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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年09月26日

遊園地再生事業団『ニュータウン入口(本公演)』09/21-30シアタートラム

 宮沢章夫さんが作・演出される遊園地再生事業団の新作です。といってもリーディング公演、準備公演を経ての本公演。私は本公演のみ伺いました。

 宮沢さんの作品は何度か拝見しておりまして、「私にはわからないものなのよね~」という、半ばあきらめたような、開き直ったような(笑)気持ちで観に行くことにしています。

 上演時間は約2時間20分。私は前から2列目で空調がすごく寒かったです。後方だとそれほどでもないようですので、前方の席の方は寒さ対策をされると良いと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ニュータウン入口(本公演)

 ≪あらすじ≫ というか、キャッチコピー。
 ニュータウン入口。または私はいかにして心配するのをやめニュータウンを愛し土地の購入をきめたか。
 ≪ここまで≫

 白い鉄骨の額縁の前に、区画された分譲地(ミニチュア)。鉄骨の後ろにも演技スペースがあり、そこでの演技はビデオカメラで撮影され、舞台中央の大きなスクリーンに生中継されます。きれいな正方形に分けられた床には土が敷いてあるスペースも。

 役者さんの立ち姿を観て、長い時間をかけて創作されたことがよくわかりました。役柄、というよりは作品が身体にすっかりしみこんでいるような、すごくしっくりくる佇まい。言葉も声も動きにも迷い(を含んだ大げささ)がなく、意味がわからなくても役者さんを観ているだけで退屈しない状態でした。

 ただ、とにかく私は寒くって・・・(涙)。2時間20分という上演時間にも萎え気味。でも最後まで観てよかったです。最後に東京(首都圏のニュータウン)と世界とが並列になって、地球の外からいろんな国や町を眺める視点を持つことができました。

 ここからネタバレします。

 ギリシア悲劇の名前をもった人物が登場します。最後にアンティゴネ(鎮西猛)がニュータウンの舗装された道を歩いている映像は、昔観た映画の「オイディプス王」を思い出しました。
 エンディングは映像でした。ニュータウン、森林(殺されたと思っていたハト〔二反田幸平〕が泳いでた)、そしてパレスチナの風景。

 建てて、壊して、埋める。それを繰り返してどんどん塗り替えられていく都市の暮らし。何を拠り所にして生きるのかを曖昧にしたままでいると、自分がふわふわと浮いた状態で落ち着かないんですよね。どうにか近場に居る人々と徒党を組むことで足場を固めようとする。でもその徒党っていう集合体はものすごく頼りないし、結局一緒になって揺れ動いて流れ続けるだけかもしれない。
 この作品に登場した人物(の一部)は“日本ダンス普及会”の仲間入りをすることで安定しようとしたみたいです。まあ私も似たことやってるのかもしれないですね。

 “日本ダンス普及会”に居たポリュネイケス(南波典子)が、最後の(直前の)シーンではその団体を去っていました。アンティゴネ(鎮西猛)の愛が彼女を支える柱になって、彼女は一人で生きていけるようになったのかしら。
 ※ポリュネイケスは戦死してるので、自立したのではなく、心安らかに成仏できた(だから消えた)のかもしれませんね(2007/09/27加筆)。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ メモったことのみ。
 出演=宮沢章夫・内野儀

 宮沢「東京で演劇をやることの困難を感じています。内野さんはそのことについてどうお考えですか?」
 内野「今の東京で何が起こっているのか(を描いてた作品だと思う)。歴史や記憶がないんですね。歴史と記憶がないと演劇は成立しないんです。例えばギリシア悲劇は過去のことをあーだこーだと言う記憶の劇だし、演劇自体が歴史の再現だったりします(それが今の東京にはない)。でも身体には記憶が残っているからダンスをやる(それが作品に登場する日本ダンス普及会につながる?)。いわば東京は、歴史や記憶がないことを忘却して、演劇をやっている状態なんですね。」
 
 内野「私は今日の客席に若い人が多いことに勇気付けられてるんですが(笑)。」
 内野「文化産業として演劇が成立したのはわりと最近のことで、これからもそれは続くと思うんだけど。産業としての演劇ではあきたらない人も出てくると思うし、いいものは残っていくとも思います。時間をかけて発明してきたものを観客はわかってくれると思う。」

 宮沢「そう思っていながらも、惑わされる。大きな劇場でやらなければいけないのか、とか。私は今50歳なんですが、80歳までアゴラ劇場でやっててもいいんですけど、それがダメなような空気を感じる。」
 宮沢「太田省吾さんがある一定の仕事をしてこられたのに、突然に亡くなられて・・・(とてもショック)。先行してやってくれていた人がいなくなって、僕がつかまっている場所がどんどんなくなっている気がしてならない。」

 内野「(私は宮沢さんに)アゴラでもやるけど、もう少し開かれたところでもできることを期待したいです。太田さん的な側面も持ちつつ、そんなにストイックに自分に禁止しなくても良いと思う。自分もちょっと前までは中間管理職のような仕事だったんですが、もう今はそういうわけにはいかなくて。ベタな話ですみません(笑)。だから(えらそうですが)宮沢さんの責任としてやるべきなんじゃないかと。ぜひやっていただきたいと思います。どちらもきちんとキャパシティがあるのは、これを言ったら怒られるかもしれないけど、宮沢さんだけじゃないかと思いますし。」
 宮沢「いつも内野さんに励まされてるんですよね(笑)。」

 宮沢「2001年の『TOKYO BODY』からずっとカメラで生中継をする演出をやってるんですが、観る人(観客)はもうこれは期待していないんじゃないかという不安に駆られます(同じ演出を続けているから)。」
 内野「太田省吾さんはずっと同じ方法(無言劇)を使っていて、見巧者ばかりが観客になると『なぜしゃべらないの?』と言いだす客がいなくなる(笑)。難しいところだと思います。消費されて先細りしていく。でも『どうしたら観客に笑ってもらえるか』を考えるようになったら、宮沢さんの良いところがなくなると思う。」

 内野「観客が自分で舞台を手繰り寄せることが演劇だと思います。今の(東京の)お客さんはそうでもないのかな。」
 宮沢「観ている人が、わりと積極的にこちら側を解釈・想像してくれるかを、(その可能性を)できるだけ広げようと思っています。」

 宮沢「もう新しいものは何もないとあきらめるのはつまらない。あきらめることから自由なのが演劇なんじゃないかと思います。」

 宮沢「なんだか人生相談みたいなトークになってしまいましたが(笑)。⇒終わりの言葉」

出演=齊藤庸介、佐藤拓道、鎮西猛、鄭亜美、時田光洋、南波典子、二反田幸平、橋本和歌子、三科喜代、山縣太一、杉浦千鶴子、上村聡(遊園地再生事業団)、田中夢(遊園地再生事業団)/若松武史 (本公演のみ)
作・演出=宮沢章夫 舞台監督=海老沢栄 照明=齋藤茂雄 音響=半田充(MMS) 美術=大泉七奈子 衣裳=岩倉めぐみ 映像=岸建太郎 今野裕一郎 井上真喜 舞台監督助手=鈴木拓 照明オペ=横原由祐 衣裳助手=三枝理恵 演出助手=大地泰仁 白井勇太 宣伝美術=斉藤いづみ 宣伝写真=有賀傑 Web制作=有馬称 制作=永井有子 製作=遊園地再生事業団・ウクレレ
チケット発売:2007年3月3日(土)10:00~ プレビュー (1)・(2) 整理番号付自由席(前売・当日共)各¥1,800/プレビュー (1)・(2) +本公演7500円/プレビューどちらか1公演+本公演6000円/本公演(全席指定)一般4500円・学生4200円
※本公演のチケットは引換券。7/21の一般発売日以降にチケット発券して発送。
※同時購入でなくても、プレチケットの半券持参でキャッシュバック。
http://www.u-ench.com/

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Posted by shinobu at 2007年09月26日 23:09 | TrackBack (0)