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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年06月19日

Studio Life『メッシュ』06/15-07/04シアターサンモール

 『訪問者』『トーマの心臓』に続く、Studio Life(スタジオ・ライフ)による萩尾望都(はぎお・もと)の名作漫画の舞台化です。
 2時間45分(休憩15分を含む)はちょっと長い目ですが、ストーリーは文句なく面白いし、役者さん一人一人の魅力も堪能できました。

 主役のメッシュ(山本芳樹)が登場した時、まず「デカイ!」って思いました。アートスフィアや紀伊國屋ホール、紀伊國屋サザンシアターでも公演されていますので、シアターサンモールはかなり舞台が小さいんですね。Studio Lifeの描く美しくて繊細な世界は、これぐらいの小さな空間で味わいたいです。

 舞台はフランスのパリ。贋作を描くことで生計を立てている画家のミロン(曽世海児)はある日、右腕を折られて道端に倒れていた少年(山本芳樹)を助ける。美しい金髪の中に少し銀髪の入ったその少年は“メッシュ”と名乗り、ミロンのアパートに居ついてしまった。
 メッシュの悲しい生い立ちと、ミロンに出会うまでの波乱の人生と同時並行に、ボスのサムソン(河内喜一朗)に対してメッシュが持っている強い殺意の行方を描く。

 『メッシュ』の原作漫画は10年以上前に全巻読みましたが、髪にメッシュが入っている美少年が出てくること以外すっかり忘れていました(苦笑)。日本の少女漫画ならではのポエティックで乙女チックな魅力はもちろん、ギャング達のハードボイルドな世界や親と子のドラマも描かれ、「やっぱり萩尾望都って面白いよな~」と感動を新たにしました。
 今作品は原作の全てを盛り込んではいないそうです。チラシに“メッシュ rue Ⅰ(rueは英語でstreetの意)”とありますので、もしかすると続編が期待できるのかも?

 Studio Lifeというと男優集団。女性は脚本・演出の倉田淳さんのみです。『DRACULA』の初演から拝見している私は、劇団員の成長振りや誰がどんな役を演じるのかなどファンの視点で楽しむようになっています。だからものすごく演技がおぼつかない若手がいても「あらら、また次がんばってね」ぐらいに大目に見てしまいがち(笑)。だから気になる人は気になっちゃうと思います。ただ、メインの役柄を演じる役者さんは本当に演技がお上手で、見た目も美しく魅力的な方が多いです。

 タイトルロールのメッシュを演じられた山本芳樹さんはきゃしゃで美しいし、言葉もちゃんと伝えてくださいました。でも、全体を通してちょっとシリアスすぎた気がします。メッシュの面倒を見ていたギャングのドルーとのエピソードが始ってからは色気も感じられましたが、ミロンが家に置いてあげようと思うような可愛げや、自分を殴った相手にまた平気で会いに行くような、自由でひょうひょうとした様子ももっと出ていればと思いました。
 メッシュは両性具有の天使のイメージとも重なる、絶望の中に浮遊感ただよう得体の知れない存在であって欲しいなと思います。『風と樹の詩』(竹宮惠子の代表作)だったらジルベールとか(勝手な想像ですが)・・・難しい役ですよね。

 ここからネタバレします。

 今作ではフランス語の曲(シャンソンなど)が多数かかり、パリの軽快なムードが溢れていました。荘厳で深刻な雰囲気の音楽が多いStudio Lifeの作品の中で、珍しく音楽に聞き惚れ、楽しい気分での観劇となりました。
 舞台装置はいつもながらシンプルなのですが、パリの雑踏や絵描きのアトリエを無理なく想像させるパネルの色と柄が良かったです。こっそりとゴヤの絵(巨人が人間を食べる恐ろしい絵)が描かれていたのも凝っています。
 オープニングの演出が良かったですね。メッシュの詩のようなアナウンスが流れる中、無人の舞台にぽつんと置かれた木のベンチを、朝、昼、夕方の太陽を表す照明が照らしていきます。

 場面転換がとても多い作品でした。ストーリーは面白いし役者さんも魅力的だし、ファンなら長時間でも大丈夫ですが、そうでない方には少しつらかったんじゃないかな。
 例えば、出はけ口のルールをいつも律儀に守らなくてもと思いました。ミロンの部屋は上手奥の袖が玄関になっていましたが、ミロンが舞台上に居るまま、照明や音響の変化で転換しても良かったと思います。
 場面転換に小さな幕もよく使われていましたが、幕の昇降がスムーズではなく、いかにも手で紐を引いて作業しているのがわかってしまったのが残念。出来れば最初から最後まで同じスピードで降りてきて欲しかったです。

 役者さんについては、今回もっとも目を引いたのはドルー役の奥田努さん。サスに入って客席に向かってセリフを言うのが決まっていました。それがゆっくり暗転するまでの表情も良かった。今まで未チェックでしたがこれから注目したいと思います。

 曽世海児さん(ミロン役)が普通の男性を演じられていたのが新鮮でした。人間離れした役がお得意ですし、今まで演じた役柄的にゲイのイメージが強かったからか、絵の女性モデル(吉田隆太)とHしちゃうノーマルさがものすごくセクシーでした(笑)。

 医者のシラノ(山﨑康一:「康」は正しい表記では在りません)とその恋人エレーヌ(林勇輔)は、出て来ただけで客席から笑いが・・・すっかりお笑い担当として定着されているんですね(笑)。山崎さんも林さんもとても演技がお上手で、シリアスも笑いも確実に見せてくださいます。林さんはドルーの部下のチコ役も演じていらっしゃいましたが、エレーヌとは全くの別人。いつも驚きをくださいます。

 他にもポール役(メッシュに心を寄せるゲイ)の牧島進一さん、アレクス役(ポールのいとこ)の船戸慎士さん、エーメ役(サムソンの妻)の舟見和利さんが良かったです。そう、船見さんはすごくエレガントな佇まいで美しかった。

ダブルキャスト:Relier(ルリエ)とAllier(アリエ)※私が観たのはRelierです。
【Relier】メッシュ:山本芳樹/ミロン:曽世海児/ドルー:奥田努/ユフィル:寺岡哲/エーメ:舟見和利/アレクス:船戸慎士/ポール:牧島進一/早耳のラッタ:下井顕太郎/エレーヌ:林勇輔/シラノ: 山﨑康一/ボス・バン:藤原啓児/サムソン:河内喜一朗 ほか:大沼亮吉・宗村蔵人・荒木健太郎・関戸博一・松本慎也・三上俊・吉田隆太 ※メッシュ、サムソン以外の出演者は両チームに出演。

原作=萩尾望都 脚本・演出=倉田淳 美術=松野潤 照明=森田三郎 舞台監督=北条孝 土門眞哉 西村朗(ニケステージワークス) 音響=竹下亮(OFFICE my on) ヘアメイク=角田和子 衣裳=竹原典子 殺陣指導=渥美博 美術助手=渡辺景子 宣伝美術=河合恭誌 菅原可奈(VIA BO, RINK) 宣伝写真=峯村隆三 大道具製作=俳優座劇場 小道具=高津映画装飾 デスク=釣沢一衣 岡村和宏 揖斐圭子 制作=稲田佳雄 中川月人 赤城由美子 CUBE STAFF:プロデューサー=北牧裕幸・高橋典子 宣伝=米田律子 制作=北里美織子 制作協力=東容子 縄志津絵 宮澤有美 小泉裕子 八木美穂子 中原愛 大田香織 制作プロデュース=CUBE 企画・制作=Studio Life
前売 4,700円 当日 4,800円 ファンクラブ割引あり
劇団:http://www.studio-life.com/

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Posted by shinobu at 2005年06月19日 15:00 | TrackBack (1)