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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年05月03日

渡辺源四郎商店『3月27日のミニラ』05/02-06ザ・スズナリ

 畑澤聖悟さんが作・演出(出演も)される渡辺源四郎商店の新作です。上演時間は短めで、約1時間20分。

 青森弁の現代劇と壮大なフィクションを当然のように融合させた、大胆な脚本・演出だったと思います。もやもやして、むずむずして、息苦しくて、最後は怖くて切なくて。観終わった後に考えることがいっぱい。一緒に観ていた人と話し合って、「そうか、そうだったのか」とうなづいたり、さらに深く考えたり・・・。

 5/4と5/5の夜公演はラジオドラマのリーディング上演が行われます。賞を受賞している作品なんですね。明日うかがう予定です。

 ⇒CoRich舞台芸術!『3月27日のミニラ

 ≪あらすじ≫
 3月27日はある中学校教員の退任式。ゴジラの息子ミニラ(工藤良平)が校長室を陣取っている。
 ≪ここまで≫

 ある中学校の一日を自然な演技で見せていきます。一見、ごく普通の日常を描く現代劇のようですが、ファンタジーだとも言える作品だと思います。

 暴力を傘に着たミニラにはもちろん、彼に徹底的に屈服する教師らにムカつき、被害者(?)の父親の仏のような優しさにもイライラし・・・。でも、今日でその場を去る立場なら、私もそうするかもしれない・・・。なるべく波風立てずに立ち去りたいですから。完全にさようならするために。

 ※開演時刻を間違えて遅刻(涙)。最初の10~15分ほど見逃したので、終演後にロビーで上演台本を購入しました。上演中の戯曲を販売してくださるのは助かります。

 ここからネタバレします。

 体長50メートルの母親ゴジラが、海からやってくる描写が面白いです。
 息子は名実ともにミニラなんですよね。怪獣ミニラとしての雄たけびが、通分(分数の計算)もできない中学2年生男子の心の叫びと重なります。
 人は嫌いな人から離れるし、いやな場所からは逃げ出すし。とても自然なことだと思います。チラシの花束はfarewellの意味なんですね・・・つらい。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:畑澤聖悟 本広克行(映画監督) 司会:工藤千夏

 本広さんは「ゴジラ」のファンクラブに入ってらっしゃるそうです。畑澤さんは本広さん以上に「ゴジラ」についての豆知識があるようで(笑)、お2人のゴジラ・トークは聞き応えがありました。
 セリフや設定に「ゴジラ」へのオマージュが捧げられているんですね。オマージュというよりはリスペクトかも?どちらにせよ、細かい部分までこだわりぬいた戯曲であることはわかりました。

 校長室にたった一人残されたミニラは、最後にタバコを吸います(あんなに「吸ってない」って言ってたくせに)。煙を吐く様子は、口から光線を吐くミニラを表しているんですね。トークを聞いてわかりました。

 畑澤さんは現役の高校教師でいらっしゃるので、学校の現状はよくおわかりなのだと思います。もちろんモンスターピアレンツとも交流もされているのでしょう。「教師はそこまで保護者にヘコヘコしなきゃいけないの?」「そんなに大勢の教員が一度に異動するの?」といった疑問は沸くのですが、現実に沿ったことなのでしょうね。

≪青森、東京、秋田≫
出演:工藤由佳子 工藤静香 高坂明生 山上由美子 工藤良平 ささきまこと 柿崎彩香 工藤貴樹 宮越昭司 牧野慶一(劇団雪の会)
脚本・演出:畑澤聖悟 照明:浅沼昌弘 音響:藤平美保子 舞台美術:山下昇平 装置:萱森由介 舞台監督:三上晴佳 プロデュース:佐藤誠 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:木村正幸 制作:渡辺源四郎商店 制作補:西後知春、おりゅう、秋庭里美
【発売日】2009/04/01 一般前売 3,000円 学生前売 2,000円 一般当日 3,300円 学生当日 2,300円
http://xbb.jp/wgs/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年05月03日 22:47 | TrackBack (0)