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2010年07月22日

【写真レポート】新国立劇場演劇「『ヘッダ・ガーブレル』制作発表」07/13新国立劇場Aスタジオ

 新国立劇場演劇部門の芸術監督は渡辺浩子さん、栗山民也さん、鵜山仁さんと続いて、2010年9月から宮田慶子さんへとバトンタッチします。
 「JAPAN MEETS・・・─現代劇の系譜をひもとく─」というテーマを掲げた新シーズン第1作目は、宮田さんご自身が演出を手掛ける『ヘッダ・ガーブレル』。タイトル・ロールには新国立劇場初登場となる大地真央さんを迎えました。

 『ヘッダ…』はイプセンの有名な古典戯曲ですが、翻訳の在り方をあらためて探り直し、日本では最近耳にするようになったドラマトゥルグを企画段階から参加させるなど、新芸術監督のチャレンジする姿勢を打ち出した製作発表でした。
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 「マンスリー・プロジェクト」(入場無料・事前申込み必要)にも注目ですね。「シェイクスピア大学校」は大好評だったようですので、気になった方は早めに日程をチェックしてください。

 ●新国立劇場演劇『ヘッダ・ガーブレル』 ⇒公式サイト
  公演期間:2010年9月17日(金)~10月11日(月・祝)
  会場:新国立劇場小劇場 THE PIT
  チケットは7/19(月・祝)より発売中!
   A席6,300円 B席3,150円
   「JAPAN MEETS…Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」特別割引通し券16,500円(正価18,900円)あり
   ⇒CoRich舞台芸術!『ヘッダ・ガーブレル

■芸術監督より挨拶

【宮田慶子さん(芸術監督・『ヘッダ・ガーブレル』演出)】

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演劇部門芸術監督

 宮田「いよいよ2010年9月より芸術監督の仕事を始めさせていただきます。最初のシーズンテーマは『JAPAN MEETS…~現代劇の系譜をひもとく~』。日本の演劇界がこれまでに出会って刺激を受けてきた海外戯曲の中で、大きな分岐点の役割を果たしてくれた作品たちを取り上げます。近代劇から百数十年の蓄積を積み上げた今の私たちがもう一度挑戦することで、これまで積み重ねてきたもの、そしてこれから先の未来につないでいくべきものを検証したい。それがこのシリーズの目的です。

 第一作目は『ヘッダ・ガーブレル』。ノルウェーの世界的な大作家イプセンが120年前に書いた戯曲です。イプセンの数多くの著作の中では、晩年の『人形の家』『野鴨』『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』等が有名ですが、『ヘッダ・ガーブレル』は人間の心のさまを非常に生き生きと、明確に描き出した心理劇としてイプセンの代表作の1つとされています。

 人間はとても複雑で、野望、欲望、愛情など、一筋縄ではいかない色んな感情がこんがらがった形で生きている。61歳になったイプセンが、その面白さにもう一度目覚めた作品なのではないかと、私は思っています。
 この強力な作品を過去ではなく現代の劇として生き生きとよみがえらせるために、舞台の上で存在感を発揮される俳優の方々に、何としてでも出演していただきたいとお願いしました。こちらの皆さんです。」


■俳優紹介

【大地真央さん(ヘッダ・ガーブレル役)】
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 大地「初めての新国立劇場で、初めて共演する方がほとんどの中、初めての演じる役どころが、(かの有名な)ヘッダ・ガーブレル。宮田先生が芸術監督になった第一作目にお声をかけてくださったことをとても嬉しく思い、責任も感じておりますが、こういう緊張感はいい結果を生むであろうと信じています。
 ヘッダはすごく難しい役です。読めば読むほど難しくて面白くて、“こういう女性だ”と断言したくないぐらい振り幅が広い、奥深い人物だと思います。1890年に書かれたものですが、共感していただける部分、摩訶不思議な部分も含めて作り上げたい。皆さんと一生懸命お稽古を積み重ねながら、21世紀のヘッダ・ガーブレルを作っていきたいと思っています。」

【益岡徹さん(ヘッダの夫:イェルゲン・テスマン役)】
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 益岡「新訳が素晴らしいのもあると思いますが、『ヘッダ・ガーブレル』は日常的に話が進む中で、できれば目にしたくなかった人間の裏側や毒のようなものが非常によく書けていると思いました。今までは遠くにそびえる山のようであったイプセン作品ですが、なんとか自力で取り付きたい。稽古が始まる前の時間も大事にしたいと思っております。」

【七瀬なつみさん(ヘッダの友人:エルヴステード夫人役)】
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 七瀬「イプセンの作品は勝手に難解なのではないかと思ってきましたが、この数年間で何作か観たり読んだりしたところ、すごく面白かったんです。静かに会話が進んでいるようで、実はその中にうごめく激しいもの、毒のあるものが見え隠れします。戯曲を読んでいた時にちょうどお声掛けいただき、ご縁を感じています。とても素敵な人たちとご一緒できて緊張もありますが、楽しみにしております。」

【田島令子さん(テスマンを育てたおば:ユリアネ・テスマン夫人)】
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 田島「台本がとても読みやすくて、面白くて。そういう台本をやるのは大変だな、読むだけで完結したら困っちゃうなと思いました(笑)。それぐらい面白く読ませていただいたんです。演出の宮田さんとは3度ほどご一緒させていただいております。芸術監督としての第一作目に参加させていただき光栄に存じます。」

【山口馬木也さん(エイレルト・レェーヴボルク役)】
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 山口「もともとこの作品は大好きだったんです。新訳になってよりいっそう深みのある、しかも現代にちゃんと届く台本になっていました。こんなに素敵なメンバーと共演させていただき、楽しみであると同時に不安と緊張もありますが、本当に素晴らしい作品にしたいと思っています。」

【青山眉子さん(女中ベルテ役)】
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 青山「私が演じるベルテは場面と場面のつなぎ役というか、接着剤のような役だと見ていましたが、今回読ませていただくと、それだけじゃありませんでした。“わかっているのかわかっていないのか”“全体を見ているのか見ていないのか”が曖昧で、とても不思議な人物です。例えば“裏でお茶を淹れながら”というト書きがどういう風に面白くできるかなと楽しみにしています。」

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■シリーズ『JAPAN MEETS・・・』4作品のすべてが新訳

 宮田「この『JAPAN MEETS・・・』シリーズの目玉は、4本がどれも新訳であること。『ヘッダ・ガーブレル』は長島確さんとアンネ・ランデ・ペータスさんのお2人に翻訳をお願いし、ノルウェー語から直接日本語に訳されました。長島さんにはドラマトゥルグの立場でも参加していただき、非常に贅沢な過程を経て台本を作り上げました。」

【長島確さん(翻訳・ドラマトゥルグ)】

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翻訳・ドラマトゥルグ

 長島「ノルウェー人イプセンは近代劇の父と言われており、日本の演劇にも大きな影響与えた作家だと思います。アンナさんとの共同作業からスタートし、宮田さんとは演出の方向性や全体のコンセプト、あるいは役者さんに合わせた非常に細かなセリフの色々なニュアンスまで、ずいぶん長い時間、回数を重ねて台本を練り上げました。
 多少整理はしていますが、シーンや人物のカット(削除)は全くしていません。逐語訳しようとするといくらでもセリフは増えていくし、そのために日本語に変な負荷がかかることがあるので、今回は思い切って“さっぱり”と訳す方向を取りました。

 翻訳劇は特殊なもので、どうしても翻訳者の解釈や演出的な判断が(台本に)含まれてしまいます。時にはキャスティングさえ変わることもある、責任の大きい仕事です。翻訳者がどんなかたちで創作に参加するのかも含め、翻訳劇の可能性をもう一度探り直すような、積極的に良い共同作業ができないかとずっと考えてきました。
 台本というものは、役者さんの力で声になり、体に入り、そこで初めて生きてくるものだと思います。翻訳が原作の側にぴったりついて固まってしまうのではなく、むしろ演出や稽古のプロセスの方に向けて開いていきたい。また新しい発見があるに違いないので、私自身は責任を感じるとともに、上演までのプロセスを非常に楽しみにしております。」


■ドラマトゥルグとは

 長島「ドラマトゥルグは演出家やクリエイションのパートナーのような存在だと思います。私自身については、翻訳者のキャリアをスタートさせた時から稽古場にはべったり入っておりました。演技で出てくるニュアンスや演出の解釈を、翻訳家が先に決めてしまうのは変なことであって、演劇なのだから共同作業に持ち込みたい。だから私は事前に演出家と話をしますし、稽古場にもほとんど居ます。役者さんの色んな作業の中で、翻訳が何を助けられるか。作品をもっと良くするために何ができるか。それをずっと一緒に考えていくという形でやってきました。」

 宮田「長島さんとの今回のお仕事を通じて、翻訳という形で入っていただくドラマトゥルグ的な仕事の可能性や、その実体をつかみたいと思っています。海外の劇団の何人かのドラマトゥルグにお目にかかったところ、制作、文芸、演出助手に近い方など仕事の領分が色々。どの形がふさわしいのかはケース・バイ・ケースなんです。そんな広がりを楽しみながら、現実性を見つけていきたい。」

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■「月に一度は新国立劇場へ!」~マンスリー・プロジェクト開催~

 宮田「月に一度は新国立劇場にぜひ!ということで、“マンスリー・プロジェクト”も企画いたしました。上演作品に関連する催しをさまざまにご用意しています。
 『ヘッダ・ガーブレル』上演中には、ノルウェーの村上春樹と呼ばれる作家ヨン・フォッセが、テレビ用に書いた戯曲『スザンナ』をリーディング形式で上演します。イプセンの妻スザンナの若い頃、中年の頃、年老いた頃を、『ヘッダ…』に出演中の女優3人が演じるという贅沢な企画です。夫イプセンが精力的に作品を発表する傍らで、家を守った妻はどんな風に天才作家を見つめていたのか。それがわかる大変素晴らしい作品なので、3人の女優さんにはご苦労をかけますが、コツコツがんばって作ります。」

 ●リーディング公演『スザンナ』
  出演:七瀬なつみ/青山眉子/田島令子
  作:ヨン・フォッセ 演出:宮田慶子 
  日程:9月30日(木)19:00/10月2日(土)19:00
  会場:新国立劇場小劇場


"Hedda Gabler" JAPAN MEETS・・・ ─現代劇の系譜をひもとく─ Ⅰ 
出演:大地真央・益岡徹・七瀬なつみ・山口馬木也・青山眉子・羽場裕一・田島令子
作:ヘンリック・イプセン 翻訳:アンネ・ランデ・ペータス/長島確 演出:宮田慶子
7/19(月・祝)より発売 A席6,300円 B席3,150円 「JAPAN MEETS…Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」特別割引通し券16,500円(正価18,900円)あり
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000322_play.html
マンスリー・プロジェクト:http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000400_play.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年07月22日 13:03 | TrackBack (0)