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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年02月01日

Ort-d.d『肖像 オフィーリア』02/01-04自由学園明日館 講堂

 Ort-d.dがまた重要文化財で演劇をやってくれました。東京国際芸術祭2007オープニング公演です。上演時間は約1時間40分。

 自由学園明日館は“JR池袋駅メトロポリタン口より徒歩5分”ですが、道が込み入っていますので、会場までは余裕を持って行かれることをお勧めします。私は道に迷って開演ギリギリに滑り込むことになってしまいました。冷え込みましたので厚着をするのが良いかも。

 しのぶの演劇レビュー内の“Ort-d.d&倉迫康史”の検索結果も参考になさってください。倉迫さん演出のお芝居を観たはこれで17本目になるのかしら。多作ですよね~。
 ⇒倉迫康史インタビュー
 ⇒a ophelia gallery(オフィーリアのきれいな絵がいっぱい)

 会場に入ると背もたれのある木製のベンチが整然と並んでおり、講堂というよりは礼拝堂のような雰囲気。舞台はほぼプロセニアム(額縁)形式ですが、客席の周りや通路も頻繁に使われて、役者さんがかなり観客に近い場所で演技されました。壁には綺麗な木組みの窓が並んでおり、外の明かりも会場に入ってきます。昼公演では遮光されるそうですので、夜公演とは違った印象になるでしょうね。

 日本近代文学の参考テキスト(下記参照)の多さに驚きましたが、パンフレットの演出ノートによると、主に太宰治『新ハムレット』『女生徒』、如月小春『DOLL』が使われたようです。『新ハムレット』には『ハムレット』と同じ登場人物が出てきますが、ストーリーは全然違うんですね。

 Ort-d.dならではの個性的かつ大胆な語り口で、原作と全く違った『ハムレット』の世界の断片が次々と繰り出されていきます。『新ハムレット』とミッションスクールの女生徒たちの物語が絡み合う構成だったようですが、私はどちらがどちらのストーリーなのか等はよくわかりませんでした。

 タイトルどおりシェイクスピア作『ハムレット』のヒロイン・オフィーリアが主軸になっています。このお芝居で描かれたオフィーリア像(=少女像)については、どうしても誰かの個人的な思い込みで作りあげられた人形のようにしか見えませんでした。また、若い女優さんたちもそんな(誰かの)理想の少女にはなりきれていないように映りました。

 ただ、演出ノートには下記のように書かれていますので、確信犯なのですね。

 しかし、少女達の物語を作ったとはいっても、それはしょせん男性目線のものでしかない。どうやらそうらしい、としか言えない。少女達の謎は謎のままでよいとした。

 クローディアス(三村聡)とポローニアス(村上哲也)が対立する場面が良かったです。演技対決でもありました。
 オフィーリア役でチラシのモデルにもなっている市川梢さん、ミッションスクールの女教師役の小田さやかさんが印象に残りました。

 ここからネタバレします。

 ポローニアス(村上哲也)が正義の人だったり、ガートルード(三橋麻子)が自殺したり、クローディアス(三村聡)がマクベスに見えてきたり・・・原作と違った意外な展開で、戸惑いながらも解釈の自由さを楽しみました。

 ハムレットと婚前交渉して妊娠したことを開き直ってしまう偽オフィーリア(平佐喜子)の方が、無垢なオフィーリアたちよりも本物の女性に近いんじゃないかと思いました。だから兵士に蹂躙される少女たちを見ても特別な悲しみは感じられず、男と女の違いがはっきりとしたなぁ、というぐらいに受け取りました。
 ミッションスクールであろうが娼婦宿であろうが、女性の本質というものはそれほど変わらないんじゃないかと私は思います。むしろ立場や境遇に染まって、その中での何らかの目標に向かって一直線に進んで行ける男たちの方が、純粋無垢であるように思いました。

東京国際芸術祭2007オープニング公演
出演:市川梢/岡田宗介/三橋麻子/村上哲也/三村聡(山の手事情社)/杉村誠子/小田さやか/平佐喜子/山田裕子(第七劇場)/綾田將一(reset-N)/小林紀貴/凪景介/浅野葉子/金子由菜/住吉梨紗/森久智代/渡辺麻依
構成・演出:倉迫康史 美術:伊藤雅子 照明:木藤歩(balance,inc) 音響:水村良(AZTEC) 衣裳:竹内陽子 ヘアメイク:竹澤綾子 宣伝美術:山本ゆうか、ROCCA WORKS スチール:萩原靖 写真モデル:市川梢 舞台監督:弘光哲也 演出協力:棚川寛子 制作:河合千佳
参考テキスト:夏目漱石『草枕』(1906、明治39年)/坪内逍遥訳『ハムレット』(1907、明治40年)/志賀直哉『クローディアスの日記』(1912、大正1年)/島崎藤村『桜の実の熟する時』(1919、大正8年)/小林秀雄『おふえりや遺文』(1931、昭和6年)/太宰治『女生徒』(1939、昭和14年)/太宰治『新ハムレット』(1941、昭和16年)/太宰治『待つ』(1942、昭和17年)/如月小春『DOLL』(1983、昭和58年)ほか
主催:Ort-d.d/NPO法人アートネットワーク・ジャパン 特別協賛:アサヒビール株式会社 助成:財団法人アサヒビール芸術文化財団 後援:豊島区
料金(日時指定・自由席・税込)一般 3,500円/豊島区民割引 2,500円/学生 2,000円(当日要学生証提示)
公演公式=http://www16.plala.or.jp/ort/ophelia_about.html

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Posted by shinobu at 2007年02月01日 23:55 | TrackBack (0)