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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年06月17日

ルームルーデンス『サロメ オーケストラ版』06/14-17芸能花伝舎 体育館特設会場

 ROOM RUDENCE(ルームルーデンス)は1995年から活動開始された、田辺久弥さんが演出される劇団です。
 全曲オーケストラでの生演奏というスタイルは昨年から始められたそうです。ホントのホントに、オーケストラが、体育館に、居ました。曲もオリジナルだそうです。一般3500円は安すぎでしょう。

 劇団サイトで田辺さんと演劇ライター・徳永京子さんのロング・インタビューが読めます。すごく充実した内容ですので、ぜひぜひお読みくださいませ!高校生のエデュケーション・プログラムに興味が沸きました。

 ※受付の対応が非常に残念なものでした。誰もチャレンジしないようなことをされていると思いますので、それを箱に入れてリボンをかけて美しいパッケージにしていただければ、もっと多くの観客に届けられると思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『サロメ オーケストラ版

 体育館の舞台の上にオーケストラ。舞台下にはグランドピアノとティンパニもいました。マジかよ?!って思いましたね、最初(笑)。でも音はスピーカーを通してだったのがちょっと残念。てゆーか私が高望みすぎですよね、オペラじゃないんだから(笑)。
 客席後方のイントレに乗って指揮者が指揮をするのは、絵的にもかなり面白いです。しかも場所が元・小学校の体育館ですから、奇妙なミクスチャーです。

 体育館のフロアに白い花吹雪のようなものが敷き詰められています。役者さんはその上を歩くので、その吹雪が動いてわだちができます。他にも色んな仕掛けがありましたね~・・・これでもか!って言うほどのサービスだったように思います。「サービス」という言葉は適切でないかもしれませんが。

 『サロメ』はルームルーデンスでは何度も再演を繰り返しているレパートリーだそうで、今作ではインタビューにもありますように「視点を父親(ヘロデ王)に合わせた家族劇」でした。『サロメ』は私も大好きな小説で、演劇作品やオペラでも関連するものを何作か拝見しています。今作でのコンセプトについては、私は残念ながら共感できませんでしたね。私がアングラ的なものが苦手だからではなく、『サロメ』という作品の解釈が全然違うんだなと思いました。それもインタビューを読んでよくわかって良かったです。

 サロメ(柿澤亜友美)の舞は大迫力でした。その舞の後でサロメの長い独白があるのですが、そこでの演技が素晴らしかったと思います。まず柿澤さんの容姿がとても美しいですし、ヨカナーンを欲する純粋な気持ちが伝わってきました。

 ここからネタバレします。

 病院のモチーフがよく使われるようですね。患者が着せられる妙なパステルカラーの前空きの服、点滴を吊るすためのキャスター付きのステンレス器具、目の不自由な人のための杖、車イス、包帯など。視覚的にわかりやすいので効果はあると思いますが、もうちょっと洗練されて欲しいなと思いました。
 赤と緑、紫などの色合いの照明は好きになれませんでした。

 ヨカナーンの首がキャベツだったのは面白かったです。キャベツって形が脳みそに似てますよね?サロメが「お前の口にくちづけするよ」と言ってキャベツをかじりまくるんですから・・・ホラーですよ、ホラー!!さらに、床に散らばっていたのはおそらくシュレッダーにかけられた白い紙だと思うのですが、キャベツの千切りとイメージが重なっちゃいました・・・。千切りの脳みそがよりどりみどり!血みどろの残酷祭りですよ!私の頭の中でだけですけど(笑)!!

 究極の不良娘とはいえ、娘を殺してしまった父ヘロデ王(倉知成満)と、心から愛していたわけではないが娘を殺されたヘロデヤ王妃(黒木美奈子)。サロメの死後、ヘロデとヘロデヤのベタなメロドラマが始まってしまったのは意外だったし、残念でした。ホラーですっごく盛り上がってたし(笑)。
 最後は大きな白い布に、現代の女学生姿のサロメとごく普通の夫婦姿のヘロデとヘロデアの、3人家族の記念写真が映し出されました。同時にヘロデ王が衣裳を脱いで現代服になり、今まで描かれた『サロメ』の世界が日常とつながるという仕掛けでしたが、私には取って付けたような印象でした。

≪東京、関西、広島≫
出演=倉知成満/黒木美奈子/棟方絵夢/柿澤亜友美/高木菜緒/筆塚健太/中山志織
【オーケストラ】作曲・編曲・指揮=中村康隆 ボーカル=五阿弥瑠奈 (from Ooze)/カマタユキ(広島のみ) ヴァイオリン 小倉勇樹 (コンサートマスター)/石山町子/和泉有音/田川小百合/田原稚子/趙御鈴/樋口秀樹/小山亜紀(関西のみ) ヴィオラ=坂本晴人 ヴァイオリン・チェロ=中山雅俊 コントラバス=生形憲市郎 Eバス=矢野敦 グランドハープ=青砥貢美 ピアノ=伊藤祥子/上野智子 パーカッション=AIKO99/伊藤Dotechin'  PA=辻村篤記録(広島のみ) フルート=本田世志子 Kura=藤田紗織(関西のみ) クラリネット=和田貴嗣 ホーン=酒井麗/大宮徳子(関西のみ) トランペット(ラージホーン)=わたのみどり/宮崎愛子(関西のみ) トロンボーン=HTB/前田尚基 A.E.ギター=有田易弘(from Ooze)
原作=オスカー・ワイルド 翻訳=日夏耿之介 演出=田辺久弥 照明=橋本剛 舞台監督=小野八着/小野貴巳(Jet Stream)  写真=植村忠透 稽古場協力=急な坂スタジオ 協力=メーザーミュージックハウス/辻村篤紀/阪口りこ
一般 ¥3500 高校生以下 ¥2500 伊丹市民の皆様 ¥2500
http://roomrudence.com/

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Posted by shinobu at 2007年06月17日 12:38 | TrackBack (0)