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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年02月24日

魚灯『着座するコブ』02/21-24東京芸術劇場 小ホール1

 東京国際芸術祭2008(TIF)が開幕しました。リージョナルシアター・シリーズ/創作・育成プログラム部門をまず拝見。
 魚灯(ぎょとう)は山岡徳貴子さんが作・演出される京都の劇団です。登場人物それぞれに厚みが感じられる、とても味わい深い脚本でした。中盤以降の大胆な演出も見ごたえがありました。上演時間は約2時間。
 
 今年の岸田國士戯曲賞最終候補作となった『静物たちの遊泳』のリーディング特別公演もありますので、山岡さんの作品を連続して2つも観られる機会となっています。

 ⇒CoRich舞台芸術!『着座するコブ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 都心から少し外れた、住宅街の中にある小さな商店街。商店街と言えども開けている店は疎らで、ほんの十店舗ほどが営業を続けているだけである。舞台は、その商店街の古本屋。父の代からの商売で、長男の隆司(杉山文雄)が妻(鈴木陽代)と共に経営している。
 母が倒れ、母の希望により、店の二階の窓の近くにベッドが置かれることになった。まるで宙に浮いているような場所に、ベッドは存在し続ける。
 現在、両親は共に他界した後で、長男夫婦が暮らしていただけであったが、そこに妹とその娘(田中夢)が同居することになる。妹が寝たきりの状態になったからである。母が死んでからは片付けていたベッドを再び二階に戻し、隆司は妹をそこに眠らせる・・・。
 ≪ここまで≫ その他の配役:肉屋(三村聡)、洋服屋の旅人(野中隆光)とその妻(武田暁)

 2階部分や奥行きなど、しっかり建てこまれた具象美術が圧巻です。照明がとても大胆!音響(音楽も)狙いがしたたかで、かっこいいです。
 セリフは軽く発せられながらもグサっと心に深くささったり、じんわりと鈍痛を与えたり、重みのあるものが多くて、言葉を追いかけていくだけで充実感がありました。

 しかしながら、演技の方法がそれぞれにとても独特な役者さんが揃っていたせいか、対話の豊かさが削がれているように感じることが多かったです。
 出演者の所属劇団がグリング、THE SHAMPOO HAT、山の手事情社、ク・ナウカ、遊園地再生事業団、そして魚灯という、強烈なラインアップなんですよね(笑)。息(というか、むしろ方向性?)を合わせるのが難しかったのではないかと思いました。

 旅人(野中隆光)の妻を演じられた武田暁さんがとても色っぽくて良かったです。

 ここからネタバレします。

 私だけかもしれませんが、2階のキャットウォークにベッドがあるということが、中盤までわからなかったのが痛かった・・・。ずっと手すりに布がかけられていると思っていました。下手の席だったらヘッドボードが見えていたらしいんですが、私には見えず。

 誰も手に取らない古本の山に埋もれながら、さびれた商店街でどんどん隣の家を買って、建て増ししていく隆司(杉山文雄)。「何もかも自分の世界(灰皿)に取り込んでいく」という妻(鈴木陽代)の話は、隆司のことだったんですね。

 商店街の活性化のために祭りを作ろうと、空騒ぎする肉屋(三村聡)。ポン引きの仕事に疲れて実家に帰ってきたけれど、やはりまた逃げ出す旅人(野中隆光)。娼婦をしながら夫(野中)についてきたが、もうひとところに留まりたいと思っている妻(武田暁)。母親を軽蔑する早熟な女子高生(田中夢)。ひとクセもふたクセもある登場人物ばかりです。もっとべっとり、ずっしりとした係わり合い(闘い)が観たかった気もします。

 隆司の妹(めぐみちゃん)は寝たきりだと言っていましたが、実は好きな男を追いかけて、女子高生の娘(田中夢)を置いて家を出て行っていたことが判ります。台風の中、いないとわかっている妹を隆司と妻がおおはしゃぎで探し回るのが、空しくて良かったです。

 赤や緑の照明がじわじわ、古本屋を侵食していくのがかっこ良かったな~。最後の方は前衛演劇のような大胆さでした。

≪東京、京都≫ "A parastic lump"
東京国際芸術祭2008 リージョナルシアター・シリーズ 創作・育成プログラム部門
出演:杉山文雄、野中隆光、三村聡、鈴木陽代、田中夢、武田暁
作・演出:山岡徳貴子 アドバイザー:高瀬久男 照明:齋藤茂男 美術監修:加藤ちか 音響:狩場直史 演出助手:岩崎きえ 舞台監督:富田稔英 演出部:井川学 浅木靖志 照明部:中西正樹 山口 大道具:王様美術 小道具:高津小道具 仮面制作:土屋武史 衣裳協力:竹内陽子 運搬:新日本輸送 宣伝美術:Flatroom 宣伝写真:piszo オブジェ(ちらし):小松修「道しるべ」 記録映像:舞台芸術撮影研究会 記録写真:谷古宇正彦 制作:蓮池奈緒子(ANJ) 武田知也(ANJ) 樺澤良(劇団制作社) 制作助手:きむきょんな 鳥養友美 田中沙織 田代佑佳 票券:ぷれいす TIC Crew:荻野百合子 金有那 藤代健介 主催:ANJ (財)地域創造 共催:東京都
【発売日】2008/01/18(全席自由・日時指定・税込)一般2,500円/学生2,000円/豊島区民割引2,000円
http://tif.anj.or.jp/kyoto/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年02月24日 00:14 | TrackBack (0)