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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年02月08日

スロウライダー『クロウズ』02/07-15 THEATER/TOPS

 山中隆次郎さんが作・演出されるスロウライダーの最終公演です。上演時間は約1時間50分。

 テレビゲーム的なB級ホラーSFの世界を具象で作り上げ、演劇らしい演出と生々しさも堪能できる快作でした。社会風刺も効かせてユーモアもたっぷり。最初から最後までそれらの“狙い”に唸らせられながら、わくわく楽しく拝見いたしました。音が鳴っただけで笑ったりも(笑)。前知識なしでご覧になると一層楽しめるのではないかと思います。

 前売3,500円のところ平日夜は3,200円とお得です。初日(前売2,500円)は早々に完売で満席でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『クロウズ
 レビューをアップしました(2009/02/09)。

 冒頭シーンからいきなりハラハラわくわくの危険世界にどっぷり!凝った音楽であざとく(笑)盛り上がりを演出する、狙いを定めたチープさがかっこいい!

 ウィルス感染者と非感染者との対立を軸に、それぞれのコミュニティ内のドラマ(家族愛、恋愛、友情、仲間割れ、差別など)にも触れながら、隔離された島での小さな戦闘をリアルに描きます。役者さんも演技は非常事態の人間の熱を表現しつつ、ちゃんと冷静さもあってとても良かったです。

 登場人物は極端に弱くて、だらしなくて、醜い人間たちばかりなのに(笑)、みんなにとても愛嬌がある。それでいて、グサっと刺さるようなブラックユーモアがあちこちに散りばめられていたのも、すごく好きでした。

 ここからネタバレします。

 健常者はゾンビ(感染者)に噛まれると、一度死んでゾンビとしてよみがえる。ゾンビは体が腐敗し切らない限り、銃で打たれても死なない。人肉がゾンビの体に良いらしく、食べたら元気になる。平和的なコミューンを形成するゾンビ集団(クロと呼ばれる)は、人道にもとることなく(ゾンビなんだけどね)、芸術創作をしながら心安らかに暮らそうとしていた。
 しかし、クロたちに防腐剤を作ってくれる元女医ウロコ(大村彩子)が、ゾンビ駆逐を企てる健常者たちによって拉致されたことから、生死を賭けた戦闘が始まる。

 ゾンビは白い顔に赤や青なども加えた“ゾンビ”メイクで、常にふらふらヨロヨロしています。ゾンビを演じる役者さんは大変そうだけど、健常者との対比が見るからに鮮やかなので面白いです。
 最初に登場したゾンビが凶暴なヤフー(芦原健介)だったので、人間(善)VSゾンビ(悪)を描くのかと思いきや、穏やかなリーダー格のゾンビ・サトル(池田ヒロユキ)らが登場して、世界は一変。ヨロヨロしたゾンビたちの日常会話が、ほんわかしていてサイコーに可笑しかった。

 ゾンビになったばかりの県職員・湊(數間優一)だけに見える過去の自分の幻(田中慎一郎)が、舞台上に登場しました。独白する幻にスポットライトが当たるのが可笑しかった。他にも、ゾンビ埋葬屋(高見靖二)らが立てこもる小屋の壁がはずれて部屋の中が見えるようになるなど、演劇ならではの“嘘”を観客も一緒になって信じて、楽しめて良かったです。
 そういえば最初の稲光の照明が効果的で、でもリアルすぎて笑ってしまいました(そこまでするか!?って・笑)。

 アート作品を創作するゾンビたち(シトミマモル&池田ヒロユキ)の拠点の名前はアジルジマ・モンパルナス。それってラパン・アジルから来てますよね(笑)。防腐剤の名前がチクロンB(Wikipedia)っていうのも・・・(苦笑)。
 サトルが作り上げた傑作の壷が、ちゃらちゃらしたセレブ女に落とされて割れるというてん末にも爆笑しました。思い通りにはならないものですよね、人生。きれいに生きるなんて不可能だ。

 最後に舞台上に残ったゾンビが湊(數間優一)とヤフー(芦原健介)だったのが微笑ましかったです。お2人が劇団員なんですよね。スロウライダーは解散だけどゾンビとして生き残ってるよ、みたいな。腐敗してすぐ死んじゃうかもしれないけど・・・(笑)。

出演:大村彩子、中川智明、岡村泰子(きこり文庫)、池田ヒロユキ(リュカ.)、星耕介、シトミマモル、高見靖二(チャリT企画)、田中慎一郎、吹田早哉佳、中川鳶、徳橋みのり(ろりえ)、奈実、芦原健介、數間優一
脚本・演出/山中隆次郎 舞台美術/田中敏恵 照明/伊藤孝(ART CORE design) 音響/中村嘉宏 音楽/山野井譲・佐藤こうじ(SugarSound) 舞台監督/西廣奏 演出肋手/田中慎一郎 駒橋誉子 メイク/篠本尚紀 宣伝美術/上田大樹(&FICTION!) Web運営/栗栖義臣 記録・映像/トリックスターフィルム グッズ製作/YogurtWear 票券/スギヤマヨウ(制作集団QuarterNote) 制作補/迫田智哉(feblabo) 制作協力/斎藤努 企画・製作/スロウライダー
【発売日】2009/01/10 前売3500円 当日3800円 初日2500円(劇団予約のみ) 平日3200円(劇団予約のみ)
http://www.slowrider.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年02月08日 11:53 | TrackBack (0)