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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年02月10日

モダンスイマーズ『デンキ島 松田リカ編』02/08-13中野ザ・ポケット

 モダンスイマーズは蓬莱竜太さんが脚本・演出を手がける劇団です。主宰は西條義将さん。蓬莱竜太さんは劇団外でも大変なご活躍で、今年8月に世田谷パブリックシアターで上演される『世界の中心で、愛をさけぶ』の脚本を担当されるそうです。これはびっくりですね。
 以前の作品『デンキ島』の続編ではなく、完全な新作だそうです。

 スミエ、マコ、リカは高校の仲良し3人組。卒業したら3人一緒に東京に行こうと約束をしている。スミエは建築家を目指しており、マコは美術の道に、リカは柔道が特技だというだけで、特に東京に行く目的がはっきりとしているわけではなかった。リカの母親は男を作って出て行ってしまっており、兄が田んぼを耕して家計をまかなっているが、父親がバクチと酒に溺れているため、暮らし向きは悪くなるばかり。リカも毎日バイトに明け暮れている。
 ある日、本土からヤクザの一味が島にやってきた。高校の男子生徒がその仲間に入れられたり、父親のバクチの借金を取り立てに来るなど、リカは闇の世界へと否応なしに引きずり込まれていく。

 数ヶ月前から「作品が良い」という噂を友人から聞いていました。なのに今日まで行かなかった理由は、私がたまたま中野MOMOで芝居を観た日に、中野ザ・ポケットの入り口に受付待ちの長蛇の列を作っていた劇団が、このモダンスイマーズだったからです。受付で待つかもしれない・・・という不安から、今まで遠ざかっていました。で、今日も案の定ちょっとした行き違いがあり・・・・。
 そういう、入り口でのマイナスがあったのが原因なのかどうかは、はっきりとはわからないのですが、どうしてもこの作品の空気に溶け込めませんでした。よく出来た脚本だなーとか、役者さんも一人一人個性があって素敵だなーとか、観ている最中に感心するところも沢山あったのですが・・・。

 演出で意図的に作っているのでしょうけれど、全体にあきらめたような気持ちが広がっていたように思います。私も日本の本島から離れた小さな島に行ったことがあるので、まんべんなく、どうという理由も無く、ただ、ダラっと停滞している状態というのは体験したことがあるのですが、この作品における空気はそれとも少し違う気がしました。いつも卑屈さと隣り合わせになっているというか、基本的に後ろ向きな雰囲気で、私にはそれが合わなかったかもしれません。でも、2時間10分の内容はとても濃かったし、この作品だけで蓬莱竜太さんやこの劇団の作風がわかるとは思えないので、ぜひ次回も観に行きたいと思います。

 ここからネタバレします。

 オープニングは誰かが死んで1年経ったシーンでした。その誰かが死ぬ前から、物語は始まります。死ぬのは前向きで善良そのものの性格のスミエ(加藤亜矢子)だということは徐々にわかってくるのですが、スミエだ死んだ後、つまりオープニングに話が追いついたところから、ぐんと話が面白くなります。
 リカ(中島佳子)と番長のケンジ(小椋毅)が一緒に暮らすようになり、ケンジの元彼女のエリコ(野口かおる)とリカがアパートの前で口論するシーンはドラマティックでしたね。リカが隠し持っていた拳銃が地面にすべり落ち、それを見てケンジがリカに別れを告げるところは涙が出そうになりました。

脚本・演出:蓬莱竜太
出演:津村知与支 古山憲太郎 西條義将 田口朋子 加藤亜矢子 高橋麻理 中島佳子 野口かおる 小椋毅 正村嘉浩 高橋康則 成瀬功 菅原大吉
美術:伊達一成 音響:藤平美保子 照明:松本由美(東京舞台照明) 宣伝美術:小原敏博(アカエボシ) 衣裳協力:小原敏博(コブラ会) 表紙イラスト:蓬莱竜太 制作:神野和美 松尾由紀 制作協力:(株)オフィスPSC 重留定治 広川由季
ハバネラ:http://www.japan-pr.com/habanera/
ポケット&MOMO:http://www005.upp.so-net.ne.jp/thepocket/

Posted by shinobu at 2005年02月10日 01:09 | TrackBack (3)