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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年08月05日

44Produce Unit『フツーの生活3』08/05-09紀伊國屋ホール

 44Produce Unit(よし・プロデュースユニット)は44北川(よし・きたがわ)さんが主宰する演劇ユニットです。とにかく驚異的な人だという噂だけを聞いており、やっと初見。
 44北川さんが劇団道学先生中島淳彦さん に脚本を依頼して実現した、戦中戦後三部作の第三弾、長崎編です。

 ≪あらすじ≫
 1945年8月1日。長崎のまちなかの病院。盲腸で入院している造船所の職員、爆撃を受けて右半身が不自由になっている若者、特攻隊を志願したが結核のために断念せざるを得なかった元兵士、完治しているが軍隊に戻りたくないので重病であると偽っている男、看病熱心な兄・姉、明るく優しい看護婦、肝っ玉のすわった医者。そこにはフツーの生活があった。
 ≪ここまで≫

 私も戦争を知らない世代ですし、私の親もそうです。私の祖父母は戦争について多くを語らない(語らなかった)人たちで、唯一語ってくれた祖母は数年前に他界しました。だから戦争を体験している身近な親類が今はいなくなってしまい、私はなるべく演劇からも知識を得ようとしています(本も新聞もテレビも映画もいろいろあるけど、私が演劇好きなので)。

 44北川さんがご自身のブログにも書かれています。※下記は公演企画より抜粋&引用。
「戦争によって受けた影響は計り知れないものがあったと思います。
 私たちがその全てを理解できるとは思いません。
 知ろうと思うこと自体、おこがましいことなのかもしれません。
 でも、戦争を知らない世代の私たちが少なくとも勉強して、想像して、自分たちの国で起こった事実を、歴史を、次世代にどんな形ででも伝えていく。
 そんな義務があるような気がして仕方がないのです。」

 その心が伝わってくるお芝居でした。若い俳優が60年前の長崎の人を演じていましたが、私は全く無理を感じませんでした。もちろん私自身が60年前の長崎を知りませんので、本当のところどうなのかはわかりません。でも舞台上の俳優さんは、長崎という美しい町で暮している人々に見えました。紀伊國屋ホール常連のベテラン劇団の作品に見劣りしなかったです。
 お稽古の一環で出演者全員で長崎合宿に行かれたそうで、その成果が出ているのかもしれませんね。

44's Happy Life(プロデューサー・出演者の44北川さんのブログ)
 キャスト全員での長崎旅行のことも書かれています。ぜひ。

 ここからネタバレします。

 そして8月9日がやってきます。原子爆弾の投下により、病院にいた人は皆、一瞬で、亡くなりました。病院から逃げ出した結核患者の若者だけが生き残り、彼が観客に向かって語りかけます。
 「一瞬にして大勢の方々が亡くなりました。その時、どういう気持ちだったのでしょうか。」「(亡くなった方々に語りかかけるように)今の世界はどうでしょう。私達を見てくださってますか?」(言葉は全然正確じゃないです。ごめんなさい。)
 、私はこのセリフを聞いた時、原爆で亡くなった長崎の方々のことを心に思い浮かべました。そして、このセリフと一緒に話しかけました。
 この芝居を企画して披露してくださった、このカンパニーの方々に感謝します。

 さて、ここからはお芝居の細かい部分について感じたことを書きたいと思います。
 1945年の8月に入って敗戦の色が濃くなってきていることを、フツーの人たちが直に感じており、日常的に戦争に対しての不満や疑問、憤りなどを口にするようになっているのには、少し疑問を感じました。病院の中とはいえ、果たしてそんなに簡単に話せたのでしょうか。しかも結核患者以外の全員が戦争反対の気持ちを持った人々だったというのは、人数的にも多すぎるのではないかと思います。

 あと、同じセリフ(やりとり)の繰り返しが多くて、くどいと感じることが少しありました。「こんなに青い空を見ていると、戦争だってことを忘れます(大意)」というセリフも何度も出てきてちょっと気になりました。「俺は運がいいんだ」も多かったですね。うーん言い方の問題なのかしら。
 色んな人が何度も「いい天気ですねー」と空を見上げて言うのですが、8月の長崎って「いい天気」というよりは「暑い」んじゃないのかな。細かいんですが、何度も出てくるとどうしても、ね。

中島淳彦・戦中戦後三部作・第三弾 長崎編
出演=44北川/かなやす慶行/大場達也/賀屋直子/竹村絵美/富岡奈央子/南口奈々絵(劇団ショーマ)/塚原大助(劇団初舞台)/佐藤正和(ブラボーカンパニー)/小山剛志/福島まり子/仲野元子/山野海(ふくふくや)/原金太郎/保村大和
作=中島淳彦 演出=さわまさし 舞台監督=高橋大輔+至福団 現場監督=谷澤拓巳 音響=田上篤志(atSound) 照明=柿嵜清和 照明オペ=高円敦美 舞台美術= 田中敏恵 大道具制作=(有)イトウ舞台工房  小道具=高津映画装飾 ヘアメイク=坂口乃絵/大野雅士 衣装=石川俊一  方言指導=中村良平 演出助手=村山たか緒 宣伝美術=サワダミユキ 印刷=(株)TRENO 制作=一瀬江身 製作=44 Creative Company
[全席指定] 前売4,000円 当日4,400円
44Produce:http://www.44good.com/

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Posted by shinobu at 2005年08月05日 23:11 | TrackBack (0)