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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年07月27日

こどもの城/ネルケプランニング・プロデュース『南国プールの熱い砂』07/26-08/06青山円形劇場

 去年の初演でメルマガ号外を発行したKAKUTAの作品が、早くもプロデュース公演として再演されました。2003年から始まったAoyama First Act(fringe TOPIC 2003/6/11)のひとつの成果ですよね。観た限りでは、脚本も演出も少し変更が加えられたようです。
 親子でもお友達とでも恋人とでも、一緒に観に行って楽しめる夏のお話です(小学生にはお薦めできないけど)。上演時間は2時間強。開場時間から役者さんが舞台にいて、軽~く始まっています。どうぞお早めに劇場へ!

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 小学校時代の恩師を偲び、当時臨海学校で訪れたリゾートホテルへ同窓会旅行に出かけたかつてのクラスメイトたち。久しぶりの再会。それぞれの過去への思惑は交錯し、やがて記憶の底に眠っていた秘密の出来事が浮かび上がる…。
 ≪ここまで≫

 初演のKAKUTAならではの世界とまではなっていませんでしたが、優しく心に沁み込んできて、胸の奥の小さな傷にそっと触れてくる、桑原裕子さん独特の作風は健在でした。
 小学校の思い出とか同窓会とかって、一歩間違えばNHKの中学生日記のようになる(ダサくなる、クサくなる)危険性があります(私が中学生日記を見たのは10年以上前ですが)。でもこの作品は、大人が生きる現実世界ときちんとつながった人物が登場し、彼らの思い出やバカンスがどんなに美化されても その裏側にある厳しい日常がときどきチラリと顔を出すように作られています。だから大人も素直に受け入れて、入り込めるんだと思います。

 ここからネタバレします。

 私は大切なお友達と一緒に観劇して、終演後に二人でゆっくり話をしました。「優しい作品だったよね~」と。そして「優しさって何なんだろうね」と。想像力なんじゃないかな、と私は思いました。

 例えば妊娠したツユ(渋谷琴乃)の体を心配する金森(笹峯あい)の優しさ、子供は堕ろしたと告げたツユにずけずけと質問したりしない護(伊達暁)の優しさなどは、相手の気持ちや生活・人生を想像するから発揮できることですよね。
 臨海学校で鏑木(小手伸也)におねしょをさせたのは自分だったと、御松(成清正紀)が鏑木本人に笑いながら告白すると、鏑木は激怒して御松に殴りかかりました。鏑木にとってあの時のおねしょがどれほどのトラウマになったかなんて、御松は全く想像しなかったんですね。御松は今も鏑木にパシリのように扱われており、それを根に持っているのもあるのですが。

 15年前にそのホテルで心中未遂をしたのは、なんと亡くなった先生と衣雲(小橋めぐみ)でした。38歳の時に12歳の衣雲を本気で愛してしまって、心中を図った気持ち・・・。先生は衣雲が生徒で自分が教師だということも、衣雲は大人っぽくてもやっぱり子供だということも、彼女なりに本気でもいつかは忘れてしまうだろうことも、全部わかっていて衣雲を愛していたんだろうな~・・・などと、53歳で病死してしまった一人の男性のことを、舞台には登場しなかった重要人物のことを、ゆっくりと想像しました。その時、私、自分が優しくなっていたと思うんです。心を開いてリラックスして、その人になったつもりで気持ちを重ねれば、人間はおのずと優しさを発揮するのではないでしょうか。

 舞台中央で鏑木と御松がケンカをするのと、2階のバルコニーで衣雲が委員長(宮下今日子)に告白するのとが同時進行するシーンは、観ていてはらはらしつつも白熱しました。ただ、上と下で順序良くセリフをしゃべっているように感じてしまったのは残念。ステージを重ねるごとに良くなればいいなと思います。

 KAKUTAの桑原裕子さんの作・演出だからかもしれませんが、やっぱりKAKUTAの役者さん(原扶貴子、成清正紀、横山真二、桑原裕子)がすごく良いんですよね。中でも“うなださん(だっけ?)”を演じられた原扶貴子さんが素晴らしかった!とぼけた道化役を、決して下品にならずに自然に決めてくださいました。原さんが出て来る度に暖かい気持ちになれました。

 伊達暁さん。間もなくパパになる高倉護役。一見クールな“能面”キャラですが、実は表情や動きをさりげなく変化させて、心の揺れを的確に表現されていました。光ってます。ただ、「こういう人、いるよね~」と思えなかったのは残念。かっこ良すぎたのかも(笑)。
 小手伸也さん。おねしょがトラウマになったいじめっ子・鏑木役。本気で怒る演技が特に素晴らしかったです。笑いのための色んな工夫も嬉しかった。
 宮下今日子さん。宮下さんが真面目な委員長・森野仁美役だとは予想外(笑)。ガオっ!と叫ぶような声がめちゃ魅力的。

出演=渋谷琴乃/小橋めぐみ/伊達暁(阿佐ヶ谷スパイダース)/笹峯あい/小手伸也(innerchild)/宮下今日子(サードステージ)/平沼紀久(劇団方南ぐみ)/原扶貴子(KAKUTA)/成清正紀(KAKUTA)/川久保拓司/横山真二(KAKUTA)/吉田晋一(カムカムミニキーナ)/桑原裕子(KAKUTA)
作・演出=桑原裕子 照明=西本彩(青年団) 音響=島貫聡 美術=横田修(突貫屋)/鈴木健介(青年団) 衣裳=渡辺まり 舞台監督=野口毅/松嵜耕治(至福団) 演出助手=田村友佳(KAKUTA) 宣伝美術=森阪ゆう子 宣伝写真=井野敦晴 宣伝ヘアメイク=佐々木ミホ/加藤恵 プロデューサー=志茂聰明/松田誠 制作=ネルケプランニング 主催=こどもの城/ネルケプランニング
前売開始=2006年6月18日(日)10:00~ 前売・当日共4,500円(全席指定/税込)
青山劇場内=http://www.aoyama.org/japanese/schedule/s2006/enkei/7-8neruke/neruke.html
ネルケプランニング内=http://www.nelke.co.jp/stage/pool.html

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Posted by shinobu at 2006年07月27日 12:58 | TrackBack (0)