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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月08日

燐光群『上演されなかった『三人姉妹』』07/06-17紀伊國屋ホール

 燐光群の坂手洋二さんの新作です。紀伊國屋ホールの劇場内全部が舞台の、濃ゆ~い2時間10分でした。
 チェーホフの『三人姉妹』を知っていれば面白み倍増!ご存知ない方は戯曲を読んでから観に行かれると良いと思います(知らないと楽しめない可能性もあります)。

 最初からかなりブっ飛んだ(奇抜な)演出なので、正直なところとっつきにくかったです。でも、セリフのシャワーの中に身を投じ、集中して言葉を身体の中に入れるようにしたら、意外に早くその世界に入って行けました。
 強い主張を含んだ複雑な構造の脚本です。誰にでもお薦めできる手軽なエンタテインメントではありません。でも、やっぱり坂手さんの作品は見逃せないと思いました。

 客席のほぼ半分も舞台として使われており、通路も演技スペースになります。あぁ何から書いてもネタバレに・・・(冷汗)。でも読んでから観に行かれても、演劇ならではのディープな世界を味わえることには変わりありません。

 ≪あらすじ≫
 『上演されなかった『三人姉妹』』という戯曲を上演中の劇場が、テロリストに占拠された。彼等の要求は、彼等の母国からこの国の軍隊の撤退させること。それが受け入れられなければ、劇場の観客を全員射殺して自分達も自殺するという。
 それでも舞台に居た女優3人は演技を止めようとしない。劇場関係者やテロリスト、観客をも巻き込んで、『三人姉妹』と極限状態の劇場の現実が入り混じっていく。

 お芝居がはじまる前に、途中で非常ベルが鳴ることや武装組織に占拠されるエピソードがあることなど、この作品の構造と流れがきちんと説明されます。劇場の外の世界と、劇中(劇場内)の現実と、『上演されなかった『三人姉妹』』と、『三人姉妹』原作という多重構造を、頭をフル回転させながら楽しむ、大人向けの作品だと思います。

 ここからネタバレします。

 『三人姉妹』のストーリーを最初から最後まできちんと辿っていきますので、テロリストに拘束されている“現実”と『三人姉妹』の内容とが重ねられていく過程で、“現実”にどうしてもムリが出てきます。それを「上手いこと組み込んであるな~」とすんなり見届けられるかどうかは人それぞれだと思います。私は「そこまでしなくてもいいのになぁ」と思いました(例えば、イリーナを取り合う軍人2人の決闘など)。

 最後は、機動隊が劇場に突入してテロリストは全員射殺され、観客も100人以上が死ぬという結果になります。観客の死因のほとんどが毒ガスによるものだとも。ロシア学校人質事件(2004年9月)を思い出しました。イラク戦争を直接想起させる場面も多数。

 ≪言及ブログ≫
 デジログからあなろぐ

≪東京、神戸≫
出演=立石凉子/神野三鈴/中山マリ/川中健次郎/鴨川てんし/猪熊恒和/大西孝洋/下総源太朗/JOHN OGLEVEE/江口敦子/樋尾麻衣子/宇賀神範子/内海常葉/向井孝成/裴優宇/小金井篤/杉山英之/久保島隆/桐畑理佳/工藤清美/塚田菜津子
作・演出=坂手洋二 照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 舞台監督=森下紀彦 美術=じょん万次郎 衣裳=宮本宣子 演出助手=吉田智久・清水弥生 文芸助手=久保志乃ぶ・宮島千栄・圓岡めぐみ 写真=酒井文彦 宣伝意匠=高崎勝也 制作=古元道広・近藤順子
一般発売日 5/29(日) 前売券¥4,000 当日券¥4,300 ほか各種割引あり 休演日=7/12(火)計12ステージ 
劇団内:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/sanninshimai.html

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Posted by shinobu at 2005年07月08日 16:27 | TrackBack (2)