REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2008年09月08日

青年団『「ヤルタ会談」+特別企画「森の奥」リーディング公演』09/05-07アトリエ春風舎(キスフェス1)

 メルマガ2008年9月号でご紹介しておりました、青年団こまばアゴラ劇場国際演劇月間「キスフェス」が開幕しました。

 6演目+αのトップバッターは、『ヤルタ会談』(⇒過去レビュー)と『森の奥』リーディング(A、Bのダブルキャスト)のセット公演。上演時間は約2時間20分(途中10分の休憩を含む)。

 ステファン・オリヴィエさん(トランスカンカナル)とフェスティバルディレクターの多田淳之介さんとのトークを目当てに千秋楽に伺いました。リーディングはAチームを拝見。

 ⇒CoRich舞台芸術!「『ヤルタ会談』+特別企画『森の奥』リーディング公演

 来日する海外のカンパニーへのリスペクトを込めて、日本のカンパニー(青年団・東京デスロック)が彼らの作品と対になる作品を上演するという、ラインナップ自体が国際交流している企画です。さまざまな国の作品がただ並べられているのでなく、作品同士が対話をする仕組みになっているんですね。それらを観る観客は、自ずとその対話に参加することになります。

 多田さんがパンフレットに書かれているように、世界で何百年も愛されている「演劇」を一緒に楽しむことで、つながりを実感できれば、それで大成功。観客はただ観て、感じるだけでいいんだと思います。

■『ヤルタ会談』
 スターリン(松田弘子)、ルーズベルト(高橋緑)、チャーチル(島田曜蔵)が登場する短編三人芝居。第二次世界大戦終結間際に開かれたヤルタ会談を思いっきり皮肉って、笑いもいっぱい。笑っていられないんだけど、笑っちゃう。笑いながら、冷静に考える。ぜひ友達、恋人、家族と一緒に観たい作品ですね。

 「まんがパレスチナ問題」(山井教雄著・講談社現代新書)を読んでいて良かった。

 ↓アトリエ春風舎に飾られた「ヤルタ会談」原画とチラシたち(劇団関係者より写真を頂戴しました)。
kissFesBoard_review.jpg

■『森の奥』リーディング公演(Aチーム)

 『元ベルギー領コンゴに生息する類人猿「ボノボ」を飼育する人々の姿を描いた新作(公式サイトより)。』です。

 白衣を着た役者さん6名が、テーブルを囲んで静かにセリフを読みます。それぞれが猿のぬいぐるみを手に持って、登場人物の動作をぬいぐるみで表現します。これが可愛らしいし可笑しい。
 ※“猿の毛皮を着たムーミン”を持っていた人が1人いました(笑)。あの人が科学者じゃないからかしら。

 ここからネタバレします。

 「ボノボは乱交型で、子供の父親が誰かわからないから(自分の子供かもしれないから)子殺しが起きない。」など、研究でわかった事実を語りながら、科学者が猿の性交をぬいぐるみで表現します。役者さんが実際にやるとどうなるのかわかりませんが、人形で示すことで想像力が増してエッチだったかも(笑)。

 人間は動物とどこが違うのかと直接問われる題材に、めっぽう弱い私です。科学者たちの私生活の問題(5歳の息子が自閉症など)と、類人猿が二足歩行を始めた原始時代の絵が頭の中で交差して、涙がこぼれました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:ステファン・オリヴィエ(トランスカンカナル)/多田淳之介(「キスフェス」フェスティバルディレクター)/通訳:サラ・ヤンセン

 観客「平田オリザさんに戯曲執筆を依頼した経緯・理由を教えてください。」
 ステファン「1998年にサッカー選手権がフランスで行われた時、その選手権に参加する38カ国の演劇作品も上演されました。その中の日本代表が青年団『東京ノート』だったのです。私たちの作品もベルギー代表に選ばれて上演されました。『東京ノート』をぜひ上演したいと思ったのですが、私たちにとって大人数の芝居は(上演が)難しいので、少人数の新作を書いていただくようお願いしました。たまたまあの時、日本とベルギーがめずらしく(笑)サッカー選手権に選ばれていたおかげです。」
 多田「サッカー選手たちのおかげですね(笑)。」

 多田「日本で演劇をやっていくことは経済的に楽ではないのですが、ベルギーはどうですか?」
 ステファン「国から援助(助成金)はもらっていますが、その分配方法に問題があると思っています。」

青年団こまばアゴラ劇場国際演劇月間「キスは何回?」フェスティバル 愛称「キスフェス」!!!
■『ヤルタ会談』 作・演出:平田オリザ
出演:松田弘子 高橋緑 島田曜蔵
■特別企画『森の奥』リーディング公演 脚本:平田オリザ 演出:多田淳之介
【出演】<A>松田弘子 永井秀樹 木崎友紀子 安倍健太郎 森内美由紀 海津忠 <B>木崎友紀子 安倍健太郎 森内美由紀 海津忠 桜町元 中村真生
舞台美術:杉山至 照明:岩城保 装置:濱崎賢二 『ヤルタ会談』字幕テキスト翻訳:松田弘子 コーディ・ポールトン
【発売日】2008/07/19 予約・当日共=2,000円 KISSセット券=8,000円(電話予約のみ)(日時指定・全席自由・整理番号付)◎『ヤルタ会談』=英語字幕付
http://www.komaba-agora.com/line_up/2008_09/kissfes.html
http://www.komaba-agora.com/line_up/2008_09/yalta.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2008年09月08日 13:24 | TrackBack (0)