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2009年02月06日

ピーピング・トム『Le Sous Sol/土の下』02/05-07世田谷パブリックシアター

 ピーピング・トムはベルギーのコンテンポラリー・ダンス・カンパニーです。「凄いらしい」という噂を耳にして、急遽前日夜に当日券を買って伺いました。⇒TICKETS@TOKYO

 3階席だったので、作品の概要(外郭)はわかったけれど詳細は味わえなかった気がします。でも外郭だけでも刺激的で面白かった。上演時間は約1時間10分。タイトルの日本語読みは『ル・ス・ソル』。

 ⇒プロモーション映像
 ⇒CoRich舞台芸術!『Le Sous Sol/土の下

 ダンス作品だけど踊りだけじゃなくて、演出が雄弁です。セリフや歌もあります。土の上で激しく踊る振付は示唆に富み、技術の面でもあっと驚くものでした。官能的で、残酷で、とてもユーモラス。

 鑑賞後に知人と感想を話し合ったら、それぞれに受け取るものが違っていてすごく面白かったです。でも生、性、死は全員にしっかり伝わっていたみたい。

 ここからネタバレします。

 土に埋もれた部屋。ソファやテーブルの足が土で見えない。2階は外。地面があって木が生えているので、どうやら1階は地下室らしい。老婆がお別れのキスを受けている。白衣の看護士らしき女性もいる。となると、ここは病院?それも終末医療の気配。三途の川を渡る直前かしら。

 若い女1人と若い男2人が踊るのを、老婆と歌う女(看護士みたいな)が見守る。股間をセックス中のようにひっつけて、頬もひっつけて、そのままぐるぐると回転して踊り続ける。これが凄かった。

 老婆が人生を振り返り、最後は再び赤ん坊になって生まれ変わる?

≪東京、岐阜、長野、兵庫≫ Peeping Tom "Le Sous Sol"
ピーピング・トム:ガブリエラ・カリーソ(振付家・ダンサー)/フランク・シャルティエ(振付家・ダンサー)/サミュエル・ルフーヴル(振付家・ダンサー)/マリア・オタル(俳優・ダンサー)/ユルディケ・デ・ブール(メゾ・ソプラノ歌手)
出演:ピーピング・トム 角田玲子、小林安守 ●玉勲 鶴田よし子 水上芙佐子 渡辺洋子
演出:ピーピング・トム 主催:財団法人せたがや文化財団 [企画・制作]世田谷パブリックシアター
【発売日】2008/11/23 全席指定 一般:5,000円 TSSS:2,500円 ペアチケット:9,000円 友の会会員割引:4,500円 世田谷区民割引:4,700円
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/02/le_sous_sol.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:22 | TrackBack

メジャーリーグ『ちっちゃなエイヨルフ』02/04-15あうるすぽっと

 大好評だった『野鴨』につづき、庭劇団ペニノのタニノクロウさんがイプセン戯曲を演出されます。稽古場レポートを書かせていただきました。

 勝村政信さん、とよた真帆さんら少数精鋭の豪華キャストによる、シンプルながら非常に濃密な会話劇でした。役者さんが1対1で向き合い、心のすみずみまで開けっぴろげにして戦う様をつぶさに見つめた、充実の約2時間5分。素晴らしかったです。

 ⇒稽古場レポート
 ⇒CoRich舞台芸術!『ちっちゃなエイヨルフ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部抜粋。(役者名を追加)。
 ノルウェーの片田舎。
 この町の有力者の娘リタ(とよた真帆)と学校の教員でもあり、作家でもあるアルメルス(勝村政信)には、足がビッコの9歳の息子エイヨルフ(星野亜門or田中冴樹)がいる。2人は、息子の家庭教師を、アルメルスの腹違いの妹アスタ(馬渕英俚可)に頼んでいる。また、このアスタの事を好きな近所の土木技師ボルクハイム(野間口徹)は、アスタに会うため、よくこの家に顔を出す。
 ある日、鼠ばあさんなる、ネズミ駆除を請け負う老婆(マメ山田)が、「厄介ものはいないか、厄介ものは、あたしが駆除してさしあげよう。」と、この一家を訪れる。一家は気味悪がるが、エイヨルフは、まるでハーメルンの笛吹きのように、この老婆について行き、海でおぼれ死んでしまう。
 かくして、このドラマは、ベールがはがされ、一気にそれぞれの内面が露出していく。
 ≪ここまで≫

 最初は、気持ちを素直に吐露する簡潔なセリフと、役者さんの緻密で無理のない演技を頼りに、登場人物それぞれの性格や生活背景などを頭に入れていきました。そしてある事件が起こって以降は、真正面からぶつかり合い、激しく揺れ動く4人の男女それぞれの気持ちを目の当たりにし、涙がほろほろと流れっぱなし。

 イプセンって凄いと思いました。そして今さらですが、演劇って素晴らしいと思いました。戯曲は今生きている人間が読み、心と体を動かすことで、はじめてその本来の姿を現します。つまり演劇は、上演されなければその真実の姿をつかめない、とても贅沢で、正直な芸術だと思います。
 『ちっちゃなエイヨルフ』(1895年初演)をとにかく読んで、読んで、穴が開くほど読んで、舞台化してくださったことに感謝します。100年以上前に書かれたイプセンの言葉を、借り物じゃなく、コピーじゃなく、本物として味わえたように感じました。

 わがまま放題の少女のようなとよた真帆さんに、すっかり見とれてしまいました。自然で飾らないたたずまいが魅力的。
 勝村政信さん演じるアルフレッドは、堂々としているし賢そうなのに、言動・行動を見てみると相当なダメ男(笑)。とても人間らしいと思いました。
 馬渕英俚可さんはずっと心が開いているように見えます(私だけかもしれませんが)。無防備で勇敢な、か細い身体が美しい。
 野間口さん演じるボルクハイムは、最初はいかにも部外者のふてぶてしさがあり、徐々にアルメルス一家の中へと入っていくのが面白かったです。

 ここからネタバレします。

 馬渕英俚可さんと野間口徹さんの、プラトニックながらも激しい(心の)ラブシーンが素敵。見つめ合う2人。どちらも妥協しない。

 変化の法則から逃れられない人間。でも、それは「人間は変化することができる」という意味でもありますよね。ちっちゃなエイヨルフの死が意味のあるものになって、大きく見開いた目が慰められますように。

出演:勝村政信、とよた真帆、野間口徹、馬渕英俚可、マメ山田、星野亜門(Wキャスト)、田中冴樹(Wキャスト) ※星野亜門さんの回を拝見。
作:ヘンリック・イプセン 上演台本・プロデューサー:笹部博司 演出:タニノクロウ(庭劇団ペニノ) 美術:朝倉摂 照明:山口暁(あかり組) 音響:天野高志(OFFICE my on) ピアノ演奏:天野高志 衣裳:友好まり子 ヘアメイク:武井優子 演出助手:伊藤栄之進 舞台監督:加藤保浩 宣伝写真:園田昭彦 宣伝美術:采澤聰 営業:大島佳奈(メジャーリーグ) 制作:千葉裕子(る・ひまわり)プロデューサー:笹部博司 共催:(財)としま未来文化財団 主催:メジャーリーグ 
【発売日】2008/10/25 全席指定 6,500円(税込み) *未就学児童のご入場はご遠慮下さい。
http://www.majorleague.co.jp/stage/eyolf/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:07 | TrackBack