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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年11月24日

燐光群『パーマネント・ウェイ』11/20-12/04シアタートラム

 燐光群のデイヴィッド・ヘアー新作連続上演の第一弾です。このチラシ、大好きです。でも内容とはかけ離れています。
 最初の5分で胸が苦しくなり、1時間半経った時に限界だと思いました。なのでその後の40分はほぼ拷問・・・最前列で照明も当たるし、帰るに帰れなかったんです。開演前にわざわざ劇場の人が「開演するとお席を立てませんので、お手洗いはお早めにお済ませください。上演時間は2時間10分を予定しています」と言いに来られましたしね。
 ★BACK STAGEに充実のインタビューあり(2005/11/25追記)

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 劇作家のデイヴィッド・ヘアーさんがイギリスの鉄道および連続して起こった鉄道事故に関わる人たちにインタビューをして、それを構成した戯曲でした。誰かがデイヴィッド・ヘアーさんと向かい合って話した、生の言葉たちがそのまま脚本になっているようです。
 舞台はリアルな敷石と線路。線路の両側を客席が挟む形の舞台です。シアタートラムって自由自在ですね。

 今作と同じく実際に起こった事故(飛行機)を扱った『CVR』と明らかに違うのは、役者さんが観客に向かって、主張や感情を強く訴えかけようとしていたことです。私はすごく不快でした。
 亡くなった方や被害者、遺族の方々のありのままの気持ち・考えを、他人である役者がそのままに感じ取って代弁することは、「他人である」という理由で物理的に不可能です。どうやったって気持ちは自分の中から生み出すしかありません。「被害者そのものに成りきるのは不可能だ」という動かしようのない事実を踏まえた上で、それを伝えよう努力する姿勢は正しいし、尊いことだと思います。でも今作品ではその謙虚さが感じられませんでした。

 異常に早口で、大声で怒鳴って、セリフは耳に入れる気持ちになれない不快な音になっていました。役者さんは体と心に全然フィットしていない激しい動きをがむしゃらに連発して、顔も体も過剰演技で見ていられませんでした。私は舞台を観ないようにして、そっと耳だけを開放して、否応なしにぶつけてられてくる言葉たちの、意味だけを受け取ろうと努力しました。
 開演からしばらくして、何人かの役者さん(渡辺美佐子さん、大西孝洋さん、猪熊恒和さん)のやわらかい声に助けられました。「ヒステリックな友情」というセリフがありましたが、役者さんがヒステリーになる必要はないと思います。

 音楽がひどかったです。テレビの2時間ドラマみたいなサスペンス調にしていましたが、せめてNHKスペシャルぐらいに押さえてくれればマシだったかも。わざとらしいドラマも、無理やり作るストーリー的盛り上がりも、不要だったと思います。無駄な飾りつけなどしなくても、観客の胸にずっしりと届く戯曲でしたから。

 戯曲は心底すばらしいと思いました。人間の生の声をそのままに届けようとなさっています。2002年の事故で「起訴なし」だったのには衝撃。
 「あのシステムの問題は、誰もが責任転嫁できて、誰も何の責任も感じないっていうことです。」このセリフにすべてが詰まっていますよね。日本でも今年、尼崎・列車脱線事故がありました。あの事故も遅れることが許されなかったから、スピードを速めていたんですよね。

 一緒に観ていた友達が「遺族がかざしていた被害者の顔写真が、外人の顔だったのが気になった」と言っていました。そういえば私もちょっといやな気持ちがしていたんです。だってセリフを言っている役者さんは日本人ですから、写真が外人(イギリス人)なのは明らかにヘンですよね。写真は入れずに額だけにしても良いのではないかと思いました。

 率直に書き連ねましたが、次回の『スタッフ・ハプンズ』も観に行きます。どんなにつらくても燐光群の作品は観に行くって決めていますから。今作は私には耐え難いものでしたが、知り得なかった真実を教えていただけたことに感謝しています。

≪東京≫
デイヴィッド・ヘアー新作連続上演vol.1
出演=渡辺美佐子/中山マリ/川中健次郎/猪熊恒和/大西孝洋/鴨川てんし/江口敦子/樋尾麻衣子/内海常葉/向井孝成/裴優宇/久保島隆/杉山英之/小金井篤/工藤清美/桐畑理佳/阿諏訪麻子/安仁屋美峰/市川実令/尾形聡子/坂田恵/椙本貴子/塚田弥与以/中川稔朗/樋口史/樋口美恵/松山美雪/亀田ヨウコ
作=デイヴィッド・ヘアー 訳=常田景子 演出=坂手洋二 美術=加藤ちか 照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 衣裳=前田文子 舞台監督=森下紀彦 演出助手=吉田智久 演出部員=清水弥生・福田望 文芸助手=久保志乃ぶ・圓岡めぐみ 宣伝意匠=高崎勝也 制作=古元道広・近藤順子 制作助手=藤木亜耶・小池陽子・宮島千栄 コーディネート=マーティン・ネイラー イラスト=石坂啓 提携=世田谷パブリックシアター
全席指定(当日座席指定引換)一般3,500円/当日3,800円 大学・専門学校生3,000円/高校生以下2,000円 その他各種割引あり
公式=http://www.alles.or.jp/~rinkogun/permanentway.html

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Posted by shinobu at 2005年11月24日 16:35 | TrackBack (0)