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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年11月03日

ク・ナウカ『ク・ナウカで夢幻能な「オセロー」』11/01-13東京国立博物館 日本庭園 特設能舞台

 東京国立博物館でのク・ナウカ公演はお馴染みになってきましたが、今回はとうとう野外!日本庭園に能舞台を作っちゃうんだからスゴイ!
 公式ブログで「寒いから防寒を!」と声高に教えてくださっているので、しっかりとセーター、マフラーなど持参して行きましたら、会場では携帯用カイロひとつと、ひざ掛け用毛布(3人で1枚)が用意されていました。なんて親切なのでしょう。客席にはちゃんとバルーン製(?)かまぼこ型の屋根があって雨にも安心ですし、野外といってもそれほどつらいわけではありませんでした。
 上演時間は会場への誘導も合わせると1時間45分ぐらいかしら。ずっと座っているのでやっぱり寒いのは寒かったです。これから行かれる方はどうぞ防寒をしっかりしてくださいね。

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 整理番号順・自由席なので、会場時間になるとエリアA(前売り5,300円)のチケットを持った人から順番に会場へと誘導されます。私はエリアB(前売り4,300円)で後ろから2列目の席に座りましたが、中央だったので全く問題なし。

 客入れに時間がかかっていたらしく、突然開幕しました。目の前には壁のない能舞台が静かに佇んでいます。照明が当てられて初めて目に入ったのですが、舞台の後ろには日本庭園、しかも池があるんですね。車が走る音などの騒音が響く中、白木の能舞台の上をそろりそろりと歩いて登場する、ビニール製の衣裳を着た役者たち。なんて刺激的なミクスチャー!
 舞台下手の橋掛かり(能舞台の下手後方から斜め後ろに向かって掛かっている橋)の向こう側に字幕が映るボードがあって、セリフが表示されます。これは大変ありがたかったです。

 パンフレットには能に関する用語説明や解説などが盛りだくさんです。それほど今作は能の様式がかなり取り入れられています。まず複式夢幻能(世阿弥が完成させた能の形式)の様式どおりの構成でした。

 ここからネタバレします。読んでから観に行かれても、それほど問題はないかと思います。

 「複式夢幻能」とは?
 世阿弥が完成させた能の形式。前半と後半に分かれている。前半を前場、後半と後場という。前場のシテを前シテ、後場のシテを後(のち)シテという。前シテと後シテは同一人物の亡霊であるが、前場では土地の人間に憑依して現れ、後場では生きていた頃の姿で、ワキの夢の中に現れる。※シテ=主人口。面(おもて)をかける。ワキ=脇役のこと。旅の僧であることが多い。シテから物語や舞を引き出す役割を持っていて、シテの話しを聞き、シテの舞を観る。(パンフレットより引用)

 ヴェネチアからサイプラス島を訪れた僧がワキです。今はギリシア人とトルコ人が住むサイプラス島ですが、昔はヴェネチア領でした。僧はヴェネチア軍に置き去りにされた不幸な女たちと出会います。その内の一人にデズデモーナが憑依しており、自分が成仏できない理由、つまり不貞の濡れ衣を着せられて夫オセローに殺されたことを話します。前場はここまで。「オセロー」の原作そのままではなく、かなり創作されていて面白いです。
 ※脚本を書かれた平川祐弘さんによる詳しい解説がこちらにあります。
 
 公式サイトにあるとおり、今作の戯曲は「オセローに殺された妻デズデモーナの霊が思い出を生き続けているという設定」で書かれています。前半は野外の能舞台でク・ナウカ、というのが新鮮でもあったので集中できましたが、徐々にそのミスマッチさの魅力があまり感じられなくなってきて、ヘンだなぁ、とか、あまりかっこ良くないなぁと思い始めました。たとえば「オセロー」の間狂言の時に役者さんが被っていた面は、合ってないにも程が有るというか(笑)。きっと何らかの意図があるのだと思いますが、私にはわかりませんでした。

 また、能は今までに何度か拝見しているのですが(“能っぽいもの”も含む)、私は必ず眠ってしまうのです・・・どんなにがんばってもね、気づいたら寝てるの。意味わかんないのが常。こないだのク・ナウカの『王女メデイア』も洩れずに寝てたし・・・そして今回もやはり、でした。いつになったらちゃんと観られるようになるのか・・・ごめんなさい。

 美加里さん演じるデズデモーナは美しいのですが、幽霊だからなのか、心があまり伝わってきませんでした。特にクライマックスはデズデモーナの独壇場なので、あそこで眠くなったのは残念でしたね。自分の首を絞めたオセローを自らが演じて、その手から彼の純愛を感じ取って、成仏したのかなぁ、と。簡単ですがそのように受け取りました。
 役者さんで一番私の心にズシンと来たのは、オセロー役の阿部一徳さん。小田島雄志訳の「オセロー」のセリフを滑らかに、自在に語りつくし、デズデモーナに対する“可愛さ余って憎さ百倍”の激烈な怒りがひしひしと伝わってきました。

 パーカッションの演奏はいつもどおりかっこいいのですが、ドンドコドコドコ・・・と早く打つリズムが頻繁すぎた気がします。演奏している時間や回数も多く感じましたので、バリエーションの変化がもっと欲しかったですね。「あ、またこのリズムかぁ」と何度かがっかりしました。多くを求めすぎなのかもしれませんが。

 女優さんはいつもながらの美人ぞろい。舞台上手で囃子方(はやしかた)としてspeakerをされているのにも目を奪われました。ただ、字幕が下手にあるのでどこを観るべきか迷いましたけど(笑)。

 ※能に関する用語説明はパンフレットから引用しました。
 ※「観劇された方は、遠慮なく観劇ノートにコメントを残していってください。」とのこと。ぜひコメントを!私はトラックバックさせていただきました。
 ※演出助手による稽古場日記(Ashleycat's Eternal Second banana.)→舞台づくりの詳しいレポートです。

“OTHELLO”愛を知らぬまま、愛しすぎた男~幸せすぎる時が、怖い時。
※野外公演(客席は屋根付)
出演=美加理/阿部一徳/吉植荘一郎/中野真希/大高浩一/寺内亜矢子/本多麻紀/片岡佐知子/鈴木陽代/加藤幸夫/たきいみき/大道無門優也/布施安寿香/池田真紀子/杉山夏美/高澤理恵
原作=シェイクスピア 謡曲台本=平川祐弘 演出=宮城聰 間狂言=小田島雄志訳ニヨル 照明=沢田祐二 空間設計=田中友章 衣裳=高橋佳代 演奏構成=棚川寛子 音響=AZTEC ヘアメイク=梶田京子 舞台監督=小谷武 宣伝美術=青木祐輔 WEBデザイン=井上竜介 制作=大石多佳子
エリアA=前売:5,300円 当日:5,500円/エリアB=エリアAの1000円引き ユースチケット(25歳以下)=2,500円 ※整理番号付自由席 東京国立博物館平常展入場券付き
公式=http://www.kunauka.or.jp/

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Posted by shinobu at 2005年11月03日 00:28 | TrackBack (1)