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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年12月13日

サバダミカンダ『スタンレーの魔女』12/11-23赤坂RED/THEATER

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チラシ

 松本零士さん原作の短編漫画の舞台化です(⇒公式サイト)。原作の絵が使用されたチラシが凄い迫力!
 作・演出はspacenoidの御笠ノ忠次さん。サバダミカンダとは、*pnish*の土屋裕一さんと御笠ノさんの2人ユニットの名称です。お2人は去年の『絢爛とか爛漫とか』で一緒にお仕事をされたんですね。
 ⇒赤坂経済新聞「気鋭ユニットが赤坂で旗揚げ公演

 2006年のspacenoidによる初演よりグンと完成度が上がっていました。自分の隣りにいる若い男の子が、ゼロ戦に乗っている。それを目の前で観て、肌で実感して、またもや涙ボロボロ・・・!上演時間は約1時間40分。

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 ↑上記は品切れのようですが、絵がかっこいいから載せちゃう(笑)。↓下記は在庫あり。

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 ⇒CoRich舞台芸術!『スタンレーの魔女
 ↓トレイラームービーです(2008/12/16)。短くスマートにまとまっていますね。

 ≪あらすじ≫
 若い日本兵たちが南の島で暇をもてあましている。ゼロ戦乗りのエリートたちは次々と戦場へと飛び立つが、彼らは落ちこぼれチームなので出番がもらえないのだ。だが、とうとう彼らにもチャンスがやってきた。
 ≪ここまで≫

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客席配布の紙飛行機型パンフレット

 今の日本で、自分自身が戦争に参加するとしたら・・・なんて、簡単には想像できないと思います。日本には徴兵制がありませんし、今のところ私の周りの若い男性は、誰も兵隊にはなりそうにありません。ありったけの想像力を駆使した素晴らしい演技で、戦時中の日本人の気持ちを表してくれるお芝居もありますが(私はそんな作品も大好きです)、この作品は、今を生きる現代人の体と心をそのままに示すことによって、自分が戦争に行くとはどういうことなのかを想像させてくれます。

 「深刻な状況下だからこそ、人は笑ってフザけるものだ」という主張を感じました。みんなで神妙な面持ちになって同じ方向を向くのは、安泰だけどかっこ悪いですよね。そして危険でもあります。社会に対してはっきりと意思表示をしていることが、御笠ノさんの演劇の魅力のひとつだと思います。

 ここからネタバレします。

 組み立て式の戦闘機、回るプロペラ、ドラム缶のゼロ戦など、初演と同様にシンプルな美術が素晴らしいですね。

 落ちこぼれたちが「飛びたい」とつぶやいたところで、グっとこみあげてくるものを感じました。とうとう出発することが決まり、全員が戦闘服を身に着けていくシーンで、もう涙が止まらなくなっちゃいました(涙)。あんなに普通にだべっていた男の子たちが、死にに行くんですから。
 だらだらとしていたシーンが本当にくだらなくて静かだったからこそ、飛行機で飛び立って、戦場へと飛び込んだ時のあの爆音が効果的です。

 ゼロ戦の後藤(日比大介)が爆撃機の7人に「高度を上げろ」としきりにジェスチャーで伝えるシーンが、しつこくってすごく面白かった~(笑)。「油圧の関係で高度が上げられないから、スタンレー山脈を越えられない」ことへの上手いつなぎにもなっていました。

 最後の映像はなくても良かったんじゃないかな~と思いました。バサっと白い布の幕が下りて「スタンレーの魔女」というロゴが出たところで、個人的にはもう、感極まった状態でしたので(苦笑)、その熱をそのままに保ってカーテンコールに進んで欲しかったですね。白い幕にうつる兵士たちの影がかっこ良かったです。

出演:土屋裕一、日比大介、津村知与支、富岡晃一郎、諸岡立身、ゆかわたかし、鈴木啓文、深澤和明、加藤忠可
原作:松本零士 脚本・演出:御笠ノ忠次 美術:小林岳郎 照明:津村裕子(アートブレーンカンパニー) 音響:前田真宏 衣裳:佐藤明子 舞台監督:伊東龍彦 桑原淳 WEB:新藤健 票券:西川悦代 制作助手:井手江夢 制作:佐々木康志 音楽協力:SeanNorth 協力:零時社 小学館 主催・製作:ゴーチ・ブラザーズ
【発売日】2008/11/08 全席指定5,000円
http://www.stanley-no-majo.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年12月13日 16:57 | TrackBack (0)