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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年11月06日

フェスティバル/トーキョー09秋・サンプル『あの人の世界』11/06-15東京芸術劇場 小ホール1

 F/T09秋のラインアップがぞくぞくと開幕する11月。維新派に続いて、松井周さんが作・演出される劇団サンプルの新作『あの人の世界』の初日を拝見しました。上演時間は約1時間45分。

 間違いなく日本(東京)の最先鋭の現代演劇でしょう。浮かんでいるようでいて、実は地面の下に埋めらてれるような、息苦しいんだか解放されたんだかわからない、非常に奇妙で、強烈な感覚でした。刺激の強い表現が軽いトラウマになる人もいるかも(笑)。推奨年齢があるとすれば、R25から30ぐらいじゃないでしょか。私は満腹だし、満足です。

 ⇒CoRich舞台芸術!『あの人の世界
 レビューは後ほどアップ予定。トークの覚書をアップ。

 ≪あらすじ≫ 劇団公式サイトより
 その場所を二人の者が占めるわけにはいかない。
 だから男は家を出た。

 耳に息を吹き込まれた。
 その心地よさを味わいたくて、女は都会にやってきた。

 ゆりかごから墓場まで。墓場からゆりかごまで。
 私たちは常にサインを受けとりながら進む。
 ネズミの死骸、朝の光、エアコンの音、誰かのまばたき、ゴムの感触、
 おばあちゃんの思い出等々…
 正しいか正しくないかは問題じゃない。
 鮮度が頼り。

 つまりは出会いの話です。
 ≪ここまで≫ 


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:松井周 松本雄吉(維新派) 司会:相馬千秋

 松本「虚構性が強すぎて私にはほとんど(意味が)わからなかったんですが(笑)、この芝居は現代の演劇だ、現代演劇だと頭に浮かんだ。」
 松本「演出術、俳優術がある。役者さんがしっかりしている。虚構性を支える、発話、発語、歩き方がある。昔風に言うと、成り立ちにくいシュールを無理やり成り立たせる力がある。演出力ももちろんあるけれど、役者の質だと思った。」

 松井「自分は青年団で現代口語演劇を10年ぐらいやってきたのもあってか、虚構性の強いものをやりたいという気持ちがあった。宝塚劇場で8年間アルバイトしていた経験があり、宝塚のあの虚構性(書割の中で王子とプリンセスがいたり、背中に羽をつけて登場したり)を、身に付けた振りをする人たちの痛い様をつくりたい。」

 松本「松井さんの世代は、狭い空間(=劇場)で、都市論を踏まえてジタバタするのを、実感を持って作っている。自分にはできないから、うらやましいことだ。」
 松井「松本さんはノスタルジーをテーマにされることが多いと思うのですが、僕にはそれがうらやましいです。僕の中でのノスタルジーは例えばこのイスのように無機質なもの。喪失したとしか思えない。」

 松本「床の音が特殊。例えばシュシュシュという衣ずれの音とか。ドーン!という大きな音も(布の上から叩くので)どこか曇っている。そんな淡~い、オブラートがかかったような現実のありようが、松井さんの世代の演劇のベースなのではないか。世代の質感なのではないかと感じた。」
 松井「例えばこの装置の床の白い布は、皮だとも受け取れる。表面に触ることを基本にしつつ、実際には起こっていないでっち上げの記憶を使って、役作りをしている。」

 松井「最初は三層構造の装置にしようと考えたが、戯曲が三層に分かれていないので、あえて高さが限定されない形にした。」
 松本「舞台に上下(かみしも)だけじゃなく、天があることに可能性を感じる。しかも天にいる人たちが賢くない(笑)。」
 松井「天から降りてきちゃいますしね(笑)。」

あの人の世界/That Man's World
【出演】上の男:古舘寛治(サンプル・青年団) 上の女:石橋志保(中野成樹+フランケンズ) 放浪する男:田中佑弥(中野成樹+フランケンズ) 踊りたい女:深谷由梨香(柿喰う客) ビラ配り:芝博文 映像の姉:辻美奈子(サンプル・青年団) ホームレスドクター(HLD):古屋隆太(サンプル・青年団) ネズミ:奥田洋平(青年団) 動物:渡辺香奈(青年団) ウサギ:善積元 嫁:山崎ルキノ(チェルフィッチュ) 姑:羽場睦子
脚本・演出:松井周 舞台美術/杉山至+鴉屋 照明/松本大介(enjin-light) 音響/中村嘉宏、小宮聖子 衣装/小松陽佳留(une chrysantheme) 舞台監督/寅川英司+鴉屋、山下翼 舞台監督助手/佐藤恵 演出助手・サンプルWEB/牧内彰 ドラマターグ/野村政之 宣伝美術協力/京 宣伝写真/momoko japan 制作/三好佐智子、藤田晶久、三橋由佳 製作/サンプル・(有)quinada(キナダ) 共催/東京芸術劇場 (財団法人 東京歴史文化財団) 助成:財団法人セソン文化財団 共同製作・主催/フェスティバル/トーキョー
【F/Tスタッフ】制作:武田知也 板橋園恵 インターン:荒川真由子
【F/Tクルー】青木圭一郎 青柳未央 朝倉祐莉絵 大塚菜摘 金子穣為 小林寛斉 近藤美恵子 佐伯朋子 笹川麻紀子 野中さやか 早坂彩 山本湖希
【休演日】11/9【発売日】2009/09/05全席自由(整理番号付)一般:3,500円 学生:3,000円 高校生以下:1,000円
http://festival-tokyo.jp/program/sample/
http://www.geocities.jp/sample_2007jp/yotei.htm

Posted by shinobu at 2009年11月06日 23:17 | TrackBack (0)