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REVIEW

2008年06月05日

新国立劇場演劇研修所2期生 試演会1『岸田國士の世界~四つの短編集~』06/04-05国立オリンピック記念青少年総合センター 小ホール

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岸田國士の世界

 新国立劇場演劇研修所2期生の試演会の第1回目です。⇒予約情報 
 研修生に興味があるのが第一ですが、宮田慶子さんの演出で、岸田國士の短編を一気に4作品も観られるのも嬉しいです。大道具、小道具も衣裳も本格的ですし。無料はオトクでしょう。

 勉強中の若い生徒たちの試演会だということを念頭に置いて観る必要あり。これからあと2回、今年8月と来年2月にまた試演会がありますので、ひとつずつ大切に拝見していきたいと思います。上演時間は約3時間(途中15分間の休憩を含む)

 ⇒CoRich舞台芸術!『岸田國士の世界~四つの短編集~

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会場写真。カルチャー錬です。

 初日の初回ということで硬さはあったと思います。1期生の試演会1に比べると少々大人しい目ですね。もっと伸び伸びと大きく飛び出すようなものが観たい気もしました。
 岸田作品って、目の前で起こることの裏側を少しずつ探っていって、じんわりと伝わってくる目に見えないものを味わって、「あぁ、そういうことだったのか!」と話の肝になる部分に触れた(見つけた)時に、うっとりします。

 あらすじ等は公式サイトより。ここからネタバレします。

■[秘密の代償]
 高級官吏が休暇を取り、妻と息子と共に、小間使いを連れて海岸の別荘へ来ている。ある日の夕方、小間使いが唐突に暇乞いをする。妻は夫か息子が彼女に言い寄ったのではないかと疑い、二人を試そうとする・・・。
 出演:宇井晴雄(主人)・藤井咲有里(妻)・西原康彰(息子)・吉田妙子(小間使い)※深谷美歩が体調不良により休演。代役に吉田妙子。

 観終わって、なんともずるい(賢い)作品だな~と思いました。どこかで上演されたらまた観たいです。
 謎めいた小間使い役の方が降板されているのは残念。清純そうに見えて実は・・・という悪女のムードが欲しかったです。そういう女にこそ参ってしまう、情けなくとも可愛らしい男性像も見えて欲しいところ。妻と小間使いのバトルも笑いながら観たかった。


■[音の世界]
 京都に新婚旅行に来た夫婦が宿泊するホテルの一室に、妻の昔の恋人から電話がかかってくる。夫に悟られないように会話をするうち、男は自殺をほのめかし・・・。
 出演:佐々木抄矢香(女)・西村壮悟(情夫)・阿川雄輔(夫)・角野哲郎・遠山悠介・西原康彰)

 「音の世界」ってつまり電話を介した話ってことなのね。あー色っぽい。最近の現代劇には軽々しく携帯が出てきますが、同じ電話でもつながる先がはっきりと描かれてると、人間の会話として観られます。
 演劇作品としては4つの中でこの作品に最も重い質感があった気がします。ハラハラしたし(笑)。
 女の着物が派手で素敵。佐々木抄矢香さん、色っぽかったです。情夫(西村壮悟)の熱いまなざしも好き。


■[葉桜]
 お見合いをした娘とその母。母は相手の態度が気に入らないと言うが、娘はどちらともはっきりとしない。娘の結婚を巡ってそれぞれの複雑な心境が交錯する。
 出演:滝香織(母)・保可南(娘)

 これは母親役は大変ですね。健闘されてましたが、まだまだ頑張って欲しいところです。娘役の保可南さんが、お見合い相手との幸せな帰り道について話す様子が素晴らしかった。舞台で生きた姿が観たいんです。
 タイトルがいいですね~。桜が散りきらない頃なんですね。あぁそれもまた色っぽいワ。


■[長閑なる反目]
 失業中の保根とその姉が住む借家に居候する同じく失業中の友人、野見。ある日、電報為替を手にした野見は、滞っている家賃を支払うべく、大家の丸地と共に郵便局へと出かけていくが・・・。
 出演:遠山悠介(フリーの翻訳業・保根)・熊澤さえか(保根の姉)・角野哲郎(保根家のいそうろう・野見)・宇井晴雄(大家)・岩澤乃雅(大家の妻)・吉田妙子(野見の恋人)

 早口でトントンと進む元気な感じでしたが、表面を流してしまっているところも散見されて残念。
 保根(やすね:遠山悠介)と野見(角野哲郎)のケンカは、大胆なアクション・シーンになっていてびっくり。保根は柔道の使い手だという設定のリアリティですね。 
 「最近よくいるずうずうしい人」というのが、まさに目の前にいる野見だとわかるのが可笑しい。人生は不公平だな~(笑)。

出演:演劇研修所2期生(岩澤乃雅/熊澤さえか/佐々木抄矢香/滝香織/保可南/深谷美歩/藤井咲有里/吉田妙子/阿川雄輔/宇井晴雄/角野哲郎/西原康彰/遠山悠介/西村壮悟)
作:岸田國士 演出:宮田慶子 衣裳:半田悦子 床山:奥松かつら 葭葉透子 照明:立田雄士 音響:渡邉邦男 アクション:渥美博 美術補:尾中孝次 演出助手:川畑秀樹 舞台監督:矢野森一 舞台課:塩見なぎさ 調整課:秦恭子 衣裳製作:東京衣裳 志田久 小道具:高津映画装飾 烏城清 履物:神田屋 スチール:落合高仁 制作助手:関口絹子 制作:新国立劇場演劇研修所
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000385.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年06月05日 14:54 | TrackBack (0)