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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年01月11日

tpt『キレイじゃなきゃいけないワケ』12/29-01/17ザムザ阿佐ヶ谷

 TPTで千葉哲也さんが演出されるのはこれが3作目(過去レビュー⇒)。アメリカ人劇作家ニール・ラビュートさんの戯曲は、TPTでこれまでに2度上演されています(⇒)。今回は約2時間の若者男女4人芝居。演出がとても良かったです。

 客席に土足で入れて、しかも指定席!あの和風空間・ザムザ阿佐ヶ谷が、完全にTPT的ブラックボックスになっていました。衣裳も美術もスタイリッシュだし、パンフレットも今までどおり販売されていました。会場変われどもTPTの美意識変わらず、というところが素敵。

 ⇒stagewebに千葉哲也さんのインタビュー動画あり!
 ⇒CoRich舞台芸術!『キレイじゃなきゃいけないワケ

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 彼が彼女の容姿について何気なく口にしたひと言から、友達カップルまでも巻き込んだとんでもない戦争がはじまった。
 2008年オフ・ブロードウェイ初演後、2009年4月ブロード・ウェイに殴り込み。“明晰で夢中にさせる”(Time Out)“新鮮で光彩を放つ対話にあふれたラブ・ストーリー”(NY Times)など絶賛の嵐を呼び、トニー賞ベストプレイにノミネート.いまアメリカでもっともエッジーなライターによる‘顔’についてのブラック・コメディー。
 そして、もういい加減大人になりたいあなたのためのラブ・ストーリー。
 ≪ここまで≫

 セリフの多い4人芝居で、1対1のバトルがとても激しいです。若い役者さんが膨大なセリフを体当たりでぶつけ合います。さらに1人ずつに長い独白の場面もあって、役者さんの身体や感情そのものをむき出しにして勝負させているところが、潔くてかっこいい演出でした。ボクシングの試合で鳴るゴングのような音が、場面転換の時に響くのがまた効果的。※ジリジリリーン!というベルのような、またはブー!!というブザーのような大きな音だったんですが、意味合い的にゴングのように感じていました。

 ただ、どうしても翻訳の壁が高く、お話には入って行けず・・・。役者さんがライブ感を大事にして、自分をさらけだして存在しようとしているので(←そこは素晴らしいと思います)、余計に日本語と英語のかみ合わなさが目立ってしまっていたように思います。

 ここからネタバレします。

 若い女の子が卑猥な言葉を連呼するのが面白いんでしょうけど、体に入ってこなかったです。例えば「ケツの穴」って連発するんですが、それってつまり「asshole」の直訳ですよね。日本人はケンカをしても「ケツの穴」とは絶対に言いません。言うとしたら「バカ」「アホ」「ボケ」「まぬけ」とかじゃないでしょうか。そういう日本語の悪口には卑猥な意味合いがないので、翻訳するのが不可能なのかもしれませんよね。できれば他の方法を取ってほしかったなぁ・・・。

 翻訳劇をずっと上演してこられた団体には「翻訳劇はこういうものだ」という常識のようなものがあるのかもしれませんが、新しい観客には伝わらないんじゃないかと思います。千葉さんの演出が今の時代に合ったものだから、そのギャップが気になったのかも・・・と思ったり。

 新しい恋人ができたステッフ(河合杏奈)がどんどん上品に、きれいになっていくのが良かった。山田ジルソンさんのマッチョでバカな浮気者の演技にはリアリティが感じられました。

TPT73
出演:L=奥山滋樹/河合杏奈/山田ジルソン/濱崎茜  V=藤沢大悟/高畑こと美/山田ジルソン/濱崎茜
私が観たのはLキャストの初日。
作◎ニール・ラビュート 訳◎広田敦郎 演出◎千葉哲也 装置◎石原 敬 照明◎笠原俊幸 衣裳◎原まさみ 音響◎藤平美保子 ヘア&メイクアップ◎鎌田直樹 舞台監督◎白石英輔/村田明
平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
11/21(土)チケット発売 全席指定 一般¥4,500 学生¥3,000(TPTのみ取扱い)
http://www.tpt.co.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年01月11日 17:31 | TrackBack (0)