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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年12月15日

劇団、本谷有希子『偏路』12/14-23紀伊國屋ホール

 文芸界でも活躍されている本谷有希子さんの新作です。GreenPaper2007年12月号でヒロインの馬渕英俚可さんにインタビューさせていただきました(⇒CoRich今月の注目女優インタビュー)。

 予想していたよりもスローペースな展開で、どういう結末をつけるのだろう?と少々不安にも感じていたのですが、最後は「わぉっ♪」とプチびっくり&情けなさ過ぎて涙と笑いがこぼれるという、私にとっては強い味わいのある結末が用意されていました。上演時間は約2時間10分(休憩なし)。

 ピンクと黒の2種類あるパンフレット(1500円)には上演台本が掲載されています。本谷さんと辛酸なめ子さんの対談、本谷さんのお父様(だよね?)の寄稿に、電車の中でほとんど爆笑しかけてしまいました(笑)。ぜひ公演をご覧になった後にお読み下さい。

 ⇒CoRich舞台芸術!『偏路

 ≪あらすじ≫ 少々ネタバレしていますが、読んでから観に行っても問題ないと思います。
 女優を目指して9年前(ぐらい?)に上京した若月(馬渕英俚可)だが、夢にやぶれ、実家に帰る決心をする。しかし家族の大反対を押し切って家出同然で出て行った身分では、今さら帰りたいとは言いづらい。父親の宗生(近藤芳正)は毎年のお正月に、八十八ヶ所の四国遍路参りのために親戚の紺野家に身を寄せている。田舎町で平凡に暮らしている紺野一家がかもしだす幸せムードに、若月はどうしてもなじめない。
 ≪ここまで≫

 私は観客視点で観劇を続けており、戯曲の勉強をしているわけではないので、「脚本が良い」と言い切れるような立場ではないのですが、本谷さんの言葉やストーリーは独特でとても面白いと思います。今回も充分に楽しませていただきました。
 ただ、もっとセリフや設定の奥を観たいと思いましたね。例えば役者さんの演技はキャラクターの個性を固定しすぎているような気もします。あと、言葉に合わせた演技のような気も。

 美術とぴったり合わせた映像は見ごたえがありました。広くて清潔そうな、いわば平凡な現代日本の一軒家に、大胆な色彩と動きが生まれて面白かったです。紀伊國屋ホールのステージを存分に使われていました。

 ここからネタバレします。

 若月ばかりがヘンな人なのかと思ったら、父親の宗生がキレやすい暴君パパだったんですね。それがわかりにくかったです。言葉では説明してくれているんだけど、演技が一辺倒な気がしました。

 「あきらめきる」を「諦め」と「切る」に分けて味わうと、その大変さがよく理解できます。結局あきらめきることなんて、自分から努力してできることじゃないんですよね。触れ幅大きく行ったり来たりして、試行錯誤のてんやわんやの末に「必死であきらめるようとすることを、止める」という結論に達する父娘。そこに車の事故や救急車のサイレンも合わさって、全くハッピーではない、問題がさらに山積みになるエンディングが訪れます。体をこきざみにぷるぷる震わせて「カカカ」と笑いながら、涙がホロリと流れました。

 最初に大笑いしたセリフ。
 若月(玄関で)「ひとんちの玄関臭い!」
 ※パンフレットの台本(11/18時点)では「ひとんち臭い!」になっています。

劇団、本谷有希子第13回公演
出演:近藤芳正/馬渕英俚可/池谷のぶえ/加藤啓/江口のりこ/吉本菜穂子
脚本・演出:本谷有希子 美術:中根聡子 照明:倉本康史(APS) 音響:藤本純子(Sound Busters) 音楽監修:秋山多恵子 衣裳:鈴木美和子 ヘアメイク:奥野展子 映像:奥秀太郎 演出助手=福本朝子 舞台監督:宇野圭一+至福団 宣伝美術:佐々木暁 宣伝写真:引地信彦 宣伝ヘアメイク:二宮ミハル WEB制作:関谷耕一 票券:脇本好美(ヴィレッヂ) 当日運営:皆川小百合 制作助手:嶋口春香 制作:寺本真美(ヴィレッヂ) 企画・製作:劇団、本谷有希子
【発売日】2007/10/27 前売:5,000 円 当日:5,300 円
http://www.motoyayukiko.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 2007年12月15日 12:21 | TrackBack (0)