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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年05月12日

bird's-eye view『un_titled』05/11-22こまばアゴラ劇場

 bird's-eye view(バーズ・アイ・ビュウ)は内藤達也さんが構成・演出するパフォーマンス・ユニットです。
 当サイトのメルマガ「初日のみ500円引き」企画が実現いたしました。お申込くださった皆様、ありがとうございました!
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 おしゃれな衣裳&メイクの役者さんが、ある制約のもとにコミュニケーションをしていく短編集でした。いつものbird's-eye view(以下、バーズ)のスタイルと言えますが、Second Line(ショート・コント集)とは違って、一つのテーマが常に流れているように感じました。それは「否定」とか「消去」とか、かな。

 最初は硬さを感じたのですが、コミカルな短編の間にはさまれるイメージ・シーンが美しくて、一気にのめりこみました。多数の役者による日常の動きの連鎖から伝わってくるメッセージに、じわっと感動しました。
 現代の若者のあくまでも個人的な熱狂と、常に身体で感じている孤独が、背中合わせになりながら共存して、不器用に愛を求めます。
 否定して、削って、最後の最後まで自分を追い詰めて、無に到達するかというところまで行くのですが、か弱くなって消え去りそうになっていても自己は確かにそこ(舞台)に点るように存在します。そしてそれを見守る人(=愛)が在るんですね。

 ここからネタバレします。

 ポップな音楽とともにダンスで幕開けでした。クスっと笑っちゃうようなおどけた振付なのですが、雰囲気はクールでシックだったので少し違和感がありました。無表情のままで踊り続けていたのがヘンに感じたのかもしれません。顔の動きも加わっていたら良かったんじゃないかしら。

 バーズの公演は三鷹市芸術文化センター星のホールや青山円形劇場、シアターサンモールなど、大きめの空間が続いていたので、アゴラ劇場の小さな四角い空間では舞台と客席との距離がすごく近くて、目の前に役者がズラリと並んでいるのは迫力でした。
 舞台と客席が正面から向かい合うスタンダードなアゴラ劇場の使い方で、実はバーズ初のプロセニアム(額縁舞台)なんですね。

 客席側を除く三方を半透明な壁で囲まれた舞台は、きれいだけれど少し息苦しい箱の中のようです。青と白、透明を基調としたポップな衣裳をまとった男女が、狭い空間の、ある“制約”の中をところ狭しと動き回ります。

 「舞台上に3人いるのだけれど、1人だけは姿が見えない、もしくは存在しないことになっている」とか、「舞台上にいる1組の男女がいて、女は男の真似をし続ける」などの、現実世界にはありえない縛りが前提となって、その中で架空のカップルや親子が会話をします。

 シーンでの約束ごとをしっかりと観客に見せておいて、それを守ること、破ること等から笑いやおかしみが生まれます。普通の会話の中からではなく、あくまでも設定・制約に対して起こす行動や言動から感情が生み出されるので、ちょっと頭の体操をしている気分です。観客はずっと架空の、あきらかに嘘の世界のコミュニケーションを味わっていきます。これはバーズの個性だと思います。

 「コーヒー飲む?」「いや、飲まない」、「名前を忘れたの?」「いや、名前を忘れたわけではない」など、相手の言う言葉をことごとく否定していくという設定の短編は少し長かったかな。他にもくどいと感じたシーンはありましたが、最後にすべてが先に述べた意味(取り残される自己、かすかに愛を求める声、それに答える無言の抱擁)に集約されていくので、最後の最後には満足ができました。

 役者さんは皆さん達者ですが、特に美しかったのは大内真智さん。iMacから線がつながったヘッドフォンを耳に当てて、音楽にノリまくって踊る姿にみとれました。櫻井智也さん(MCR) と2人で立っているシーンは素晴らしかったですね。
 小手伸也さん(innerchild)の生々しい演技がコミカルなシーンにとてもフィットしていました。アドリブ(ですよね?)がすごく面白かったです。

 ※今回発行したメルマガに、バーズの過去の公演のレビューをまとめて掲載しています。

構成・演出:内藤達也
杉浦理史 小野ゆたか 大内真智 日栄洋祐 松下好 山中郁 近藤美月 後藤飛鳥 小手伸也(innerchild) 櫻井智也(MCR) 森下亮(クロムモリブデン)
[舞台美術] 秋山光洋 [音楽] 岡谷心平 [照明] 榊美香(l's) [音響] ヨシモトシンヤ SoundCube) 角張正雄(SoundCube) [振付] ピエール [舞台監督] 藤林美樹 [コスチューム] 伊藤摩美 [写真] 引地信彦 [宣伝美術] 石曽根有也 [演出助手] 明石修平 [プロデューサー] 赤沼かかみ [制作] 山崎華奈子 保田佳緒
前売 3,000円 当日 3,200円(全席自由席)
劇団:http://www.b-ev.net
劇場内:http://www.letre.co.jp/agora/line_up/2005_5/birds-eye_view.htm

Posted by shinobu at 2005年05月12日 13:21 | TrackBack (4)