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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年03月25日

tpt『Angels in America【第2部「ぺレストロイカ」】』03/20-04/08ベニサン・ピット

 第1部に続いて第2部を拝見し、メルマガ号外を発行しました!
 第一部からご覧になることをお勧めします。4/8(日)が千秋楽ですので、ご予約はお早めに♪
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 ⇒CoRich舞台芸術!『Angels in America

 ≪あらすじ≫ パンフレットより。★ネタバレしています。(役者名)を追加。
 ---前進などできない! 不可能である、決して前に進んではならないのである!!
 プライアー(斉藤直樹)は天使光臨の夜以来、自分は危機的状況にある社会の預言者だと信じ込んでいる。プライアーのもとを離れたルイス(池下重大)と、ルイスとおなじ裁判所に勤めていたジョー(パク・ソヒ)は急接近し、つき合うようになるが、ルイスは依然プライアーのことが気にかかり、病魔に苦しむプライアーに対してなにもできないでいることを悩ましく思っている。ルイスはベリーズ(矢内文章)にジョーが悪名高き保守主義者ロイ・コーン(山本亨)の部下であることを告げられ、ジョーとの関係を破綻させてしまう。
 ロイ・コーンの容態も悪化の一途をたどる。ロイが赤狩り時代に死刑に追いやったはずのエセル・ローゼンバーグ(松浦佐知子)が病床に訪れるようになり、ロイの最期を看取る。ロイの担当看護士であるベリーズはプライアーのために、ロイが権力を使って大量に手に入れた新薬AZTを盗み出す。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 ジョーに「自分はゲイだ」と告白されたジョーの母親ハンナ(松浦佐知子)は、モルモン教総本山の街ソルトレイクシティからニューヨークへ出てきて、ノイローゼのハーパー(宮光真理子)を世話しながら、モルモン教のビジターセンターで働いている。ある日ジョーの後をつけてセンターを訪れたプライアーが高熱に倒れ、ハンナが病院へ運ぶ。ハンナに付き添われたプライアーの病室にふたたび天使(チョウソンハ)が降り立ち、天国への階段が現れる。プライアーは天国を訪れ、祝福がほしい、もっと命がほしいと訴える。
 ルイスはプライアーのもとに戻りたいと言うが、プライアーは愛してはいても、いっしょにに暮らすことはできないと言う。ジョーもハーパーとよりを戻したいと訴えるが、ハーパーはひとり、サンフランシスコへ旅立つ。
 ---この世界は苦しみに満ちた前進というものがあるの。うしろに置いてきたものを追い求めながら、先に向かって夢を見る……
 ≪ここまで≫

 第2部も第1部と同様に、生(ライブ)の魅力炸裂!客席の私も舞台上の彼らと一緒に病院を、公園を、幻覚の世界を旅しました。後半は独立していたエピソードがどんどんと重なり、交わっていきます。ますます加速して一体になっていく夢と現実、天使と人間、私と彼ら・・・。演劇という嘘がはっきりと示されているのを知りながら、劇世界の中に溶けるように入り込みました。

 登場人物とそれを演じる役者さんの両方を同時に見るような状態になり、舞台の転換をするスタッフさんや隣りに座る観客の方々にもはっきりと意識が向くようになります。劇場内に居るみんなが確信犯になって、一緒にこのお芝居を作り上げているような気持ち、というのでしょうか、希有で幸せな体験でした。

 開場・休憩時間にはあっけらかんとした80年代のアメリカン・ヒッツが流れます。懐かしさと物悲しさが同居する自分の心の状態を味わい、この20年の自分の過去を振り返りました。もうこの戯曲で描かれた時代から20年経っているんですね。天使が言うように、ますます暗い未来しか見えなくなってきているこの世界で、疑問を持ちながらものうのうと生き続けてしまっている私。どうやったら自分の命に素直に前向きになれるのか、その答えを教えてもらえたように思います。

 山本亨さん、めちゃくちゃかっこいいです!あぁ、ロイ・コーン、ロイ・コーン、ロイ・コーーーン!!夢に出て来そうだ(笑)。病院モノが大の苦手の私なのに、ロイが乗ったベッドが出てくる度にうきうきしました。「今度は一体なにをやってくれるんだろう!?」って。そして一度も期待を裏切られませんでした。こういうのを当たり役というのではないでしょうか。
 
 ここからネタバレします。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 第2部も深貝大輔さんの大迫力の独白から開幕。マチネの第1部から続けてご覧になっている方々と、ソワレから参戦した自分との温度差を感じざるを得ない、熱に満ちた劇場内でした。やっぱり続けて観たかったな~・・・まあ、私は体力的にムリなんですが。

 ロイ・コーンに死刑にされたエセル(松浦佐知子)が、死んだ天敵ロイ・コーンのためにユダヤの祈りをとなえ、偉大な赦しが示されます。そんないいシーンでもオチにちゃんと笑いが用意されていて大満足。

 イントレに乗って飛翔する天使(チョウソンハ)の人間くさい天使像にクギづけ!
 天使「肉体は魂の花園。」
 天使が、このまま進めば大災害に見舞われる人間(地球)の未来を予言し、プライアーに「決して前に進んではならない」と助言しますが、プライアーの結論は「人間は前に進まないことなんてできない。これからもどんどん色んな人種と出会って、交わって行く。もっと命を!」でした(そして天使からプライアーに命が与えられます)。※セリフは正確ではありません。
 私が受け取ったのは、肉体という喜びを愛すること/自分に起こる出来事を受け入れ、それと共に生きること/明確な意志を持って生を選ぶこと・・・など。

Part 1 ミレニアム・Part 2 ぺレストロイカ
Tony Kushner's A Gay Fantasia on National Themes
出演=山本亨/斉藤直樹/パク・ソヒ/池下重大/チョウソンハ/宮光真理子/松浦佐知子/植野葉子/矢内文章/深貝大輔/小谷真一/アンソン・ラム
脚本=トニー・クシュナー 訳=薛珠麗・TPTworkshop 演出=ロバート・アラン・アッカーマン 演出補/薛珠麗 美術・衣裳=ボビー・ボヤヴォッツキー 照明=沢田祐二 ヘア&メイクアップ=鎌田直樹 音楽=粟屋顯 音響=高橋巌 舞台監督=赤羽宏郎
発売日:2007/02/24 全席指定 一般5,000円 学生3,000円(TPTのみ取扱い) Part1&Part2通し特別観劇料金9000円(同じお日にちの昼夜でご観劇の場合のみ)
公式=http://www.tpt.co.jp/

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Posted by shinobu at 2007年03月25日 17:29 | TrackBack (0)