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2008年08月30日

韓国演出家協会・アジア演出家展『ロミオとジュリエット』04/07-09アルコ芸術劇場小劇場(韓国)

 ※ずいぶん遅くなってしまいましたが、2008年9/15(月・祝)の上映会に合わせてアップしました。このエントリーは後ほど過去の記事として移動させます(2008/08/30)。

 多田淳之介さん青年団演出部・東京デスロック)が韓国で『ロミオとジュリエット』を演出される、しかも出演者は全員韓国人ということで、韓国はソウル・大学路(テハンノ)まで観に行って来ました

 多田さんのブログに韓国での創作の日々をまとめた動画(約7分間)がアップされています。舞台写真が超~かっこいいですよ!!(4:30ぐらいから始まります) 実は私もチラっと写ってます(笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロミオとジュリエット

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1.韓国演出家協会・アジア演出家展『ロミオとジュリエット』
  04/07-09アルコ芸術劇場小劇場(韓国)
  ☆演出は多田淳之介さん(東京デスロック/青年団演出部)。
   燃えて震える汗だくの身体に、生死を繰り返し、つながる命がありました。
   韓国人の役者さんが立っている姿を見ているだけで落涙。

 韓国、インド、日本の3カ国から演出家が参加し、韓国人俳優とシェイクスピアの作品を共同制作する企画だったようです。私は多田さんの『ロミオとジュリエット』を2回鑑賞(4/9、4/10のマチネ)。

 『ロミジュリ』を3人の演出家が演出する『大恋愛』で、多田さんは第3、4、5幕を演出されましたが、今回は全幕が多田演出。客席は舞台を挟んで劇場入り口側と奥側の2面。両方の側から2回とも最前列で観ました。真紅の四角いマットレスの上で、喪服の男女が踊り、走りまくります。つま先のすぐ近くにマットレスがありますので、目の前を役者さんが走る度に、風が体に届きました。

 セリフはほぼ全て韓国語(ほんの一部が日本語)なので意味はわからないのですが、意味なんて考える余裕は全くありませんでした。ただ、目の前にいる人間(役者)と彼らの関係性から自然と立ち上がってくる何か(目には見えないもの)を、食い入るように、あるいは吸い込まれるように、見つめ続けました。

 70人の中からオーディションで選ばれた韓国人俳優10人は、どう表現したらいいのか・・・とにかくめっちゃくちゃカッコイイんです。立っている姿を見るだけで、涙がこみあげてきました。この分厚い、重い、ぎらぎらと鮮やかな存在感は一体どうやって生まれるのでしょうか。彼らが居る舞台の空気は、張りつめているというよりは、そこに人が居ることで自ずと温度が、密度が上がっているような状態でした。

■舞台写真(こちらより転載許可をいただきました)
20080409_Romeo_and_Juliet.jpg

 ここからネタバレします。

 『ロミジュリ』を脚本の時系列どおりに上演しながら、演出は、人類が誕生して、群れを成して、対立が生まれ、戦争が起こるという、人間が繰り返す歴史をたどっているようでした。
 愛して求めて、憎しみ合って、戦って死んで、再び生を受ける、無数のロミオとジュリエットたち。走って、踊って、取っ組み合って、これでもかと言わんばかりに役者さんは動き回ります。ハアハアと息が上がって、汗の湯気が立って燃える身体から、ばくばくと鳴る心臓の鼓動が聞こえてきそう。奥の奥まで深く輝く役者さんの目を見ると、自分の後頭部が熱くなるのを感じました。

 韓国語で歌われている日本のポップスが流れたり、尾崎豊の曲(オリジナル)が流れると、くすぐったいような、むずがゆいような心地がしました。観客の中には笑っている人もいれば、ムスっと口をつぐんでいる人もいます。黒と赤のシャープな色彩に染められた劇場で、韓国と日本の歴史がザザーっと脳裏に浮かび、それが今、ここに至っていることを体で実感しました。2つの異なる国の人間をつないでいるのが、イギリスの古典戯曲であることも非常に面白いと感じました。

 『大恋愛』と同様、四角い舞台を客席と平行方向に使った“だるまさんがころんだ”がありました。鬼に指差された者はその場にばったりと死んだように倒れ込みます。『ロミジュリ』のセリフを話しながら、やってるのは“だるまさん・・・”(笑)。韓国の観客にも大いに笑いが起こっていました。

 鬼に指された者は、まだ生きている者にタッチされると次々とよみがえって、再び走り始めます。やがて鬼がいなくなったことに気づいて、「おかしいな」と思いながらも繰り返しぐるぐると走り続けるのは、『大恋愛』とは違った演出。最後は冒頭のシーンに戻ってリプライズの効果がありました。
 マットレスを四角くパーテーションしていく照明がかっこ良かったです。シビれた~。

■R&J IN KOREA

 千秋楽の後の打ち上げで、出演者の方々にお話を伺うことが出来ました。10人中6人が演劇大学の卒業生。韓国の俳優の層は厚いです。

 「2年前に鄭義信(チョン・ウィシン)さん演出の『二十世紀少年少女読本』を観て、日本人も同じことに悩んで、同じことを目指して、作品作りをしているということがわかった。だからオーディションに応募した。多田さんにはセンスがある。独自の世界がある。」

 「最後のステージが終わった時、はじめて多田さんに褒められた。嬉しかった。」
 「言葉の壁はやはり厚い。でも通訳が良かった。いい作品になったので満足。」
 「世界一かっこいい『ロミオとジュリエット』に出演することが出来た。そのことが誇らしい。」

出演:Kim You Le(最初に登場するマッシュルームカットの女)/Kang Cheong In(歌い上げて「ナイチンゲール!」と叫ぶ女)/Lee Yoon Jae(2人のジュリエットをおんぶする男)/Jo Jae Ryong(ヒンズースクワットをする短髪の男)/Kim Shong Il(ヒンズースクワットをする長髪の男)/Oh Min Jung(最初に踊りだす笑顔が優しい女)/E Soo Hyun(目力が強いエリート風の短髪の男)/Kwon Teak Ki(立ち姿に哀愁のある大人の男)/Choi Sho Young(ピン止めで前髪をまとめた女)/他1名(“だるまさんがころんだ”の鬼)
脚本:W.シェイクスピア 演出:多田淳之介(東京デスロック/青年団演出部)
入場料15,000ウォン(1700円ぐらい?)
http://www.tdak.or.kr/
http://artstheater.arko.or.kr/performance/performance_view.asp?id=306&menu=L

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年08月30日 17:59 | TrackBack (0)