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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年04月24日

新国立劇場演劇『コミュニケーションズ─現代劇作家たちによるコント集─ 』04/08-24新国立劇場 小劇場

 新国立劇場で渡辺えり子さんが演出するコント集。有名な劇作家の名前がつらねられています。が、客層とフィットしていなかったのが明らか。みょうちきりんな空間でした(笑)。

 何があろうと役者っていうのは舞台で輝いて欲しいのですが、自信なさそうにしている人が多く、ちょっと寂しくなりました。舞台写真はこちら

 とりあえず「コント集」なのにスカッと笑えません。今作品の演出をされた渡辺えり子さんは自称アングラ系のようで(新国立のThe Atreに書いてありました)、「単に面白おかしいものにするつもりはない」とおっしゃっていました。そういえば渡辺さんが書かれた作品はあきらかにアメリカを批判するブラックな短編でしたしね。でも着ぐるみだけで笑わそうとしているシーンもあり・・・。未就学児童じゃないんですから、着ぐるみでは笑えないですよ。つまり、わざと笑えなくしている以上に、笑えなかったのです。

 山崎清介さんのことがお気に入りなのか、山崎さんばかりが主役を張っていました。でもね、山崎さんは一人だけ白塗りで赤い頬紅をしてらっしゃったんです。それって道化っていうことですよね。わざとらしい気がしてしらけちゃいました。

 竹内佑さんの作品が2つ以上あった気がします。でも一番面白くなかったんですよね。たぶん竹内さんの脚本の意図が渡辺さんにはわからないんじゃないんでしょうか。竹内さんというと大阪のデス電所という劇団の主宰で、すごく若い方です。なぜ彼の作品が多く採用されていたのかも疑問でした(ポスター・チラシに名前が掲載されていたのに上演されなかった劇作家もいたので)。

 最もひどかったのは出演者による楽器の生演奏です。アコーディオンとかギターとかならまだしも、なぜ俳優にトランペットとか、難しい楽器を演奏させるのでしょう。腹筋善之介さんはちゃんと吹けなくって(実際、音もひどかった)、あからさまに困った表情をしていました。照れくさそうに頭を掻いたりも。困るのは役者さんだけじゃないんですよね。観客もどうしたらいいのか困り果てます。どういう演出意図かはわかりませんが、とにかく役者さんはがんばってもらいたかったです。どんなシーンでも輝いて欲しい。

 『コミュニケーションズ』という作品を上演している劇団を描くスタンスで、劇中劇のように演出していましたが、うまく機能していませんでした。もったいないなぁと思いましたが、劇中劇自体が面白くないからどうしようもないです。

 不条理コントとして深い味わいもあり、笑えたのは別役実さんの作品でした。電信柱で自殺しようとしている夫と、夫を殺して保険金をもらおうとしている妻の話で、その夫は電信柱を持っていろんなエピソードに登場します。あと土田英生さんのも笑えましたね。じらしてじらして、しどろもどろして、最後にドカン、です。意地悪でよかった。ケラさんのはいつものケラさんの作品で、「これだったらナイロン100℃で見るほうが面白いよね」って思いました。でも笑えました。

構成・演出 : 渡辺えり子 作 : いとうせいこう ケラリーノ・サンドロヴィッチ 杉浦久幸 鈴江俊郎 高橋徹郎 竹内佑 鄭義信 土田英生 別役実 日本劇作家協会戯曲セミナー第1~4期生 筒井康隆(原作使用)
出演:綾田俊樹 石井里弥 円城寺あや 片岡弘貴 金内喜久夫 神保共子 腹筋善之介 矢崎広 山崎清介
A席=6,300円 B席=3,150円 Z席=1,500円 当日学生券=50%割引
新国立劇場内:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s260/s260.html
みどころを大解剖! イープラス:http://eee.eplus.co.jp/spu/communications/index.html

Posted by shinobu at 00:57 | TrackBack