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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2005年09月22日

(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場『ニセS高原から【三条会組】』08/28-09/27こまばアゴラ劇場

 『S高原から』連続上演企画の3本目。蜻蛉玉バージョン五反田団バージョンに続いて三条会組を拝見して参りました。
 面白かった~っ!笑ったし、怖かったし、考えたし。何にもわからなくても楽しかった!残すは9/24(土)夜、9/26(月)夜の2ステージ。超おすすめです!★9/26(月)夜はポストパフォーマンストークあり。

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 ≪あらすじ~公式サイトよりそのまま引用≫
 近未来、夏。高原のサナトリウムの面会室が舞台。
 このサナトリウムには、不治の病におかされた患者たちが多く入院しています。下界から隔離されたサナトリウムでゆっくりと流れていく時間。死を待つということの意味が、その時間の中で淡々と語られていきます。
 患者たちと、そこを訪れる面会の人々や医師たちとの死や時間に対する観念の差異を微妙に描きながら、軽妙な会話を交えて、サナトリウムでの何も起こらない静かな午後が描かれていきます。
 ≪ここまで≫

 うーん・・・あらすじを改めて読んでみましたが、この三条会バージョンでは「ゆっくりと流れていく時間」は具体的には無かったし、「静かな午後」などはありませんでした。まず全然静かじゃない(笑)。そして時刻などという縛りはありませんでした。「死や時間に対する観念の差異を微妙に描きながら、軽妙な会話を交えて」いるようにも見えませんでした。なのでこのあらすじは意味を成さないですね(笑)。とりあえず参考程度です。

 三条会組の特徴は、原作を全く変更せずに演出していること。そして16人の登場人物を12人の役者さんが演じています。一人三役の方もいらっしゃるし、一人一役の方もいらっしゃいました。

 三条会らしい、全身に力を入れてドスのきいた発声で語るセリフまわしが健在。静かで自然な会話劇や、違う内容の会話が同時になされる青年団らしい演出とも混ざっていて、次々と予想不可能な出来事(演出)が起こります。

 超有名な明るい音楽が流れるし、原作そのままのセリフなのにその言葉で歌うし、踊るし。『S高原から』だと思って観る必要ナシです。私はすでに2作品観てあらすじも全てわかっていましたが、それでも何も考えないで(予想しないで)、初めて観るような新しい気持ちで最後まで観ることができました。

 サナトリウムに、これから死ぬ人と、生きる人がいる。ストーリーについてはそれだけわかればいいんだと思います。人間ってそれだけですよね、生きるか死ぬか。死期が近づいている人と、まだまだ生きる(と思っている)人が同じ場所(=サナトリウム)に居るから、生死について考える機会が生まれるのです。さらに「果たして今、私は生きているのか?死んでいるのか?」と、自分自身が曖昧になる瞬間が生まれます。その時、舞台にはこの世ではない世界の空気が漂いました。地獄のような天国のような、また、それらでもないような。

 ここからネタバレします。

 俳優は必ず下手から登場し、上手へと去ります。場所にあきらかに矛盾が出てきますが(電話をかけに上手に去るのに下手から戻ってくる等)、全くお構いなし。人間が生まれて死ぬのを直線で表しているように思いました。人が立ち止まったり座ったりするロビー(=舞台中央)は、自分が生きているのか、死んでいるのかをハタと立ち止まって考える場所だったのではないかと思います。

 画家の患者・西岡(榊原毅)と面会人の上野(大川潤子)が2人きりでしゃべるシーンが恐ろしかったです。そこに誰かが訪れても、訪れた人も2人で演じます。4人の会話を役者2人だけで演じ分けてしゃべるのって、かなり滑稽なはずなのですが、それが怖かった。「私って一体誰?」っていう世界だったんです。「誰でもいい」「どうでもいい」「もしかすると死んでるのかも?」っていうところまでイっちゃってました。演技に何の迷いも無いので、というか、迷うことなど出来ないぐらい身体も言葉も全力投球だったので、その前向きなパワーがさらに恐ろしさを増しました。私にとっては岡本太郎のイメージ。

 彼氏をお見舞いに来る彼女が、包丁を持っているのが象徴的です。大島(立崎真紀子)はまさに村西(中村岳人)を殺しに来たも同然ですから(振るためにやってきたので)。

 ポストパフォーマンストークで関さんがおっしゃって、やっとわかったのですが、福島(橋口久男)が開演前から舞台の上手奥でかくれんぼするようにずっと立っていたのは、この作品全体が福島が見ている夢だった(かもしれない)という演出だったんですね。


 ≪ポストパフォーマンストーク≫ 
 出演=関美能留(三条会)、大川潤子(三条会)、榊原毅(三条会)、久保田芳之(reset-N)、寺内亜矢子(ク・ナウカ)

 演出の関さんがほとんどお一人でしゃべっていらっしゃいました。おぼつかない司会っぷりが五反田団の前田さんと比較されて面白かったです。関さんは、このポストパフォーマンストークの時間も観客を楽しませたいと思ってらっしゃるようで、「真面目に答えても面白くない」と思ったら、ふざけて答えたりされていました。破天荒な人だなぁと思いました(笑)。
 ※下記、印象に残ったことを書きます。私が理解したままですので細かい違いなどはご容赦ください。

 関:2004年6月に前田くんに誘われて、1月にオーディションをして、7月1日に配役をわりふって、7月終わりから稽古開始。登場人物は16人なんですが、12人でやりました。三条会の役者が6人なので外部の人は同じ数にしようと思ったから。
 「これはどうかな?」「だめだな」、「これはどう?」「だめだな」という試行錯誤を繰り返し、作品を創る(決める)のは本番1週間前とか3日前とか。「それで間に合うんですか?」と三条会以外の人は不安になりそうですが、いつもそうなので。(作品作りは)俳優との共同作業だと思っている。
 様式的なものも好きだけれど、それを否定したいという気持ちもある。

 質問:大声で笑う演技が多かったが、その演出意図は?
 関:ストーリーの流れの上での笑いではない。人は死ぬ。皆死ぬということを知っている。そして生きてる上でいっぱい痛みがある。その痛みや死に対して、全てを笑ってしまいたいという気持ちが僕にはある。歌いながら、踊りながら、笑いながら。死に向かうと悲劇的になるものだが、悲劇的に作っていると、死と関係なく流れてしまうことがあったので、(笑いで)ブツブツと切りたかった。

 質問:マクドナルドのポテトが出てきたのは何か意味があるのですか?
 関:僕は(空気が・芝居が)普通に流れるのが嫌い。なにか可笑しいものを入れたくなる。「可笑しいね、いや、可笑しくないかな?」というのもあり。でも別にポテト止めてもいいんですよっ(会場で笑いが起きる)。何かしら邪魔が入るものが欲しかっただけだから。
 俳優が舞台上でものを食べるって、「人間」って感じがありますよね。また、病院なのにマック、っていうのも何かヘンな感じがしますよね。アメリカには病院にもマックがあるらしいんですが(笑)。「あった方が面白いかな~」と思ったから入れただけです。理屈もあるんですが、それは後からつけるものですし、今話しても面白くないのでやめます(笑)。理屈づけは後からですから。

 質問:舞台はサナトリウムだが、何の病気のためのサナトリウムだと思って演出したのですか?
 関:○○という病気です、と言うと説明的ですよね。平田オリザがサナトリウムを舞台にした芝居を書いた・・・ということについて、頭の中はこんな感じかな?と考えながら(作りました)。もしかすると福島が死ぬ前に見た夢かもしれないし。非現実から「リアルって何だろう」と探していきたくて(こうなりました)。

 質問:音楽について。「サウンド・オブ・ミュージック」を使われた意味は?
 関:「高原」だからですっっ!!!すみません!それだけです!!(会場で笑いが起きる)。平田さんは音楽は使わないのだけれど、僕はひねくれているので使いたかった。今年は『若草物語』で歌って、『メデイア』で踊ったので、『S高原から』では笑おうかな、と。

 質問:イスの下にもぐった人は死んでいるんですか?
 関:えええっと、あれは・・・死んでいる・・・のかなあぁ??生死について僕は(よく)考えます。「あれ、もしかして自分は死んでるかも?」とか。例えば自動ドアが開かなかった時とか(会場で笑いが起きる)。妄想が生まれた時、どちらが現実なのかわからなくなったら、妄想なのか現実なのかの結論付けをしないで、落ち着けるのは無しにして、いい感じに、想像力を膨らませていただければいいな~と思います。

 質問:音楽のフレーズや盛り上がり、曲の終わり等が、だいたい演技と合っていた気がするのですが、あれは演出として指示を出しているのですか?
 関:指示は出していません。なんだかね、合うんですよね~。曲に乗って感情的になるのにはダメを出しています。役者に「ここで音楽と一緒にセリフを終えてね」と言うと、役者はその一つの仕事しかしなくなる。曲あわせ以外の仕事もやってもらいたいので、合わせなくても合ってるような稽古をしています。

 質問:関さんがダメ出しをされている所が全く想像できないのですが、どのようにされているのですか?
 関:ダメ出しをしなければならない時(要望を伝えたい時)は、その言葉を言うタイミングを考えて演出をしています。このダメ出しを伝えるなら、(稽古時間にではなく)通りすがる時がいいとか、メールで書く方がいいとか。稽古が終わってすぐにダメ出しをすると、共同作業でなくなる気がするから。ダメだなぁと思ったら2、3日置いてみて、それでもダメだったら電話で「あのシーンなんとかして~」って言うとか。集団として作っていきたいと思っています。

~「S高原から」連続上演~
【三条会組】出演=大川潤子(三条会)/岡野暢/鬼頭愛(百景社)/久保田芳之(reset-N)/榊原毅(三条会)/瀧澤崇/立崎真紀子(三条会)/寺内亜矢子(ク・ナウカ)/中村岳人(三条会)/橋口久男(三条会)/舟川晶子(三条会)/山本晃子(百景社)  ※キャストは50音順
原作=平田オリザ 演出=関美能留(三条会) 舞台美術=杉山至×突貫屋 照明=《五反田団・蜻蛉玉・ポツドール》岩城保《三条会》佐野一敏(三条会) 音響=薮公美子 宣伝美術=藤原未央子 制作=榎戸源胤(五反田団) 尾形典子(青年団) 木下京子(ポツドール) 斉藤由夏(青年団) 田中沙織(蜻蛉玉) 演出助手=《ポツドール》福本朝子 プロデューサー=前田司郎 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 企画制作=五反田団・三条会・蜻蛉玉・ポツドール/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
前売・予約・当日共=2,000円 セット券=6,000円※予約のみ・枚数限定 こまばアゴラ劇場電話予約のみ取り扱い 03-3467-2743
公式=http://nise-s-kogen.com/

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Posted by shinobu at 2005年09月22日 00:15 | TrackBack (0)