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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月19日

シス・カンパニー『新編・吾輩は猫である』07/08-08/07シアタートラム

 宮本研('88没)が1982年に文学座に書き下ろし、初演された作品です。シス・カンパニーで作年2月に『美しきものの伝説』も上演されていますね。
 高橋克実さんが漱石役で小林聡美さんが漱石夫人役です。計7人の出演者はみな実力派ぞろい。

 予想していたよりも全体的に暗い作品でした。劇場の暗闇に点る夢の世界を描くという意図があったのかもしれませんが、「暗い」という印象ばかりが残ってしまいました。上手い役者さんばかりだと思って私が期待しすぎたせいでしょうが、役者さんはもっともっと上を目指せるんじゃないかと思いました。

 ここからネタバレします。

 劇場に入るなりちょっと驚きました。チラシの雰囲気から日本家屋らしき装置があるのかな~と予想していたのですが、目立った大道具は舞台を上下(かみしも)に横切るように置かれた、細長い台のみ。台は木製の縁側のようです。そして黒っぽい鉄パイプで組んだ足場が、その台をぐるりと囲むようにそびえており、高さは劇場の天井近くまであります。
 台はずっと同じ位置にあるわけではなく、いくつかのパーツに分かれていてシーンごとにこまめに移動します。組み立てられた小さな世界というイメージが浮かんで面白かったですが、台がスルリと簡単に動くので、役者さんがつまづいたり滑ったりするんじゃないかと少しハラハラしました(笑)。

 漱石夫婦の日常と小説の世界とが入り混じる戯曲なのですが、日常シーンは主に台が置かれた舞台面だけで進行し、小説シーンで劇場の広い空間を生かす演出が現れます。特に照明が効果的に使われていました。「夢十夜」の短編(金魚を買う女の話)シーンで舞台の床下から男女が登場する時の、スモークに映る黄色い明かりが幻想的で美しかったです。

 役者さんはそれぞれにキャラクターが立っていましたし、決して演技が下手というわけではないと思うのですが、漱石夫婦の対話にしても小説世界にしても、なんとなく空間がスカスカしているように感じました。笑いもけっこう起こっていたんですけど私はほとんど笑えなかったですねぇ。残念。

 漱石夫婦のやりとりは時に可笑しく時に深刻で、セリフ自体には味わいがありましたが、長年ともに生きた男女のようには見えづらかったです。なんだか2人とも独りで居るような・・・そういう夫婦だったのかしら(そういう演出意図なのかしら)。
 でも、最後の2人きりでの対話は集中して聞くことができました。劇中の漱石夫婦でもあり現代を生きる大人の男女でもある高橋さんと小林さんが、目の前で本気で言葉と心を交わしているように感じられました。

 小説シーンで出てくる小道具(金魚屋のたるやバーバーの赤・白・青のサインポール、豚など)は、平たい板に絵を描き、形に添ってまわりを切り取ったプラカードのようなものでした。幼稚園でよく上演されるペープサートを想像してください。童話やおとぎ話のような優しい空気が生まれていました。

出演=小林聡美/高橋克実/高橋一生/梅沢昌代/坂田聡/山崎一/綾田俊樹
作=宮本研 演出=井上尊晶 美術=加藤ちか 照明=小川幾雄 衣装=前田文子 音響=尾崎弘征 ヘアメイク=大和田一美 演出助手=長町たず子 舞台監督=榎太郎 プロデューサー=北村明子 企画・製作=シス・カンパニー 提携=世田谷パブリックシアター
チケット発売日:5月14日(土)6,500円(全席指定・税込)  休演日=7/11(月)、7/18(月) 7/25(月)、8/1(月)計36ステージ
シス・カンパニー:http://www.siscompany.com/03produce/10neco/index.htm
イープラス特集:http://mars.eplus.co.jp/ss/kougyou/syosai.asp?kc=012339&ks=02&os=078

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Posted by shinobu at 2005年07月19日 22:57 | TrackBack (0)