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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年06月10日

二十一世紀舞踊『禁色』06/08-11世田谷パブリックシアター

 『禁色』は同性愛をテーマに書かれた三島由紀夫の小説です。それを題材に伊藤キムさんが白井剛さんとたった2人で踊ります。
 強烈でした。衝撃でした。カーテンコールは5回以上ありました。上演時間はそれを含めて1時間45分ぐらいありました。2人だけのダンスなのに!

 東京公演は明日の1ステージを残すのみ。6/11(土)15時開演です。当日券は14時から販売開始されますが、おそらく相当早く並ばないとイス席ゲットは難しいかもしれません。でも、1階最前列~3列ぐらいにベンチシートを含む約30席が追加席として作られたようにも見受けられます(未確認ですが)。明日お時間のある方は、ぜひぜひチャレンジしてみてください。その価値はあると思います。

 ≪ツアーあり!6/24-25@京都芸術劇場、7/3@北九州芸術劇場≫

 チケットを確保するのが遅れて私は残念ながら3階席からの観覧となりましたが、それでホッとしたような、がっかりしたような・・・あれを至近距離で観る度胸が私にあったかどうか・・・(苦笑)。終演後に1階席に行って舞台を眺めてみたんですが、あぁやっぱり前の方に座りたかった・・・と悔しく思ったり・・・。うん、やっぱり近い方がいい!・・・たぶん。

 前置きが長くなりました。それぐらいショッキングな作品でした。

 お恥ずかしながら私はダンス公演では途中で退屈して寝ちゃったりするタイプなんです。だけど今作では全然寝ませんでした。静かでゆっくりとしていて繰り返しの多い振付もいっぱいあったんですが、なぜか目が離せませんでした。
 したたかな自意識で身体をコントロールし、躍動も静止も、あくまでもストイックに存在する物体が2つ。“伊藤キム”と“白井剛”という、男がそこに居る。それだけで世田谷パブリックシアターが完全に支配されました。

 ここからネタバレします。

 舞台装置は非常にシンプルでスマートでした。床と上下(かみしも)の壁は真っ白。奥の壁は光沢のある黒で、客席やステージが少し映っています。上手の壁は中央で割れていてその隙間から光が差し込みます。下手の壁には上部に横一直線の穴が空いていてそこからも光が入ります。最初は上手の壁に下手の穴から差す照明による赤い横線が映っていて、白黒のモノトーンに赤いスパイスが入った、とてもスタイリッシュな空間でした。

 小さな音がかすかに鳴り続けて、開演の暗転まではとてもゆっくりと時間がとられていました。じわーっと照明が暗くなって完全暗転したかと思うと大音量の音楽とともにパッと舞台が明るくなって、出てきたのは全裸の男2人!!ぜんらです、ぜんら!!ほんっとの素っ裸なんですよコレが。たぶん陰毛も剃ってたんじゃぁ・・・・(3階席からはわからなかった、というか正視できなかったのかもしれません、私)。
 全裸でジャニーズのアイドルが踊るような振付でジャンプしたり側転したり!しまいにはお○んちんで遊ぶ(?)ような振付が山盛り!・・・あぁこれ以上具体的にはもう書けない!ヘンな言葉で検索にひっかかっちゃうよっ(笑)。

 ・・・で。ひとしきり大暴れしておそらく絶頂を迎えた後、ばたりと倒れた2人。と同時に革靴が2人分、天井からぼとりと落ちてきました。服は裸踊りの最中にすでに落ちてきており、2人はぐったりとしつつ、ゆっくりと服に着替えます。この着替えシーンがめちゃくちゃセクシー!しかもその服が超かっこいいスーツなんです。キムさんは黒の上下でジャケットの裏地がワインレッド。白井さんはズボンは黒でジャケットは茶色、そしてジャケットの裏地が・・・エメラルド・グリーン♪なんて、なんて素敵なんだっ!全裸の後だから成年男子の麗しさもひとしおでございます(笑)。

 その後は2人で同じ振付で踊るのですが、上側と下側に2人の踊るスペースが分けられており、体が触れ合ったりはしません。手を挙げたりくるりと回転したりする振付は同じなのですが、お互いのクセはそのまま生かしているので、一人一人が独立(孤立?)したままシンクロしているような状態です。これが全裸シーンとの対比になってすごくかっこ良かった。

 続いてキムさんのソロ、白井さんのソロ、またキムさんのソロ、そして2人一緒という流れでした。
 白井さんのソロはなんだか虫みたいだったなー・・・転がされたり、踏み付けにされたり、基本的に閉じ込められていて、押さえつけられて、這いつくばって逃げようとしてもまた潰される、というような・・・。そして、逃げたのかどうかはわからなかったけれど、細かい雪がさらさら、ぱらぱらと大量に降り注ぐ中、一人で空を見て立ち尽くすシーンが凄かった。ただ立っているだけでものすごい長時間でした。ずっと目に残っています。

 2人一緒に踊るといっても、2人はひっついたり一体化したりは決してしません。あくまでも独立して、ちょっかいを出したり甘えてみたりしても、やっぱり何かに押しつぶされて、それぞれが孤独なまま。
 私は「禁色」の原作を読んでいません。知っていたのは三島由紀夫作の同性愛のお話だってことだけです。だから果たしてストーリーを追っていたのか、どこがどう引用されていたのかはわからないのですが、多分キムさんが原作からインスパイアされたもの、イメージしたものをダンスにしたということじゃないかなと思います。

 キムさんのダンスは男らしく、まっすぐの線とか堅い岩とか、意図や意志を感じる力強い印象でしたが、白井さんはしなやかで、やわらかくて、いつも何かの影響を受けて、反応して、グネったり回ったり、自然の作用・反作用の法則が常に起こっているようなダンスでした。ぴったりのペアですね。
 私は去年のソロダンスでも魅了されましたが、今回も白井さんにゾッコンでした。大ブレイク、間違いないっ(もうブレイクしてる?)。

 舞台が白いので照明がものすごく鮮やかでした。真っ赤になったり真っ青になったり、ブロック分けになったり、明かりでダンサーを追いかけるような効果もあり、照明とダンスのコラボレーションのようにも見えました。それくらい照明が大活躍で、カッコ良かったです。

 ※昨日6/9(木)はポストパフォーマンストークがあったんです。私は当日券狙いで並んで30番目ぐらいだったのですが、立見席になってしまったので断念しました。私の後ろに50人以上いらしたと思うんです。2人だけのダンス公演なのに、ものすごい人気ですよね。たぶん初日の評判もあったのだと思いますが、あんなに人が並んでいる世田谷パブリックシアターの入り口ははじめて見ました。

出演=白井剛/伊藤キム
原作=三島由紀夫 構成・演出・振付=伊藤キム 照明デザイン=足立恒(インプレッション) 音響=藤居俊夫 美術=小島常雄(スポンジ) 衣裳=大野雅代 選曲=伊藤キム 作曲=井上雄二(dill) 舞台監督=黒澤一臣(オン・ステージ・コードー) 宣伝写真=野村佐紀子 宣伝美術=阿部聡 主催=(財)せたがや文化財団 企画制作=世田谷パブリックシアター 協賛=キリンビール株式会社
A席4,000円/B席(3階)3,500円 その他各種割引あり
劇場内:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/05-2-4-2.html

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Posted by shinobu at 2005年06月10日 22:37 | TrackBack (3)