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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2009年01月21日

彩の国シェイクスピアシリーズ第21弾『冬物語』01/15-02/01彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

 蜷川幸雄さんがシェイクスピア作品を演出するシリーズの第21弾です。『冬物語』はシェイクスピアが晩年に書いたロマンス劇の1つ。唐沢寿明さん、田中裕子さんを主役に迎えた豪華キャスト公演です。

 わかっていても、笑ってしまう。わかっていても、泣いてしまう。緻密な感情描写にすっかりのめりこんで、後半はずっと涙ダーダー・・・・(涙)。『冬物語』は1994年のRSC公演で1度観たのですが、今回の方が圧倒的に面白かったです。約3時間30分(途中休憩を含む)。

 ⇒当日券の前日予約ができます。
 ⇒CoRich舞台芸術!『冬物語
 レビューをアップしました(2009/1/23)。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名を追加)。
 シチリア王レオンティーズ(唐沢寿明)は、幼馴染のボヘミア王ポリクシニーズ(横田栄司)がシチリアに滞在した折、帰国を引き止める妻の王妃ハーマイオニ(田中裕子)の言動から、ふたりの仲を疑い始める。嫉妬心を抑えられないレオンティーズに危険を感じたポリクシニーズは急遽帰国し、ハーマイオニは臣下アンティゴナス(塾一久)の妻ポーライナ(藤田弓子)に匿われる。レオンティーズは生まれたばかりの王女パーディタをポリクシニーズの子だと思い込み、他国の荒野へ捨ててくるようアンティゴナスに命ずる。心労で幼王子が急死し、ハーマイオニは自害したと伝えられ、レオンティーズは自分の過ちに気付き激しく後悔する。
 ―16年の歳月が流れる。ボヘミアの王子フロリゼル(長谷川博己)は羊飼いの娘(実はパーディタ)と身分違いの恋に落ちて「羊の毛刈り祭」の最中に求愛をする。息子の相手を探る為に変装し祭りに紛れ込んでいたポリクシニーズは「父親には婚約を知らせるつもりはない」と言うフロリゼルのひと言に激怒しその場を去る。途方に暮れる二人はシチリアへ駆落ちをし・・・。
 ≪ここまで≫

 色使いは鮮やかですが、構造としてはシンプルな装置だと思います。その中をマントや裾の長いドレスなど、体が大きく見える衣裳の役者さんがさっそうと歩き、力任せになることなく、シェイクスピアの長いセリフを熱く語ります。

 長い年月を超えて、ひたすら信じること、愛すること。今日の英雄が明日には没落するような今の日本では、想像することさえも少し難しいことかもしれません。でも、それを信じる力は私自身の中にあるんだと感じることができました。

 パンフレットの蜷川さんの言葉より抜粋↓
 蜷川「『ああ、この世界は生きるに値するかもしれない』という暖かい希望が持てる芝居にしたいと思っています。」

 お言葉どおりの作品になっていると思います。観ている時、私はすごく幸せだったし、観た後も体に喜びが満ちていました。私も人間を信じたいし、信じるに足る人間になりたいと思いました。

 ここからネタバレします。

 絵本が開くように壁が現れて場面転換しました。ファンタジーの世界の扉が開き、夢物語へと入っていけます。都合よく進みすぎる脚本と言えるでしょうが、夢の中で起こることだと思えばいいんですよね。夢の中の真実を、観客それぞれが見つけ出せると思います。

 紙飛行機サイコーっ!!どうやって飛ばすのかすっごく考えちゃいました(笑)!1度目は仲良しだった頃のレオンティーズとポリクシニーズが飛ばし、2度目は年老いたポリクシニーズが1人寂しく、昔を思い出しながら飛ばし、3度目は同じく年老いたレオンティーズが、飛ばすことなく破り捨ててしまいました。飛行機が飛ぶ度に自分の中に色んな感情が起こって、無言のシーンにものすごい重みがありました。

 「あの銀色の魚は一体は何??」と思っていたら、レオンティーズとハーマイオニの息子でした(冒頭のシーンで)。いったい何のためにあんなヘンなもの(笑)を被ってるのか、最初は全然わからなかったのですが、彼が失意に沈んで死んだと発覚し、大いに納得。あれぐらいのインパクトがないと、幼い命が失われたことが伝わりにくいからなんですよね。すっごい!

 後半が始まるなり登場する“時間”が素晴らしかった!鍛えた肉体をさらした男性が、面を1枚ずつはがしていき、めくるごとに年老いていきます。直後に老いたポリクシニーズとカミロー(原康義)が登場し、16年の歳月が経ったことをスムーズに受け入れられました。

 彫刻の王妃(田中裕子)が動き出す最後のシーンは、観客も確信犯的に参加するところですよね。劇場全体で一緒に信じることができていたように感じました。そうやって観客は、見知らぬ誰かとつながることを劇場の中で体験できるのだと思います。

≪埼玉、宮城、大阪≫ "THE WINTER'S TALE"
出演:唐沢寿明、田中裕子、横田栄司、長谷川博己、藤田弓子、六平直政、瑳川哲朗、原康義、塾一久、大石継太、手塚秀彰、廣田高志、池谷のぶえ、妹尾正文、大川浩樹、岡田正、清家栄-、新川將人、鈴木豊、景山仁美、羽子田洋子、宮田幸輝、下塚恭平、高橋永江、桐山和己(子役ダブルキャスト)、坂口淳(子役ダブルキャスト)
脚本:W・シェイクスピア 演出:蜷川幸雄  翻訳:松岡和子 美術:中越司 照明:勝柴次朗 衣裳:小峰リリー 音響:井上正弘 ヘアメイク:鎌田直樹 音楽:阿部海太郎 振付:広崎うらん 演出助手:井上尊晶 舞台監督:白石英輔 主催:財団法人埼玉県芸術文化振興財団 朝日新聞社 テレビ朝日 制作:財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ 企画:彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会
【発売日】2008/10/04 S席 9,000円 A席 7,000円 B席 5,000円 ※未就学児の入場不可
http://shakespeare.eplus2.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年01月21日 21:48 | TrackBack (0)