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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2006年03月03日

シベリア少女鉄道『ここでキスして。』03/01-05紀伊國屋サザンシアター

 土屋亮一さんが作・演出されるシベリア少女鉄道(略してシベ小)。毎回おもしろアイデアで笑わせていただいて、目がひん剥くほど驚かせていただいて、絶対見逃せない!と思っている劇団です。※シベ少作品の過去のレビューはこちらからご覧ください。

 今回は・・・本編(というのかな)で細かい演技のこだわりに笑わせていただき、全体を観終わった時には煙に巻かれた心地でした。が、たまたま一緒に観劇していた方に意外な解釈を教えていただき、「なな、なんと!それは面白い!!」と気づいて、そして帰り道でいろいろ考えさせられました。土屋さん、すごいなー。

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 レビューを最後までアップしました(2006/03/19)。

 制作タカダの芝居制作日記(2006/2/24)によると↓(引用します)
 『シベリア少女鉄道をご覧いただいたことがない方がほとんどだと思われますので
 めちゃくちゃ今さらですが、自己紹介させてください。
 ざっくり例えて言いますと、
 「月9のドラマをボーっと見てて、恋人たちの別れとかのクライマックスシーンで、いきなり七人の悪魔超人が空から降り立ってきたら、そりゃおもしろかろうよ」
 というようなことを毎回手を変え品を変えやっているところです。』
 これは明快!その通りですよね!
 制作さんがはっきりこうおっしゃっているんですから、こんな感じのことを期待して、ぜひ観に行ってみてください。

 さて、恒例です。何を書いてもネタバレですので、これからご覧になる方はどうぞお読みにならないでくださいね。

 ≪あらすじ≫
 田舎の旅館。今日は地元から出た代議士先生(前畑陽平)が宿泊中。旅館の旦那(藤原幹雄)は先生の接待につきっきりでピリピリしている。代議士先生の息子(吉田友則)が遅れて到着した。旅館協会の娘との結婚(結納?)を明日に控えているのだ。実はその息子、本当は父親に無理じいされた政略結婚をしたくないと思っている。昔の恋人のことが忘れられないからだ。板前(横溝茂雄)は息子に「今度もし出会うことがあったら、その娘を連れて逃げちゃえよ!」と励ます。
 若女将(内田慈)は不機嫌な旦那にこき使われながらも、ほがらかに宿泊客をもてなし、新米の仲居(篠塚茜)の教育にも熱心だ。ちょっとヌケているが素直でマジメな仲居に、板前はほんのり恋心を抱いている。でも仲居には、今は会えなくなってしまったが、心に決めた恋人がいるのだ。気のいい板前は、彼女にも「今度もし出会うことがあったら、そいつと逃げるんだぞ!」と励ます・・・・あれ? これって・・・・何か、起こるんじゃない・・・?
 そうだ!実は代議士先生の息子と仲居こそが、その恋人同士だったんだ!!
 再会してしまった息子と仲居は、励まされたとおりに二人で逃げることを決意。親切な若女将と板前は、代議士先生と旦那の目を盗んで、どうにか二人の愛の逃避行を成功させようする。しかし次から次に想定外のトラブルが発生して、嘘に嘘を上塗りしていくはめになり、事態は無関係の宿泊客(出来恵美)をも巻き込んで混乱を極めていく。果たして息子と仲居は無事に旅館を脱出できるのか?
 ≪ここまで≫

 舞台は2階まできっちり立て込まれたリアルな旅館でした。下手にはエレベーターもあります。このあらすじだけでもよく出来た(仕組まれた)シチュエーション・コメディなんですよね。例えば三谷幸喜作品とかレイ・クルーニー作品に似ていると思います。うまく行くはずだったことが、次から次へと予想外の方向に進展(暗転)して泥沼にはまっていき、登場人物の慌てふためく様子がめちゃくちゃ滑稽で笑えるようなタイプです。旅館を舞台にした家族向けのテレビドラマのようにも見えます。こういう、誰もが思いっきり笑えるような無難な(←いい意味で)コメディって大切ですよね。

 よくあるタイプのキャラクターを大げさにデフォルメした演技でつくりこみ、いわゆる上質なコメディの世界を、シュールに笑い飛ばしながら進みます。そしてシベ少の真骨頂である仕掛けがはじまって、クライマックス。
 ※仕掛けについては小劇場系に詳しいです。
 ※作・演出さん日誌によると「元ネタはない」とのこと。う~ん、これを知ってたら戸惑わなかっただろうな~。

 仕掛けが始まる前まではシチュエーション・コメディーのパロディとして見せていたと思います。それはそれでとっても可笑しいです。仕掛けが始まってからは、そのコメディもパロディも両方が、ゲームの中で人形が演じていた嘘だったということになります。
 若女将が「真心をもっておもてなしをする」ことを中居に教育したり、無関係だと思われていた宿泊客の女が実は代議士先生の実の娘で、親切な板前が彼女の自殺を思いとどまらせたり、いわゆる「良い話」をしっかり描きながら、それを「嘘だ」と言い切ってバーチャルなゲーム(遊び)にしてしまうのです。
 私達はいわゆる「良い話」をすっかり鵜呑みにして、さらにそれを常識だと思い込んだりするという、甘い罠に陥りがちです。今作は軽妙に「そんなの嘘だよ」と教えてくれて、さらにその嘘を土台にしてドタバタのお笑い(お約束のコメディ)にまで昇華させていました。

出演=前畑陽平/藤原幹雄/横溝茂雄/吉田友則/篠塚茜/出来恵美/内田慈
作・演出=土屋亮一 舞台監督=谷澤拓巳+至福団  音響=中村嘉宏(atSound)  照明=伊藤孝(ART CORE design) 映像=冨田中理(Selfimage Produkts)  小道具=畠山直子  宣伝美術=土屋亮一 thanks Norimichi Tomita 制作助手=安元千恵  制作=保坂綾子  製作=高田雅士  企画製作=シベリア少女鉄道  主催=ニッポン放送
前売3,200円 当日3,500円(全席指定)★若者割引(25歳以下限定):2,500円 5ステージ
公式=http://www.siberia.jp/

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Posted by shinobu at 2006年03月03日 00:52 | TrackBack (0)