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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月10日

こまつ座『國語元年』06/03-12紀伊國屋ホール

 こまつ座はいつも前売り完売ですよね。私が劇場に着いた時には当日券も完売していました。『國語元年』は4演目ですが、私は初見です。

 時は明治7年。文部省官吏の南郷清之輔(佐藤B作)の家では妻や妻の父、女中らが皆それぞれのふるさとの言葉で話すものだから、家の中にはさまざまな方言(おくに言葉)がにぎやかに溢れかえっている。
 ある時、清之輔に「日本全国のはなし言葉を統一せよ」との命令が下り、清之輔は誰にでも理解でき、どこの土地の人間にも公平な「はなし言葉」を生み出そうとするが・・・。

 最初は誰の言葉も全く意味がわかりませんでした。方言である上にかなり早口ですし。いったいどうなることやらと少し心配になったんですが、舞台で起こることを静かに見ている内に、登場人物のバックグラウンドや性格がわかってきて、次第に言葉がわからなくてもストーリーがわかるようになりました。この感覚は面白かったです。人間のコミュニケーションは言葉や意味だけではないんですね。
 笑いがいっぱい起こっていましたが、ちょっとドタバタが過ぎたかな。作品としてはお年を召したお客様向けかも。

 ここからネタバレします。

 善意からはじまった言葉作りが、言葉というものの核心に近づくに連れて、いやおうなしに政治と関わって行ってしまうという展開に、なるほどと唸らせられました。清之輔が考案した「はなし言葉」は日の目を見ることなく、明治10年に西南戦争が勃発。清之輔は心を病んで南郷家は離散してしまうというエンディングには、どしりとした苦味があって良かったです。

 ベテラン俳優が作るどたばたコメディーには、いつも心の底から感心させられます。たかお鷹さん演じる居候の公家はどうしても憎めないキャラクターで、何かやるたびに大爆笑を巻き起こしていました。山本龍二さん演じる会津出身のどろぼうも、おまぬけさんなのに凄みが有り、キーマンらしい存在感でした。

作:井上ひさし 演出:栗山民也 
出演:佐藤B作 土居裕子 沖恂一郎 剣幸 山本龍二 たかお鷹 植本潤 角間進 後藤浩明 田根楽子 野々村のん 岡寛恵
音楽:宇野誠一郎 美術:石井強司 照明:服部基 音響:深川定次 衣裳:渡辺園子 振付:謝珠栄 歌唱指導:宮本貞子 宣伝美術:安野光雅 演出助手:大江祥彦 舞台監督:加藤高 制作:井上都 高林真一 谷口泰寛
当日・前売り:5250円 学生:3150円
≪市川、東京≫
こまつ座内:http://www.komatsuza.co.jp/kouen_kako/chirashi/kokugo.html

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Posted by shinobu at 2005年07月10日 11:54 | TrackBack (1)