使い込んで、経理の女子社員と不倫しているサラリーマンと、女生徒に手を出してしまっている高校教師。どう贔屓目に見ても社会的には落ちこぼれです。幽霊は幽霊で、生きている2人を助けたり窮地に陥れたり、かなり自分勝手。のんびり会話しているわりに舞台上にいる人物の環境はみな深刻です。

 物語の終盤で、若者2人の命を奪った部室での火事について全員で語り合います。人生の中でもっとも大きな事件である「死」とそれを引き起こした事件からは、やはり逃れられません。どんなに目をつぶろうとしても人間は結局、そこに引き戻されてしまいます。
 生き残った2人は、幽霊2人のために自分の人生をリセットすることになるのですが、そうすること自体は尊いし、それを描く意義は大きいと思います。でも、演出があっけなさすぎたせいか、私は腑に落ちなかったです。

 舞台には、茶色くて細いタル木を何本も並べて立たせて、こぎれいなテラスが作られていました。その細い木々がだんだんと無数の墓石のように見えてきて、死んでいったすべての人間、そしていつかそうなる私たちを表しているようでした。

 私が初めてMONOを観たのは2000年の『錦鯉』で、ヤクザが更正する(?)お話でした。全身が武者震いするような感覚をおぼえ、それ以来MONOおよび土田さん脚本の公演には通い続けています。今、ガンガンに宣伝している映画「約三十の嘘」も観たいなーと思っています。

 でも、今作品はちょっと退屈だったかな。いかんせん、暗かったですね・・・。なんだか俳優さんがすごく年を取られたように感じました。特に水沼さんは体調が悪いのかなぁと心配になるくらい顔色が良くなかったです。
 やっぱりMONOを観てきたファンにとっては、女優2人が欠けたのは痛かったですね。今後は劇団員にこだわらずに、どんどんと女の人を舞台に上げてほしいなー。

 『相対的浮世絵』というタイトルはかっこいいですよね。絶対的なものなんてこの世にはなく、いつも属人的なことで全てが形作られるこの世の中を意味しているように思いました。チラシに書いてある文章でもよくわかります。

《北九州・伊丹・長久手・浜松→東京公演》
作・演出:土田英生
出演:水沼健・奥村泰彦・尾方宣久・金替康博・土田英生
舞台監督: 永易健介 照明: 吉本有輝子 音響: 堂岡俊弘 舞台美術: 西田聖(GEKKENN staff room) チラシイラスト: ニイヤマケイコ 宣伝美術: 西山英和(PLOPELLER.) 制作: 垣脇純子 本郷麻衣 齋藤由利香 協力: radio mono アトリエ劇研 真昼 企画製作: MONO・キューカンバー
MONO:http://www.c-mono.com/

Posted by shinobu at 16:39 | TrackBack