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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年08月13日

彩の国さいたま芸術劇場『音楽劇 ガラスの仮面』08/08-24彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

 美内すずえさんの漫画「ガラスの仮面」の舞台化です。演出は蜷川幸雄さん。2人のヒロインをオーディションで選抜したことも話題になった、今年の夏の注目公演です。⇒製作発表の写真レポート ⇒イープラス ⇒ぴあ

 開演前のバックステージツアーにも参加させていただきました。てゆーかバックじゃないよ、思いっきりフロント!(笑) 初日は鳴り止まない拍手にカーテンコールが6回!?上演時間は約3時間(途中休憩1回を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『音楽劇 ガラスの仮面

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 幻の名作と謳われる舞台『紅天女』の主役という同じ目標に向かって、二人の対照的な少女が女優として切磋琢磨し合う成長物語。二人の演技へのひたむきな情熱、『紅天女』の公演を巡る策略など、様々な人物の思いが交錯する。二人の少女が追い続けた夢の行方は・・・。
 ≪ここまで≫

 劇中劇の仕組みを生かして、劇場への、演劇への愛情を表現するという、彩の国さいたま芸術劇場が打ち出す“ファミリーシアター”というテーマにふさわしい演出だったと思います。大ホールに備わっている機能をわかりやすく紹介して、目の前の俳優の体を使って、今ここで息づいている劇場を観客に感じ取らせてくれました。そんな大胆な試みにチャレンジしつつ、原作に非常に忠実だったことも素晴らしいと思います。

 きっと初めてこの劇場に来たお客様は、「もう一度ここに来たい」って思うんじゃないかしら。厳かなシェイクスピア、アーティスティックなダンス公演などを観てきた私は、この大ホールの新しい姿を観られた気がしました。劇場は役者さんとスタッフ、そして観客とが一緒に作り出すものですね。

 気になったのは、演技と歌の境目があまりスムーズでないように感じたところでしょうか。これは『道元の冒険』でも思ったことです。
 姫川亜弓役の奥村佳恵さんは迫力の存在感。ソロの歌は、聞き惚れたというよりぎらりと光る目の力と、熱が感じ取れる声に圧倒されて目が離せませんでした。

 この大人気コミックのどの部分を舞台化したのかは、ぜひ実際にご覧になって確かめてください♪

 ここからネタバレします。

 バックステージツアーに参加して開演直前の舞台の上に乗ることができたのもありますが、役者さんたちのバーレッスンで始まるオープニングで早くも落涙。
 大ホールの奥までが、だだっ広い演技スペースになっています。雨を何度も降らせてモップでふき取るのも、ベッドなどの家具を黒子が動かすのも(「若草物語」の劇中劇で)、すべて人が目の前で体を動かしてやることです。自分の真横で普段着の役者さんが「舞台では一人じゃない」と歌っている、この状態が「私も生きてるし、あなたも生きてる」って実感させてくれるんですよね。

 ベタだとか、わかりやす過ぎるとか思う方もいらっしゃるかもしれませんが、原画が大きく印刷されたパネルが多数出てくる演出は、「ガラスの仮面」という漫画の世界を出演者も観客も一緒に楽しもうという、作品を外から眺める視点を持ち込むことに成功していたと思います。客席の通路に役者さんが大勢出てきて、そこで大きな声を出して歌いますので、観客は体ごとメタ構造の中に入っていくことができます。おそらく気づかない内に。

 描かれたのはコミックの1巻から5巻まで。劇団一角獣の人たちのパフォーマンス(赤いひもを使ったアクロバティックなもの)がかっこ良かったな~。彼らが出てくると元気がもらえました。
 奥村佳恵さんのバレエ(サロメ役として)がきれいでした。

≪埼玉、大阪、北九州≫
出演:大和田美帆 奥村佳恵 川久保拓司 横田栄司 立石涼子 月影瞳 原康義 月川悠貴 黒木マリナ 岡田正 夏木マリ 花田佳子 妹尾正文 清家栄一 飯田邦博 祐輝薫 松田まどか 難波真奈美 井面猛志 篠原正志 荒川將人 澤魁士 田村真 沓沢周一郎 山名孝幸 町田正明 桜木涼介 多岐川装子 鈴木智香子 森野温子 下塚恭平 小林遼介 川﨑誠司 宮田幸輝 西村篤 中村裕香里 斉藤智史 畑中研人 荻野美香 岡芹翔 高井良彦 大山裕子 渡辺るみ
原作:美内すずえ 脚本:青木豪 演出:蜷川幸雄 音楽:寺嶋民哉 美術:中越司 照明:室伏生大 衣装:宮本宣子 音響:井上正弘 音楽監督:井上知嘉子 振付:広崎うらん ヘアメイク:佐藤裕子 歌唱指導:泉忠道 演出補:石丸さち子 井上尊晶 舞台監督:白石英輔 企画・製作:日本テレビ、(財)北九州市芸術文化振興財団、(財)埼玉県芸術文化振興財団
【発売日】2008/05/17 S席6000円 A席4000円 
http://www.saf.or.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年08月13日 12:36 | TrackBack (0)