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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年04月01日

ペンギンプルペイルパイルズ『謝罪の罪』03/19-04/04ザ・スズナリ

 倉持裕さんが作・演出を手掛けるペンギンプルペイルパイルズの結成十周年記念公演です。キャストは客演なしで、所属俳優5人のみ。劇団員6人の似顔絵が描かれたチラシもいいですよね。

 すごく面白かったです!幕開けからガンガン笑わせていただき、じわじわと高まってきて背筋がゾっとする恐怖も味わえました。美術、照明、音響、衣装もさすがの質の高さ。粋で贅沢な小劇場演劇を存分に楽しませていただきました。今週末で公演終了なんですね、もっと早く観に行けばよかった~!上演時間は約1時間40分。

 十周年記念のパンフレット(1300円)も購入しました。かなり面白そう♪

 ⇒げきぴあ「ペンギンプルペイルパイルズ
 ⇒CoRich舞台芸術!『謝罪の罪

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 その男(小林高鹿)は、会議中に後輩を殴った罪で、社内の倉庫に閉じ込められていた。暖和な彼の暴力に周囲は唖然としたが、一番驚いたのは本人だった。まさか手が出るとは思わなかった……いい歳をして、いまだに自分を制御できないとは未熟としか言いようがない……。男は深く反省し、この拘束が解かれたら真っ先に後輩に謝ろうと誓った。ところが時が経つにつれ、男を鉄拳制裁に駆り立てた≪本人も知らない事情≫が次々と明らかになっていく……
 ≪ここまで≫

 ダンボール箱や机などの家具や小道具はリアルだけれど、倉庫の壁やドア、窓枠、そして外にある木もすべて青緑色に統一されており、フィクション(虚構)性の高い空間になっています。登場するのはいわゆる会社員らしいスーツ姿の人々ですが、なぜか全員の足元が白いペンキで汚れているのです。それも装置と同じく演劇的な虚構ですよね。

 笑いにさらに笑いを重ねて空気が温まってきたところで、スピードを緩めずに怒りから恐怖へと突き進んでいきます。演技でぐいぐいと引っ張っていく、演劇ならではの力強さを感じました。倉持さん、そして舞台上の役者さんたちの手の上で転がされるように、すっかり前のめりになってお芝居を楽しみました。

 自分で自分自身のことがわからなくなってくる恐怖と滑稽さが描かれていたように思います。その原因は自分、他人、環境などさまざまです。でも自分を取り戻せるのは自分だけなのだろうと思いました。

 ここからネタバレします。

 始まった途端、窓の外にある木が風に吹かれて揺れて、木の葉がいかにも“作為的に”下手から上手へと飛んでいきました。それだけですっかり楽しい気分になってしまいました。『審判員は来なかった』の時もそうだったな~。
 閉じ込められた男(小林高鹿)と上司(玉置孝匡)の最初の会話で、何度も何度も笑わせていただきました。

 男は顔を白く塗られていきます。彼が徐々に自分のことを信じられなくなっていく(自分が自分でなくなっていく)のがよく表れていましたし、もしかしたらあの白い顔の人物は私(観客)自身のことかもしれない、とも受け取れました。そのおかげで恐怖が増しました。
 倉庫の外の足音にエコーがかかることで、何やら長い回廊があるような気がしてきます。小さな机を挟んでめがねをかけた後輩(近藤フク)が男に質問攻めをする場面は、まるで取調室のよう。照明も微妙に変化して、不穏な空気を作っていたように思います。

 殴られた後輩(吉川純広)は、「先輩(小林高鹿)は僕に謝ることで、ますますポイントを上げるのだから、僕に勝ち目はない」という、意味がわかりづらいことを言います(セリフは不正確)。素直に謝ることすら、何かのパフォーマンスだととらえているんですよね。記者会見で深々と頭をさげるスーツ姿の男性たち(経営者とか)の絵がよぎりました。

 男は結局後輩に謝らず、なんと、また殴ってしまいます。誰もが驚いて彼を見つめる中、男は濡れたタオルで顔をゴシゴシと拭いて、白塗りから普通の顔に戻ります。「ムカついたから殴った」でいいんでしょうね。理由なんてわからなくても。自分を見張る誰か(=自分)のために、常に自分の行動がパフォーマンスになるなんて、地獄。自信に満ちた小林さんのお顔がすがすがしかったです。

ペンギンプルペイルパイルズ#15 結成十周年記念公演
【出演】遠藤:小林高鹿 白井:ぼくもとさきこ 熊田:玉置孝匡 野村:近藤フク(近藤智行改め) 滝沢:吉川純広
脚本・演出:倉持裕 舞台監督:橋本加奈子(SING KEN KEN) 舞台美術:中根聡子 照明:清水利恭(日高照明) 音響:高塩顕 衣裳:今村あずさ(SING KEN KEN) 音楽:田中馨(SAKEROCK) ヘアメイク:栗原由佳 演出部:金子晴美 越野ありさ 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 記録スチール:引地信彦 宣伝美術:坂村健次(C2design) 宣伝写真:引地信彦 宣伝イラスト(人物):常田朝子 宣伝イラスト(ロゴ):倉持裕 制作助手:鈴木ちなを 制作:土井さや佳 制作協力:Little giants 協力:クリオネ、ダックスープ、ヘリンボーン 企画・製作・お問い合わせ:ペンギンプルペイルパイルズ
【休演日】3月23日(火)、3月29日(月)【発売日】2010/02/13 指定席:前売4,500円/当日4,800円 自由席(整理番号付): ・ベンチシート:前売3,500円/当日3,800円 ・最前列桟敷:前売3,000円/当日3,300円
http://www.penguinppp.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年04月01日 23:04 | TrackBack (0)