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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年12月07日

青年団『ソウル市民三部作連続公演「ソウル市民」』12/06-17吉祥寺シアター

 青年団ソウル市民三部作連続公演が開幕しました。「ソウル市民」は1989年初演、平田オリザさんが26歳の時の作品です。これまでの上演歴はこちら。私は初見です。

 「ソウル市民」は今年7月に、フランスのアヴィニヨン演劇祭の正式招待を受けてフレデリック・フィスバック演出版が上演され、フランスの新聞Le Mondeの第一面に写真入りの記事が掲載されました(⇒フランスでの評価)。同じく10月にはシャイヨー国立劇場のシーズン・オープニング演目のひとつに選ばれ、フランス語版がアルノー・ムニエ演出により上演されました(パンフレットより)。

 「チケットは完売の回もありますが全ステージではありませんので、ぜひ観に来てください」と初日終演後のトークで平田さんがおっしゃっていました。青年団の代表作のひとつ、しかも三部作連続上演です。お薦めです。上演時間は約1時間30分強。

 ※席に一束ずつ配布されていた分厚い折込チラシは、紙質、デザイン、そして作品のラインナップの意味も含めて、私の今までの観劇生活で最も豪華なチラシ束だったかもしれません。青年団が今の日本の演劇界で最も注目すべき劇団であることの表れだと思います。

 同時開催中の「京ちらしアートワーク展『100:』」は、吉祥寺シアターのロビー1階から2階へと登る階段のおどり場で見られます。展示方法はなんとモビール!

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 ポスト・パフォーマンス・トークの覚書を追加(2006/12/08)。レビュー完成(2006/12/12)。

 ≪あらすじ≫ 無料配布パンフレットより。(役者名)を追加。
 1909年、夏。日本による朝鮮半島の植民地化、いわゆる「韓国併合」を翌年に控えたソウル(当時の現地名は漢城)で文房具店を経営す篠崎家の一日が淡々と描かれる。
 日本から後妻に入り、いつまでも挑戦の生活になじめない母(山村崇子)。
 自分が何をやりたいのか分からない長男(松井周)。
 文学に青春の情熱を燃やす長女(辻美奈子)。
 日がな一日、何をやっているのか分からない書生(古屋隆太)。
 とりとめのない話を延々と続ける女中たち(兵藤公美・石橋亜希子・角舘玲奈・村井まどか)。
 そんな篠崎家に様々な客人たちが現れる。
 ≪ここまで≫

 ある家の居間での、人生の暇つぶしのようなおしゃべりの数時間。軽やかに流れる現代日本語の会話に、無意識の、もしくは善意による差別がなみなみと溢れています。無思慮が過ぎる発言に吹き出したりもしましたが、2006年を生きる私だって、きっと同じことをしでかしています。

 平田さんのお芝居は数回拝見していますが、今までで最も新鮮で充実した観劇体験になりました。青年団という劇団の創造的なマンパワーを劇場ごと実感できました。

 役者さんがバラバラであることが、すごく楽しかったです。デコボコとした個性をそのまま生かし、独立させているのに、舞台を包む空気はなめらかに調和しています。まるで球技(サッカーとかホッケーとか)のチームワークのような・・・バネのあるしなやかさを感じました。平田さんの(作・演出および演出)作品を観て初めて感じたことかもしれません。 

 客席側にずいと張り出したのであろう舞台はとても見えやすく、高さのある吉祥寺シアターを広いと思わせない凝縮した空間になっていました。

 下記、印象に残ったシーンの覚書です。

 圧倒的な強さをもつ大旦那(篠塚祥司)の尊大さ。それに対して従順な女たち。主人と使用人とのはっきりした上下関係。
 「あの音(朝鮮人の言葉の音)は文学には向いていないのよね」など、長女の一連の差別発言に苦笑。だまって聞いている朝鮮人女中(角舘玲奈)の後姿の雄弁さ。
 ふらっと出て行って戻ってくる長男の家出が、回を重ねるごとに少しずつエスカレートしていること、そしてそもそも家出をやめないことについて、誰もがちゃかして面白がって無関心。

 誰も舞台にいない時間(3回?)の豊かなこと!静かで分厚い空間に身を浸しました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 ゲストのイ・ヨンスクさん(社会言語学者。一橋大学教授。韓国全羅南道出身)が、お父様の急病が原因で出演できなくなったため、平田オリザさんがお一人で舞台に上がられました。

 昔から青年団を知る(のであろう)方や、在日韓国人の方などから率直な質問が多数飛び出し、平田さんが素早く明快に応えられ、私は脳をフル回転させながら必死で聞いていました。とても充実したトークでした。下記、記憶に残ったことの覚書です。

 観客「明治時代の話なのに現代語だったのが気になった。」
 平田「そもそも演劇はフィクションです。(この作品も)時代考証にのっとったドラマではありません。言葉のズレは意図的にしました。植民地の問題を今の問題としてとらえてもらいたい。今の私たちも容易に支配されたり、支配する側にもなる。皆さん、おわかりだと思いますが、テレビの時代劇で使われる言葉もフィクションですから。あれが江戸時代の言葉だと思うのは飼いならされているだけです。」
 平田「ボキャブラリーはあの時代にあったものを使っています。ただひとつだけ、『目立とう光線バシバシ』の“光線”はなかったでしょう(笑)。」

 平田「1909年のもっともリベラルな日本人の家庭を描きました。善良な知識人が最も良いサンプルになる。ある種、理想の家庭を作りました。モデルはありません。」
 平田「差別といっても、今の日本ではあからさまなものは少なくなってきたと思います。でも無意識の部分は、良かれと思っていることさえも差別になる。」

 平田「(観客から質問のあった)その本には“メッセージは後退する”と書きました。自分の主張に納得してもらいたいのではない。違うと思ってもらってもいい。作品を通じて、植民地というのはこういうものだということを伝えたい。」

 平田「フランスの新聞ル・モンドの第一面に写真入りで公演のことが掲載されて、言ってしまえばこれ以上の成功はないと言えるぐらいの成功だったのに、日本のマスコミは誰もフランスに来なかったし、報道もしなかった。悔しいですね(笑)。たとえば日本から記者を送れなくても、フランス支社の人間を現地に行かせればいいだけなのに。怠慢です。」
 平田「これがロンドンだったら話題になるんです。日本のマスコミは英語中心主義になっている。20年前はこうではなかった。」
 平田「世界の水準をわかっていない。今ここにも新聞社の方は多数いらしてるんですが、敢えて言います(笑)、新聞社の知的水準の低さが表れています。日本の知識状況がものすごく薄っぺらい。」

「ソウル市民」「ソウル市民1919」「ソウル市民 昭和望郷編(新作)」の三作連続公演
出演=篠塚祥司(客演)/山村崇子/山内健司/松井周/辻美奈子/小林亮子/古屋隆太/兵藤公美/石橋亜希子/角舘玲奈/村井まどか/大塚洋/松田弘子/足立誠/立蔵葉子/熊谷祐子/安倍健太郎/川隅奈保子
作・演出=平田オリザ 演出助手=井上こころ/深田晃司 舞台美術=杉山至+鴉屋 照明=岩城保 音響=藪公美子 衣装=有賀千鶴 衣装製作=菅かな女/すぎうらますみ/藤木智美 宣伝美術=工藤規雄+村上和子/京/太田裕子 宣伝写真=佐藤孝仁 宣伝美術スタイリスト=山口友里 パンフレットデザイン=京 パンフレット写真撮影=青木司 パンフレット対談編集=工藤千夏 翻訳協力=原真理子 制作=松尾洋一郎/西山葉子/林有希子 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場/(財)武蔵野文化事業団
[チケット発売日] 2006年10月1日(日)前売・予約:一般3,500円/学生・シニア2,500円/高校生以下1,500円 当日:一般4,000円/学生・シニア3,000円/高校生以下2,000円 一日通し券(前売・予約のみ):一般9,000円/学生・シニア6,000円/高校生以下4,000円 武蔵野市民・(財)武蔵野文化事業団アルテ友の会会員 特別料金3,150円 一日通し券8,100円
公式=http://www.seinendan.org/
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Posted by shinobu at 2006年12月07日 17:05 | TrackBack (0)