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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年03月26日

スロウライダー『トカゲを釣る』03/24-04/02こまばアゴラ劇場

 山中隆次郎さんが作・演出・出演されるスロウライダーを拝見するのは、『むこう岸はエーテルの国』(←WOWOWブロードバンドで全編配信中)に続いて2度目です。今回の方がずっとずっと面白かったです。やっぱり小さな空間がいいですね。
 “スロウライダーっぽさ”というのがしっかりと確立されつつある劇団なんですね。好みははっきりと分かれると思いますが、私にはその独特の、冷静でおどろおどろしい世界観がクセになりそうな気配(笑)。上演時間は1時間30分というアナウンスでしたが、最後の30分の静かな盛り上がりが凄かったです。
 ロングラン公演が開幕したばかりで席に余裕がありましたが、全席自由でイス席ではなく座布団席ですので、早めにご覧になった方がゆったりと楽しめるのではないでしょうか。

 BACK STAGEに充実のインタビューと稽古レポートあり!
 ※レビューを最後までアップしました(2006/03/27)。

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 幕開けから大胆に意表をつかれ、1時間ぐらい経過するまで手探り状態でした。「いったいココはどこ?」「彼らはなぜココに居るの?」「カギュウ?トカゲ?何なんだソレ?」という疑問だらけの状態のまま放っておかれます。やがて会話の中からポロリとこぼれる言葉によって、少~しずつ背景が見えてくるのですが、それがすごく不親切(笑)!例えば大事なキーワードを一度しか言わないので、気づかなければそのまま終演してしまいます。でも・・・・ちょっと快感でもあるんですよね(笑)。描かれる世界の謎やお芝居の構造を、観客が自力で解き明かしていく楽しみがあるのです。

 推理するのがお好きな方は、ぜひ知識ゼロで飛び込んでください。あらすじ↓から既にネタバレすることになります。

 ≪あらすじ≫
 木造の古い建物。何かの施設らしい。そこで自給自足して暮らす男たちは、蝸牛(かぎゅう)という動物を1人につき1匹ずつ与えられる。蝸牛の面倒は1階の飼育小屋で飼育係(佐藤真義)が見ている。また、男たちは各自の部屋の中でトカゲを飼っており、日々感じたことをトカゲに告解することが義務付けられている。
 ある日、赤名(日下部そう)の部屋に昔の友人の川端(青木宏幸)が訪ねてきた。
 ≪ここまで≫

 舞台は木造のアパートのような建物で、2階部分(作品中では3階か4階?)までしっかり作られています。赤名の部屋がステージ前面に大きく開かれていて、その奥に渡り廊下のような空間があります。どう説明していいのやら・・・ものすごくヘンなつくりです。
 部外者の川端が赤名の部屋に泊まるので、彼の視点から施設内の様子が徐々に明らかになっていきます。

 住人が飼っている蝸牛とは、カタツムリのことです。想像してみて下さい、すごく大きなカタツムリを。体表は粘膜なので、ネバネバのスライムのような緑色の体液が常に分泌されており、体中にべっとりへばりついています。「ずぬを゛おおおおお~」みたいな不気味な声で鳴き、動く度にズルズル、ズルズルと床を擦る音がします。他にもゾっとするような特徴があります。共食いします。手足を食べられちゃっても生き続けるし、トカゲみたいに尻尾を切って逃げることができます。仲間の身体に卵を産み付けます。産み付けられた方は、身体が乾いて卵みたいになって、新しい命はその身体を食べ、最終的には食い破って生まれてきます。で、体液は引火するから危ないんですって。・・・もー気持ちも気分も、悪いことこの上ない動物ですよね(苦笑)。いくら架空でもそこまでマイナス面をあげつらわなくても・・・と思いつつ、ここまで酷いと笑えました(笑)。蝸牛もトカゲも登場しませんが、ものすごい存在感です。

 その蝸牛とトカゲとが深層心理で(?)つながっていて、トカゲの状態が蝸牛の行動に表れます。トカゲには住人たちが各々告解をしていますので、蝸牛の行動はつまり飼い主の欲望の表れであるということになります。奇想天外な設定ですよね。「いったい何のためにこういう設定なんだろう?」と1時間ぐらい悩みっぱなしでした。でも、住人達がなぜその施設にいて、そこから出ようとしないのかが徐々にわかっていくにつれて、私はありえない状況の中に自分からどっぷりはまり込んでいきました。

 住人は交通事故を起こして被害者を事故死させていたり(中尾)、殺人を犯していたり(川端&赤名)、社会で生きていくことができない(と思っている)人たちでした。姿を見せない“マザー”と呼ばれる経営者(?)に支配され、まずいご飯を食べながら、農作業をしてストイックに暮らしています。そして不満や悪口をトカゲにむかって思う存分吐き出すことで、精神のバランスを保っているのです。どうやらトカゲは人間の露骨なマイナス感情を食べて生きているらしく(?)、住人に「もっと告解しろ!」と催促もします。そして人間⇒トカゲ⇒蝸牛という順にその感情が伝わっていき、人間の悪意が伝わった蝸牛同士がぶつかり合います。そしてある蝸牛が死んだら、その飼い主の住人が飛び降り自殺をする・・・。こうやってぐるりと悪意がめぐってつながっているんですね。そして人間がトカゲを飼っているのではなく、トカゲに人間が飼われている構図が見えてきます。

 で、結局最後は赤名が自分の蝸牛を焼き殺して施設から脱出するわけですが、意味とかは全然わかりませんでした。でもなぜか、不可解なまま、不愉快なまま、私は興奮しましたね。

 オープニングは凄かったな~。完全にしてやられた気分。あれは時間の違うシーンを何個も持ってきて、続けて上演しているんですよね。映画みたいだなって思いました。わかったのは終演後でしたけど。
 一番好きだったセリフは、ラスト近くで施設から出て行こうとする川端に向かって、飼育係がわざわざ一度戻ってきて言う、「あんた、俺がネバネバだから特別差別してる?」でした。人間の心理を描くことに強烈なこだわりを感じたんですよね。

 役者さんでは作・演出の山中隆次郎さんが演じた車イスの男が良かったです。チェルフィッチュっぽいなと思うこともありましたが、あの、ものすごくスムーズな悪意の垂れ流し方は独特だと思います。可愛らしいお顔をされてるのに・・・怖いですねぇ(笑)。
 交通事故を起こしてしまった中尾役を演じられた、チャリT企画の楢原拓さんには、いつもと違う一面を見せていただけました。役者さんは幅広く活動して、色んな演出を受けるべきだなと改めて思いました。

出演=芦原健介/山中隆次郎/青木宏幸/數間優一/日下部そう(ポかリン記憶舎)/佐藤真義(タテヨコ企画)/夏目慎也(東京デスロック)/楢原拓(チャリT企画)
作・演出=山中隆次郎 舞台美術=福田暢秀(F.A.T STUDIO) 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響=中村嘉宏(At Sound) 音響操作=井川佳代 衣装=伊藤梨絵 舞台監督=西廣奏 演出部=やまのいゆずる(OOPARTS RECORDS) イラスト=モランボン 宣伝美術=仲麻香 web運営=栗栖義臣 制作助手=坂本明 制作=三好佐智子 企画制作=有限会社quinada (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
1月18日発売開始 13ステージ 全席整理番号付自由席 前売2,500円 当日3,000円
劇団=http://www.slowrider.net/
劇場=http://www.komaba-agora.com/line_up/2006_3/slowrider.html

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Posted by shinobu at 2006年03月26日 11:23 | TrackBack (0)