REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2009年05月16日

【写真レポート】流山児★事務所『ブロードウェイ・ミュージカル「ユーリンタウン」』囲み取材&稽古場見学』05/14座・高円寺稽古場

urinetown_maincasts_thumb.JPG
流山児祥さんとメインキャストの皆さん

 25周年を迎えた流山児★事務所が、杉並区に新しく出来た公立劇場、座・高円寺のオープニング企画としてブロードウェイ・ミュージカル「ユーリンタウン」を上演します。
 公演期間は2009年5/29~6/28。上演時間は休憩込みで約2時間40分の予定。

 新しくてきれいな稽古場で一幕最後のクライマックスのシーンを拝見し、演出の流山児祥さんとメイン・キャストの方々にお話を伺いました。声優でもあり、「ミュージカル・テニスの王子様」の作詞家としても有名な、三ツ矢雄二さんも大いに語ってくださいました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ブロードウェイ・ミュージカル「ユーリンタウン」

1urinetown_poster.JPG
「ユーリンタウン」ポスター

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部引用。
 舞台は、地球上の干ばつにより、節水を余儀なくされた近未来のある街。誰もが有料公衆トイレの使用を義務付けられていた。“立ちション”などをすると警官ロックストックらに逮捕され、誰もが恐れている「ユーリンタウン」に送り込まれることになっている。全てのトイレを管理しているのはUGC社。この法律はUGC社長クラッドウェルが賄賂で作り上げたもの。
 貧民街では今朝も、金がなくてトイレを使用できないホームレス達が大騒ぎ。しかし管理人ペニーは容赦がない。そんななか、ペニーの助手ボビーの父親が“立ちション”をし、「ユーリンタウン」に送られてしまう。ボビーは失意の中、美しい娘ホープに出会い、自分が今何をすべきかに気づく。それは自由を求めて「革命」を起こすこと。街は大混乱。ボビーがついにクラッドウェルらと対峙した時、ホープが彼の愛娘だと知る・・・そして?
 ≪ここまで≫

 ■『ユーリンタウン』の舞台は近未来の貧民街。同時に現代日本でもある。

 流山児「舞台は近未来のニューヨークと思わしき場所の、貧乏な人が住んでいる街(『ユーリンタウン』は日本語で“ションベン街”)。でも高円寺という地名も出てきますし、麻生、中川、小沢といった実在する日本の政治家から名前をとった人物も登場しますので、今の日本とも言えます。」
 稽古場写真:一幕最後のシーンより↓
2urinetown_rehearsal.JPG

 流山児「ユーリンタウンという深刻な水不足に見舞われる街で、警察国家、格差社会といった現代日本に通じる様々なテーマを描く、坂手洋二さんらしい台本です。原作を少々逸脱する部分もありますが、言葉は新しいし、聴きやすい日本語で書かれています。ブロードウェイ版より面白いと思いますよ。」

 ■個性派キャストが勢ぞろいの異種格闘技ミュージカル

 流山児「出演者は役者48人に生バンドを加えると、合計52人の大所帯です。ミュージカル畑と小劇場界の役者がほぼ半々の、奇妙な集団ですね(笑)。」
 三ツ矢「何かやりたい人ばっかり!それも“記号”じゃなくて“役”になりたい人たちです。稽古場に珍しい生き物がいっぱい(笑)。」

 三ツ矢「ミュージカルでは最初に歌を歌い込んで、それから演技に入るのですが、今回は演技から始まりました。まず役者の個性があって、音楽がそれを追いかける形です。セリフを歌に変える、つまりセリフにメロディが載っている。こんな作り方は初めてですね。
 一般的にミュージカルでは音楽がシーンをつくりますが、この作品の場合はキャラクターがシーンをつくる。役者は、自分が演じる役で歌います。役を作って、役をとおして歌にするのです。人となりや、人との関わりで見せていくんですね。画期的だと思います。
 もともとの楽曲は、和音が高度な上に色んなタイプの音楽が揃っています。そして今回は出演者の人数が原作の3倍以上なんです。だからコーラスが凝っている。その分、ソロ・パートはがんばらないいけないんですが、役者の迫力がプラスアルファになっていると思います。」 ↓写真提供:流山児★事務所
urinetown_stage1.JPG

 ■生々しく、そこに人間たちが居る舞台にしたい

 流山児「原作はブレヒトの『三文オペラ』を題材にした、小さな劇場で生まれたミュージカルです。それがオフ・ブロードウェイ、ブロードウェイと進出していった。坂手さんの台本で小ネタやセリフは増えていますが、原作の構成はそのままです。音楽のアレンジも特にしていません。ただ、ヒーロー・ヒロイン以外の人物造形を深めて、役者の物語を足せればいいと思っています。」

 流山児「舞台とは“現在、今、ここ”であること。演劇とは、人とのぶつかりであると同時に、歴史、社会、地球とのぶつかりでもある。個人の話が社会とつながっていることを表したい。生々しく、そこに人間たちが居る舞台にしたい。稽古場で毎日間違って、色々事件を起こして、試行錯誤しながら作っていきたいです。」↓写真提供:流山児★事務所
urinetown_stage2.JPG

 ■オーディションで選ばれた主役の2人について

 流山児「主役2人は完全公募のオーディションから選ばれました(2人とも募集チラシを見て応募)。
 ボビー役の遠山悠介君はオーディションに坊主頭でやってきたんです。それがイメージにぴったり合った。彼は見た感じがいわゆる“草食系男子”でしょう(笑)。そんな彼が舞台で“肉食”に変わった時にどうなるのかを観ていただきたい。ホープ役の関谷春子さんは歌も踊りも素晴らしい。何でも吸収して、すぐにやれる。その場の対応が早いですね。」
 遠山悠介さん(中央)と関谷春子さん(右端)↓
3urinetown_bobby_hope.JPG

 ■座・高円寺は演出家が集まる広場

 流山児「訳詞・歌唱指導をやっている浅井さやかさんは、20代のとても優秀な方。公演中の土日に開催する『ユーリンタウン祭』の演出を手がけるのは、地下空港という劇団の演出家・伊藤靖朗君です。座・高円寺を若い演出家がフラっと来られる場所にして、次の時代にバトンタッチしていきたい。」

 座・高円寺の外観↓ 小さくて丸い窓が可愛い!
5the_koenji_outside.JPG

 座・高円寺エントランス奥のマーケット↓ 土日はもっとにぎわっているそうです。
6the_koenji_1st_floor.JPG

 取材終了後に、劇場内のレストラン“カフェ アンリ・ファーブル”でお茶をいただきました。おしゃれで心地よいお店でした。座・高円寺はその名のとおり、高円寺の町と地元の方々との交流を広げる劇場になってくれそうです。
 『化粧 二幕』に続いて開幕する『ユーリンタウン』、そして『ユーリンタウン祭』が、さらに活発な人と人との“ぶつかり”を生み出してくれることを期待します。

流山児★事務所創立25周年記念公演スペシャル「ユーリンタウン―URINETOWN The Musical-」
【出演】千葉哲也・曾我泰久・伊藤弘子・関谷春子(ホープ)・遠山悠介(ボビー)・栗原茂・石橋祐・坂井香奈美・植野葉子・有希九美・木内尚・横須賀智美・上田和弘・小林七緒・里美和彦・平野直美・木暮拓矢・武田智弘・諏訪創・阿萬由美・鈴木麻理・山下直哉・・青葉みちる・秋葉ヨリエ[燐光群]・石本径代・井上裕朗・井村タカオ[オペラシアターこんにゃく座]・奥山隆[オフィス3○○]・菊池祐美子・鈴木啓司[劇団銅鑼]・清水泰雄・滝香織・鄭光誠[新宿芸能社]・中山圭[イッツフォーリーズ]・箱田好子[劇団昴]・平野トン子・舩山智香子・松井亜紗美・茉莉以・森加織・横山央[江戸糸あやつり人形座]・渡邊亮・稲増文・大久保鷹・三ツ矢雄二・塩野谷正幸 【演奏】Reed:小藤田康弘 Tuba:古本大志 Drums:萱谷亮一 Piano:荻野清子
【脚本・詞】グレッグ・コティス 【音楽・詞】マーク・ホルマン 【翻訳】吉原豊司 【台本】坂手洋二 【演出】流山児祥【音楽監督】荻野清子 【訳詞・演出補】浅井さやか 【振付】北村真実【殺陣】岡本隆【美術】水谷雄司 【照明】沖野隆一 【音響】島猛 【映像】濱島将裕 【衣裳】胡桃澤真理 【舞台監督】廣瀬次郎 【演出助手】畝部七歩 【ユーリンタウン祭り演出】伊藤靖朗 【宣伝美術】アマノテンガイ 【制作】岡島哲也 米山恭子 【制作協力】ネルケブレインズアンドハーツ 【提携】座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク 【主催】流山児★事務所
全席指定 一般:4,500円  学生割引:3,000円 Ryu'sClub会員:3,600円
http://www.ryuzanji.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2009年05月16日 20:15 | TrackBack (1)