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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年09月16日

庭劇団ペニノ『アンダーグラウンドUNDER GROUND』09/15-20ザ・スズナリ

 タニノクロウさんが作・演出される庭劇団ペニノの新作です(過去レビュー⇒)。
 外科手術とジャズセッションが豊かにコラボする緊張と恍惚の1時間30分。笑っていいのかしら・・・とおどおどしたのですが、どうやら笑っていいらしい(笑)。普通の演劇ではありませんので好みは分かれるでしょう。私は超楽しかった!

 充実の稽古場レポート⇒BACK STAGE
 「昼ギャザ」についての制作さんのインタビュー⇒cinra(シンラ)

 ※昼ギャザ(底値2000円)⇒9/19(火)14:00(追加公演)&9/20(水)13:00

 初日の特典ということで、『UNDER GROUND』オリジナルサウンドトラック(ジャズバンドのサイン入りCD)が観客全員にプレゼントされました!今聴いてるんですが、すごく良いです。⇒ピアノの佐山こうたさんのサイト

 レビューをアップしました(2006/09/18)。

 舞台は古びた手術室。床は白いタイルで中央部分には水がうっすらと溜まっています。本棚や薬戸棚にしても、とても清潔そうには見えません。手術室の上手手前には顕微鏡が置いてある小さなデスクがあり、ここは“指揮者”という役名の小人(マメ山田)の居場所のよう。上手の上段はピアノ、ベース、ドラムのジャズ・トリオのスペースで、ジャズメンがクールな演奏を披露します。

 この舞台って「外科手術とジャズって、実は似てるよね?」という発想から生まれたのかしら(笑)。手術用の器具(メス、ペンチなど)がカチャカチャと鳴るのは音楽だとも受け取れました。また、執刀や麻酔などのそれぞれの役割を持った人たちが、ずっと無言でありながら密度の高いコミュニケーションを取っていることも、ジャズの演奏者たちと似ている気がします。

 徐々に、舞台だけでなく客席もすごい緊張感に包まることになります。リアルな外科手術の現場を覗き見ることはもちろん、なんと、客席の音も舞台に関わってくるからです。マイクで音を拾う仕組みになっているようで、舞台上の手術の音だけではなく、観客の咳払いや笑い声も、大きな音になって劇場に反響しちゃうんです!これは・・・びっくりしましたね、最初は。なるべく音を立てないように気をつけました(恥ずかしいし)。
 でも、かっちょいいジャズの音楽に自然と体が揺れ始め、手術の音もまた息の合った音楽に聴こえてきたあたりから、楽しくって仕方がなくなりました。ジャズと手術という、全くもって接点もなさそうな、遠くかけ離れた世界同士が、音楽を介してひとつのグルーブへと登っていくなんて!

 プロデューサーのブログ(2006/09/16)より↓

 マチネとソワレの間のプリセットに1時間半を要するこの舞台。面白くない訳がない。
 舞台もそうだが、ジャズバンドの演奏する姿も是非観て貰いたい

 なるほど、確かに上演前の準備はかなり大変だと想像します。だって・・・(笑)。そんな舞台を一目見て感じるだけでもザ・スズナリに行く価値はあるでしょう。

 ここからネタバレします。

 白衣(じゃなくて手術着?)を着た女たちが集結してきて、彼女達がじゃんじゃか外科手術(開腹手術)をします。パンフレットの役名は看護士となっているので、医師じゃないんですね(苦笑)。手術されるのはかなり頑丈そうな、体の大きな若い男性(飯田一期)。お髭も立派(笑)。

 手術前の準備の様子から可笑しなことが起こっていました。「今日の手術はこういうのよ」と、執刀する看護士(安藤玉恵)が助手らしき看護士(保坂エマ)に説明をしているのですが、なんと黒板にチョークで絵を描いてるんです。しかもあれって肺の絵じゃないかな~、手術するのは腹部なのに(笑)。そんな具合でリアルな手術も進行しますが、気をつけて細かく観察していくと、異常で不謹慎とも言えることだらけ!見つける度に可笑しかったです。お腹の中から出てくるべきではないものが取り出されたり、取っちゃダメなものも引き出したり(笑)。見学していた看護士の一人がいきなりナッツを食べはじめ、そのガリッ、ガリッという音が響き渡るのも異様でした。

 指揮者(マメ山田)が海水パンツ一丁に着替えて、ジャズ・スペースへの梯子を登って上の床に腰掛けた時、手術室がプールに見えました。深い水底で手術着姿のマーメイドたちが男をメッタ切りしてる・・・と想像し、心の中で爆笑しました(笑)。
 水着の指揮者が氷(実際は氷ではなくガラスのフラスコ類でした)の入った大鍋に脚を入れて冷やします。彼の周りだけ南国リゾートの優雅な空気が流れますが、氷のせいで足の指を怪我した模様。そのへんに落ちていた一枚の枯葉を指に巻きつけて治療・・・たぬきじゃないんだから!葉っぱでは治らないよ!と突っ込みを入れたくなった瞬間、ジャズバンドが『枯葉(Autumn Leaves)』を演奏し始め、可笑しさが最高潮に(笑)。

 患者が首を左右に振りだし、どうやら脈が弱まってきた!死に掛けてる!!とヤバイ状態になった時、手術もジャズも一斉に盛り上がります。カチャカチャ、どたばたする手術と、ガンガンに乗りまくるジャズとが同調して、えもいわれぬグルーブ感が味わえました。

 看護士のがんばりのおかげで患者は息を吹き返し(ありえないよね!?)、最後は縫合へ。でも看護士たちは中途半端なままで放置して撤退。すると患者の開いたままの腹部から水着姿の指揮者が出てきちゃいました・・・エイリアンかよっ!そして枯葉を丁寧にお腹の周りに置いていく指揮者・・・だから、枯葉では治らないってば!しかも小腸とか肝臓とか、出しっぱなしでしょ!?って思ってたら、再びいい感じに『枯葉』の演奏が始まって・・・。もータマリマヘン(笑)。

 ここまでどっぷりとこの作品の世界に浸ることができたのは、空間の完成度が高いからだと思います。セットにしても出演者の演技にしても、そしてジャズ音楽にしても、とにかく質が高いです。まったく・・・・よくこんなことをやらかすよな・・・って、心から感心します(笑)。

出演=佐山こうた(p)/中林薫平(b)/長谷川学(d)/安藤玉恵/佐山和泉/島田桃依/瀬口タエコ/保坂エマ/吉原朱美/横畠愛希子/飯田一期/マメ山田
作・演出:タニノクロウ 舞台監督:矢島健 舞台美術:田中敏恵 演出助手:川島はづき 照明:今西理恵 宣伝美術:野崎浩司 /DMイラスト:坂口時継 構成助手・撮影:玉置潤一郎 構成補佐:海老原聡 写真:田中亜紀 メイク:井上悠 WEB:佐田丘仁子 PA:阿部将之 制作:樺澤良・河口麻衣・小野塚央 プロデューサー:野平久志 企画製作:PUZZ WORKS/劇団制作社 助成:東京都歴史文化財団
前売り開始は8/17(木)前売り自由席2800円 前売り指定席3000円 当日自由席3000円 当日指定席3200円 ※9/20 13:00 の回、昼ギャザ実施。20人ごとに100円キャッシュバック。底値2000円
公式=http://www.niwagekidan.org/

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Posted by shinobu at 2006年09月16日 12:06 | TrackBack (0)